パラダイムシフト。耳にしたことはあっても、正しい意味が分からずに会話に詰まってしまった、なんて苦い経験をお持ちではないですか。
変化の激しいこんな時代こそ、ビジネスパーソンとしてパラダイムシフトの意味を正しく理解しておきたいものです。本記事では意味や使い方などを詳しく紹介していきます。
パラダイムシフトとは
パラダイムシフトはそれほど新しい言葉ではありません。すでにビジネス用語として定着しており、新聞や雑誌、ネットニュースなどでもよく目にします。
さまざまなビジネスシーンで使われるパラダイムシフト。一般的には「定説を覆す」といった意味で使われます。その意味をより深く掘り下げていきましょう。
パラダイムの意味
パラダイム(paradigm)とは、ギリシャ語で範例を意味する「paradigm」に由来するとされています。もともとは科学者たちが科学史を分析するために用いた、専門的な考え方を指していました。
現在はパラダイムという言葉も一般的になり、「その時代の規範となるような思想や価値観」という意味で使われています。
パラダイムシフトの意味
パラダイムシフトとは、パラダイムが「シフト(移動)」することを指します。つまり、その時代の特徴的な思想や価値観、常識などが大きく変化するという意味です。「定説を覆す」「革新的なアイデアで時代を変える」といった意味で使われています。
それまでの常識や定説などを覆すのは簡単なことではありません。しかし、人類はこれまでに何度ものパラダイムシフトを経験しています。
パラダイムシフトとステレオタイプ
パラダイムシフトと関連して使われる言葉に、ステレオタイプがあります。この言葉もよく使われる言葉なので、一緒に意味を把握しておきましょう。
ステレオタイプとは多くの人に浸透している固定観念、思想や思い込みなどのことを指します。
例えば、日本人と言うと世界的に「真面目だが融通が利かず、感情表現が乏しい」または「和服を着てお寿司や天ぷらを食べている」といったイメージが持たれがちです。これらは「ステレオタイプな日本人のイメージ」と言えます。
ステレオタイプは物事を素早く判断したり、情報を効率的に処理したりする上では便利です。しかし過度に単純化されており、場合によってはゆがめられたものであることも少なくありません。また、好悪や善悪、優劣といった感情を伴っていることもあり、差別や偏見に繋がる可能性もあることを知っておきましょう。
パラダイムシフトにはこれまでのステレオタイプのイメージや考え方を捨てたり、変えたりするという意味があります。関連して使われる言葉として意味をしっかり把握しておきましょう。
パラダイムシフトの類義語
パラダイムシフトにはさまざまな解釈がありますが、手っ取り早く解釈するなら「大きな変化」と言えるでしょう。ほかに「革命」「常識の打破」「価値観の転換」「コペルニクス的転回」などと置き換えることもできます。
ビジネスにおけるパラダイムシフト事例
近年で最も大きなパラダイムシフトと言えば、ネット環境の普及とスマートフォンの登場です。
ネット環境の普及とスマートフォンの登場
かつて、電話といえば固定電話でした。インターネットに関してもほんの10数年ほど前までは、固定電話回線とパソコンなどのデバイスを組み合わせて使用するのが当たり前でした。しかし、2000年代後半にスマートフォンが登場したことで、ポケットに収まる小さなデバイスでいつでもネットに接続できるようになったのです。
さらには離れた相手とのコミュニケーションの方法も、電話やFAXといった方法から、チャットやメールといったデジタルを活用した手段へ移行し、多様化しました。
ビジネスシーンも大きな影響を受けています。ビジネスに不可欠なマーケティングはこれまではマスメディアの利用が中心でしたが、年々ネットメディアの割合が高くなり、これまでの常識が通用しなくなりました。
働き方の変化
そのほかにも終身雇用制度の崩壊やテレワークによる働き方改革など、身近なところでもパラダイムシフトは起きています。ビジネスを展開し成長を遂げるには、パラダイムシフトにいかに対応できるかが大きな鍵となっています。
これからの時代に求められるパラダイムシフト
これまでも私たちはさまざまなパラダイムシフトを経験してきました。しかし、ここ数年でさらに大きな変化が起きています。そこで、これからの時代に求められるパラダイムシフトについて考えてみましょう。
EV車や5Gなどに見られる技術革新
世界では技術革新が大きく進んでおり、ここからの数年でさらに変わると言われています。
例えば、自動車業界であれば従来の化石燃料に頼ったガソリンエンジン車からEV車へとシフトし始めており、開発においても販売においても大きなパラダイムシフトが求められています。
通信技術においては5Gなどの新しい技術が登場し、これに対応する新たなサービスが求められています。またIT業界ではAIの進歩によって開発方法などが大きく変わりました。
このように、世界ではあらゆるビジネスシーンでパラダイムシフトが求められています。
コロナ禍に対応したワークスタイルの変化
私たちが直面している大きな変化といえば、新型コロナウイルスの蔓延による、ライフスタイルやワークスタイルの変化でしょう。多くの人が交わるという今までの常識が通用しなくなり、仕事ではテレワークやリモート会議などが一気に普及しました。
先行きが見えない状況から、これを一時的なものと捉えるのではなく、働き方そのものを見直す機会だと捉える企業も増えています。ワークスタイルやライフスタイルが変われば、世間のニーズも自然と変わってくるでしょう。ビジネスシーンにおいてはこうした変化にいち早く対応できる戦略を立てる必要があります。
「 所有」から「シェア」へ価値観が移行
また、従来は「所有する」ことが重視され、より多くのものを所有したいという欲求が一般的でした。しかし現在は「共有する(シェアする)」ことに価値を見出す考えが広まっています。
カーシェアリングやシェアハウスといった、共有サービスの人気が高まっているのもそのひとつ。さらに音楽や映像コンテンツなども、購入するのではなくサブスクリプションサービスで利用するケースが増えています。
パラダイムシフトに対応できる会社経営のポイント
企業や組織がパラダイムシフトへの対応が求められるなかで、どのような点に気をつければいいかをご紹介します。
変化に敏感であること
変化の激しい時代だからこそ、その変化にいち早く気づくことが重要です。変化に気づくためにも、業界や市場、顧客の動向、国際情勢、世間の流れなど、多角的な側面からの情報収集を怠らないようにしましょう。
柔軟性を持っていること
パラダイムシフトに対応するためには、気づいた変化を受け入れる柔軟性が必要になります。同じやり方や一つの考え方に固執していては、組織としての成長は見込めません。過去の成功体験や慣習にとらわれないよう意識することが重要です。
失敗を恐れないこと
パラダイムシフトに対応する過程においては、事業の創出などをはじめとした新しい挑戦が求められます。挑戦にはリスクが付きまといます。ただ、挑戦しなければよくて現状維持にとどまり、下手をすれば業績悪化の一途をたどり、最終的に生き残れないかもしれません。失敗を恐れることなく挑戦し、改善していく――。そんなマインドや体制が重要になるでしょう。
パラダイムシフトの使い方
ここでは例文を使ってパラダイムシフトの使い方をご紹介します。
パラダイムシフトを使った例文
ビジネスパーソンとして頭に入れておきましょう。
(例文)
・シェアサービスの躍進は、パラダイムシフトの典型的な例だ
・企業の価値は、パラダイムシフトにどう対応するかで決まる
パラダイムシフトへの対応を求められる企業
新型コロナウイルスの蔓延により、世界は大きなパラダイムシフトを迎えています。日本のビジネスシーンでもできるだけ対面を避け、テレワークやリモート会議が活用されるようになりました。
このようなコロナ禍によって加速するパラダイムシフトにいかに対応していくか、また、少子高齢化といった人口動態の変化にどのように対応していくか、日本の企業も変革が求められる時代です。
パラダイムシフトへの対応を求められる時代だからこそ、ビジネスパーソンとしてパラダイムシフトの意味を正しく理解しておきましょう。