ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(毎週火曜21:00~ カンテレ・フジテレビ系)が、いよいよ最終回。主演・松たか子さんと脚本・坂元裕二さんのコンビが奏でる、まるで一曲の音楽のような物語。吸い込まれるように毎週楽しみにしていたのに、来週から何を糧にして仕事を頑張ればいいのだろうか。

この作品で当初から気になっていたのが、大豆田とわ子が非常にモテる、魅力的な女性であること。少なくとも3回も結婚している時点で、未婚の私よりも3馬身くらいは人生をリードしている。そんな名作からここまで放送された9話の中で、彼女がなぜモテるのかを振り返ってみたい。

ときどき、ポンコツ。高度テクで"隙"を"好き"に変換

  • 4月7日に開催された取材会に出席した松たか子(右)と岡田将生

ドラマのあらすじを知らない人のために、さらっと紹介しておこう。

大豆田とわ子(松たか子)は高校生の一人娘を持つ、住宅建設会社の社長。実は彼女、これまでに3回の離婚経験がある。1回目、レストランオーナーの田中八作(松田龍平)。2回目、カメラマンの佐藤健太郎(角田晃広)、3回目、弁護士の中村慎森(岡田将生)。どの元夫も重さは違うけれど、とわ子に未練があるようで、常に元妻の周りをうろついている。しかも仲がいい。そりゃ、同じ女を好きになった者同士、趣味が合うのだから気も合って当然だ。

ただ当のとわ子は未練なし。4回目の結婚が目前に迫る瞬間もあったけれど、結果は実ることなく、独身生活をそれなりに楽しんでいる。

文字にするとすごくサバサバして、しっかりとしたキャリアウーマンというイメージがわきそうになるけれど、実は彼女、"ポンコツ"なのである。ラジオ体操をすると他の人とはズレる。工事現場の穴に見事に落っこちる。駐輪してあった自転車をすべて倒す。キッチンの棚を開けたらパスタが雪崩のように落ちてくる……など、彼女の天然、残念、ポンコツエピソードが伊藤沙莉のナレーションによって、ドラマ冒頭で紹介される。

これは全婚活女子に言いたいけれど、外も中も完璧な女性は男性から簡単には好かれない。とわ子のような隙がないと、女性としては年齢問わず可愛げが生まれてこないのだ。ではどうしたら隙が生まれるのかと、個人的に周囲の既婚者たちや恋愛の賢者と呼ばれる人たちに、常にリサーチを続けている。そこで「何かに一生懸命に生きていると、どっかにほころびは出るものだから」という意見をいくつかもらった。一生懸命……。

確かにとわ子も、社長という想定外のポジションについてしまったけれど、仕事には一生懸命だ。仕事中は誰かを悪者にすることなく、常に社員や取引先と同じ目線に立って仕事をしている。

とりあえずはこのコラムを全身全霊で書く。ただ誤解のないように言っておくが、ポンコツは性別にかかわらず、令和最新版のモテキーワードだ。

ややこしい人間関係はどんなときも"イーブン"に

"ポンコツ"に続く、とわ子のモテキーワードは"男性に依存しないこと"。元夫たちにも一切、ギブアンドテイクを求めていない。おそらく結婚していた時期もそんな風だったのだろう。八作に伝えたセリフにこんなものがあった。

「好きっていうのは考えることじゃないよ。考える前にあることじゃん」

相手の仕事、年収、実家の財産、経歴なんて関係ない。ただ自分の気持ちに従って結婚を選ぶ。そんな彼女の意思を表すような、セリフがいくつかあった。

「結婚も恋愛も契約とは違うから、一人で決めたら終わりでしょ」

「大変だからこそ、自分で稼いで自分の欲しいものを手に入れたときにうれしいんじゃないか?」

とわ子の愛すべきところは、モテキーワードにもつながるけれど"正論ばかりを吐かない"こと。結婚することをひとつの目標にしている女性は、相手に結婚生活が普通であると正論をぶつけていることはないだろうか_? 自分が逆に言われてみたことを想像すると分かりそうだけど、それではワクワクが明らかに足りないし、愛情が沈んでしまう。

正論は10回に1回。あとは依存をしないで、ポンコツ。恋の引き際も

「(相手の)どこが好きだったかを話す時は、その恋を片付けると決めた時。せっかく自分だけが見つけた秘密だったのだから」

と、自分で決める。生活の延長線上の一部に、ふっと結婚がある……とドラマを見ていて感じたので、一生懸命にこの原稿を書いた。ポンコツよ、なんとか私のもとへ訪れてくれないか。