『仮面ライダークウガ』(2000年)から始まる「平成仮面ライダー」の第8作目であり、仮面ライダーシリーズ屈指の人気作としてテレビ放送終了後も数々の続編作品が作られた『仮面ライダー電王』(2007年)。仮面ライダー史上初「電車に乗る仮面ライダー」として話題を集めた本作では、仮面ライダー電王/野上良太郎(演:佐藤健)、仮面ライダーゼロノス/桜井侑斗という2人の仮面ライダーが「時の運行」を守るため、未来の怪人「イマジン」を相手に戦いを繰り広げるストーリーとなった。

  • 中村優一(なかむら・ゆういち)1987年生まれ。神奈川県出身。2004年に「第1回D-BOYSオーディション」でグランプリを受賞。2005年『ごくせん』第2シリーズにて俳優デビュー。同年『仮面ライダー響鬼』の桐矢京介役で出演(30話から)した後、2007年『仮面ライダー電王』で仮面ライダーゼロノス/桜井侑斗役でレギュラー入り(第18話から)し、好評を博す。撮影:大塚素久(SYASYA)

電王/良太郎やモモタロス(声:関俊彦)、ウラタロス(声:遊佐浩二)、キンタロス(声:てらそままさき)、リュウタロス(声:鈴村健一)といった味方イマジンたちは、時の列車「デンライナー」に乗っているのだが、ゼロノス/侑斗と彼の世話を焼くイマジンのデネブ(声:大塚芳忠)は別の路線を走る「ゼロライナー」に搭乗。ゼロノスは、電王とはイマジンとの関係性や“変身”の仕組みが異なっており、その悲劇的なバックボーンや愛すべき人物設定などから、個性豊かな『電王』キャラクターの中でも屈指の人気を誇っている。

ここでは、仮面ライダーゼロノス/桜井侑斗を演じた俳優・中村優一にスペシャルインタビューを行い『電王』およびゼロノス/侑斗についての思いを聞いた。中村は仮面ライダーに対する強い憧れや、侑斗という役を作り上げるため葛藤した日々のこと、そして『電王』をはじめとする特撮ヒーローが持つ魅力について、気さくな笑顔と共に語ってくれた。

――中村さんは子どものころ、どんな「仮面ライダー」シリーズを観ていたのですか。

僕が幼い時期はちょうどテレビで仮面ライダーの新作を放送してなくて、好きな特撮ヒーローは『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)や『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年)とか、スーパー戦隊シリーズが多かったかもしれません。合体ロボットの玩具で遊んでいた思い出もあります。あのころの玩具を今でもずっと置いていればよかったなって思ったりもしますね(笑)。『仮面ライダークウガ』(2000年)が始まったのがちょうど中学生のころ。日曜日の朝、陸上部の練習に出かけるギリギリまでテレビを観ていました。とにかくクウガがカッコいいなって思っていて、ストーリーよりもクウガの変身シーンや、怪人の戦闘に心を奪われたんです。『仮面ライダーアギト』(2001年)以降の仮面ライダーも、ずっと楽しみに観ていましたね。

――そんな仮面ライダー好きの中村さんが、数年後『仮面ライダー響鬼』(2005年)に(三十之巻から)レギュラー出演するというのは、すごく運命的ですね。明日夢少年のライバル・桐矢京介役に決まったときのお気持ちはいかがでしたか。

それはもう不思議な気持ちでした(笑)。最初は明日夢役のオーディションを受けて、落ちているんです。それでも『響鬼』が放送されたら、普通に楽しんで観ていましたからね。やがて追加のオーディションがあるというので、そこで京介の役をいただいたんです。

――今までテレビで観ていた「仮面ライダー」の撮影現場に初めて行ったときの気持ちはどんなものだったのでしょう。

新人でしたから、常に緊張し続ける毎日でした。お芝居をどうすればいいかがまずわからなくて、どうすればいいんだって悩んで、いつも泣きながら家に帰っていました。京介って、出てきた当初は明日夢に対していちいち突っかかっていく奴だったでしょう。あのころすでにインターネットの掲示板が活発でしたから「京介嫌い」なんて書かれて、辛かったのもありました。でも、京介を演じていたころ、いろいろ厳しいものを乗り越えていったことによって、精神的な強さを身に着けることができたと思っています。まさに「オレはかーなーり、強い!」です(笑)。

――2年後、『仮面ライダー電王』の侑斗役でふたたび仮面ライダーの現場に帰ってきたときは、いかがでしたか。

『電王』に入った当初も、『響鬼』のときの繰り返しだったんです。スタッフさんから厳しいことを言われたというより、みなさんの要求に対して応えられない自分が悲しくて、辛かったですね。舞原賢三監督の第19、20話なんて、ホン(脚本)読みの段階からどう演じていいかわからず、現場でもすごく苦戦していました。でも、侑斗とデネブのコミカルなやりとりを演じたとき、ふっと緊張が和らいで、スムーズに芝居をすることができました。最初から、僕はデネブに救われていたんですね。

――ふだんはクールにふるまっていますが、デネブには心を許し、時にはとっくみあいのケンカを仕掛ける侑斗の“子どもっぽさ”はとても魅力的に映りました。

良太郎に見せる冷たさと、デネブに見せる熱さとのメリハリは、演じる上でとてもやりやすかったですね。侑斗という人物は、デネブというパートナーがいてくれたからこそ、ファンのみなさんに受け入れてもらえた部分があります。僕自身、『響鬼』での反省を踏まえ、『電王』に出演するにあたり、侑斗の人物像をきちんと表現できればいいなと思って、取り組みました。せっかく大好きな「仮面ライダー」の世界にもう一度入ることができるのだから、今度はもっと頑張ろう!と思ったんです。

――途中参加のキャラクターですが、レギュラー陣のみなさんとはすぐ仲良くなられたのですか。

良太郎役の佐藤健くんとは以前にもドラマで共演していたのもあって、彼を中心とした出演者の輪の中に入りやすかったんです。また、ゼロノスのスーツアクター伊藤慎さんは『響鬼』で京介変身体を演じてくれましたし、デネブの押川善文さんは仮面ライダー威吹鬼でしたから。アクションの方たちとの再会もうれしくて、ちょっとした連携でもすぐ取ることができました。

――デネブに侑斗がプロレス技をかけてじゃれるシーンなどもファンの間で人気を集めました。

押川さんがプロレスに詳しくて、ああいうシーンのときはいつも「こんな技はどう?」なんてアイデアを出してくださるんです。技をかけるときは楽しかったですよ。ゼロノスの伊藤さんからも「こんな動きをしてみようと思うけど、侑斗はどう思う?」なんて僕に尋ねてくださったりして。僕ひとりが作り上げたというより、周りの人たちがとてもいい影響を与えてくださった結果「桜井侑斗」が出来たんだと思っています。

――デネブが侑斗に憑依した状態(D侑斗)を演じられたときは、難しかったですか。

僕がふだん接しているデネブ=押川さんの動きをそのまま演じればいいと思っていたので、とてもやりやすかったです(笑)。そして、(大塚)芳忠さんだったらこんな風にしゃべってくれるだろうなと、お二人のイメージをミックスさせながら演技しました。デネブのコミカルな走り方も、忠実に再現しています(笑)。