本シリーズは、森田にとってどんな作品になっただろうか。すると森田は「スタッフさんも役者さんも、ものすごくパワーがあって、熱い方ばかり。武監督と話していても、山田さんや他の共演者の方々を見ていても、人間としての豊かさを感じるんです」としみじみ。「そういったみなさんとご一緒することで、人の感情の複雑さを考えたり、内面もにじませるようなお芝居をするためには、まず人として豊かでなければいけないんだなと思いました。お芝居をする上では、うまさよりも人としての豊かさや、どうやって生きているかが大事なんだとわかりました」とまっすぐな瞳を見せる。

また、『全裸監督』以降は「オーディションをせずにお仕事をいただけるようになりました」という。「これまでそんなことは、まったくありませんでした。だからこそ、それがいかに特別なことかがわかる。次々とお仕事がいただけるなんて……という思いが常にあるので、ひとつひとつのお仕事を大切に思い、しっかりと取り組んでいきたいです」と力強く宣言する。

なんでも、「これまでは、オーディションの最終選考で落とされることが多かった」そう。「いつも『オーディションでセリフが飛んだらどうしよう、うまくできなかったらどうしよう』と不安でした。でもなんだか今は、『生きていられればいいや!』という心境で、なんでもできるような気がしていて(笑)。面接官の方々に対しても『怖いな』と思っていましたが、『この人たちも同じ人間だ』と思えるようになりました」と笑う。

「オーディションに落ちると、ひねくれてしまっていたことも多かったですね。その作品が公開になっても、悔しくて観られない。でも今は、『自分になにが足りなかったのか、ちゃんと観てみよう』と思える。『全裸監督』の現場を経験させていただいて、『お芝居は、人としての生き方が大事なんだ』と知ってからは、ものすごく心持ちがすごく変わったと思います」と本シリーズが、彼女にもたらしたものは限りない。しっとりとした佇まいの中に、燃えるような情熱を秘めていた。

■森田望智
1996年9月13日生まれ、神奈川県出身。2011年にCMでデビュー。2019年にNetflix配信のオリジナルシリーズ『全裸監督』でヒロイン・恵美(黒木香)役を演じ、注目される。主な出演映画は『一週間フレンズ。』(2017)、『世界でいちばん長い写真』(2018)、『ジオラマボーイ・パノラマガール』(2020)、『Bittersand』(2021)など。ドラマの近作は日本テレビ『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』、NHK『一億円のさようなら』、TBS『恋する母たち』など。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』では、万能型の気象予報士・野坂碧役を演じる。