「不躾(ぶしつけ)」という言葉を使った表現は、失礼を承知で何かを依頼したい場合や、少し気が引けることを尋ねたい場合に役立ちます。ビジネスシーンでの使い方をマスターしておけば、依頼や謝罪の際に相手の不愉快な気持ちを軽減できますので、社会人ならうまく使いたい言葉です。

この記事では、「不躾」の正しい意味や使い方を、ビジネスシーンで使える例文と共にくわしく紹介します。

  • 「不躾(ぶしつけ) 」の基本をマスターしよう

    不躾(ぶしつけ)の意味や使用例などを紹介します

不躾(ぶしつけ)の意味や由来

「不躾(ぶしつけ)」は、ビジネスでよく使われる表現のひとつです。まずは、「不躾」の意味や由来などを紹介します。

不躾の意味

「不躾」の意味は「礼儀や作法をわきまえていないこと」「失礼なふるまい」や、その様子のことです。状況によっては「唐突」「露骨」などの意味で使われることもあります。

不躾の由来

「不躾」に使われている「躾」には、「しつけや身だしなみ」という意味があります。一般的に漢字は中国由来である場合が多いですが、「躾」という漢字は中国から伝来したものではなく、日本人が作り出した国字にあたります。

「不躾」は「不仕付け」と書くこともありますが、意味は同じです。否定を意味する「不」を組み合わせることで、礼儀作法がなっていないという意味になりました。

「躾」の由来は諸説ありますが、旧来「裁縫の縫い目や折り目を整えるための仮止め」「田植や種まき」などを意味する言葉として使われていたことがわかっています。

不躾の類語は?

「不躾」には類語表現が多く、「無礼」「非礼」「失礼」などがあります。

「無」には「存在しない」「ないがしろにする」という意味があることから、「無礼」は 礼儀を欠くことやその様子を表す言葉です。

「非」は「正しくない」「~でない」などの意味があります。そのため「非礼」の意味は「礼儀として正しくないことやその様子」のことです。「無礼」よりさらに礼儀を欠くことであり、顧客に対する謝罪や始末書でよく使われます。

「失」には「しくじる」「なくす」という意味があります。「失礼」の意味は「他人に接する際の礼儀をわきまえていないことやその様子」です。

「不躾」含めてそれぞれ使われるニュアンスが少しずつ異なりますが、礼儀作法がなっていないことでは共通しています。

不躾を英語でいうと?

「不躾」の英語表現にはさまざまな言葉が使われますが、「rude」「impolite」などがあります。「rude」「impolite」ともに、意味は「無作法な」「失礼な」などです。

「不躾なお願いをしてすみませんが」と伝えたい場合には「sorry for asking this」を使うといいでしょう。

  • 「不躾(ぶしつけ) 」の基本をマスターしよう

    「不躾」は礼儀をわきまえていないことを意味する言葉です

不躾はビジネスシーンでどう使う?

「不躾」はビジネスシーンでよく使われる表現ですので、使い方を覚えておきましょう。「不躾」の具体的な使用シーンを紹介します。

不躾は「無作法」「唐突」なシーンで使う

「不躾」は、本来なら礼儀正しくふるまうことが求められている場面や相手に対して、失礼な態度を取ることを意味する言葉です。また、突拍子もない言動で相手に唐突な印象を抱かせてしまう状況でも使われます。

自分に対して使う「不躾ながら」

「ながら」とは接続助詞のひとつで、名詞と組み合わせて内容の矛盾する2つのことをつなぎ、「~にもかかわらず~」という意味で使われます。

「不躾ながら」は「失礼とはわかっていますが」という意味であり、自分の言動に対して使います。「大変失礼で申し訳ありませんが」というニュアンスを含んでいて、自分の行動をへりくだっていう表現です。目上の人に対して意見を述べる場合によく使われます。

相手に対して使う「不躾な人」

「不躾な人」とは、「人に不快な思いをさせる人」「礼儀がなっていない人」という意味で使われる言葉で、人を評価する言葉として使います。また、必要以上に他人に対して踏み込んでくる相手に対しても使われる表現です。

もし誰かに「あなたは不躾だと思います」などといわれたら、相手を不愉快にさせてしまったということですので、自分の言動を振り返りましょう。

「不躾」はいいにくい依頼やお詫びを伝える時にも使える

「不躾」は目上の人に頼みごとをする時やいいにくいことを伝える時、謝罪表現などでよく使われる表現です。自分の行動の前に「不躾ですが」「不躾に」などと前置きすることで相手への配慮を示し、不快感を軽減できます。

「不躾に申し訳ございませんでした」のように非礼を詫びる時にも使えるなど、使用の幅が広い表現ですので、使い方を覚えておきましょう。

  • ビジネスシーンで「不躾」はどう使う?

    「不躾」はビジネスで使う機会が多い表現です

不躾のビジネスで使える例文集

適切なシーンで「不躾」を使えるように、使い方を確認しましょう。ここでは、ビジネスシーンにおける「不躾」の使用例を紹介します。

何かを依頼したい場合

相手に何らかの依頼をする場合、「不躾ですが」「不躾ながら」の表現で、「失礼ですが」などの意味で使われます。下記の例を参考に、適切な状況で使いましょう。

・不躾ですが、これからお伺いしてもよろしいでしょうか。
・不躾で大変恐縮ですが、こちらのお見積金額について相談は可能でしょうか。
・不躾ではございますが、こちらの資料を至急お送りいただけないでしょうか。
・到着早々に大変不躾ではございますが、お写真を1枚撮らせていただいてよろしいでしょうか。
・来月の講演会にご登壇いただくことは可能でしょうか。本来でしたら昨年度中にご相談すべきところ、誠に不躾なお願いとなり申し訳ありません。

メールで使用する場合

「不躾」はビジネスメールで使われる表現です。先方に無理なお願いをする場合や、無理なお願いを聞いてもらった場合などは、「不躾」を使うのが適しています。下記の例文を参考に、使い方を覚えておきましょう。

・ご多忙の折、誠に不躾かと存じますが、お返事をお待ちしております。
・不躾なお願いにもかかわらず、ご対応いただきましてありがとうございました。

聞きにくいことについて質問する場合

「不躾」は相手に聞きにくいことをたずねる場合、「失礼をいってしまい申し訳ありませんが」などの意味で使われます。ビジネスを円滑に進めるために、ぜひ活用してください。

・大変不躾とは存じますが、御社のお取引のご実績についてお伺いできますでしょうか。
・不躾ながらお尋ねします。これ以外にもご都合の悪いことはございませんでしょうか。
・不躾かとは存じますが、日程をお間違いではないでしょうか。

自分や他人に対して使う場合

「不躾」は自分や他人の礼儀に欠ける言動や唐突な言動を振り返る場合にも使われる表現です。下記のように自分の態度を反省し詫びる表現や、他人の言動を指摘する場合に使うといいでしょう。

・このような不躾なメールをお送りすることをご容赦いただけますと幸いです。
・彼のクライアントに対する発言は、少し不躾な印象だったので気を付けるべきだ。

  • 不躾のビジネス例文集

    「不躾」のビジネス例文集

不躾を使いこなして相手を不愉快にさせないコミュニケーションを

「不躾」とは、「礼儀を欠くこと」「失礼なふるまい」などを意味する言葉です。「不躾ではございますが」など否定や逆接を表す言葉と組み合わせて、「申し訳ありませんが」「大変失礼ですが」などを意味していて、非礼な態度を謝罪する意味で使われます。

「不躾ですが」を使って「礼儀や作法をわきまえず申し訳ありません」という気持ちを伝えることで、自分の覚悟や思いの強さを丁寧に伝えられるでしょう。この記事を参考に「不躾」を使いこなして、ビジネスにおける円滑なコミュニケーションに役立ててください。