俳優の松坂桃李が主演するテレビ朝日系ドラマ『あのときキスしておけば』(毎週金曜23:15~※一部地域除く)。きょう28日に放送される第5話の見どころの1つは、ヒロイン・オジ巴をめぐって桃地×高見沢が繰り広げる男同士の対決だ。

  • 三浦翔平(左)と松坂桃李=テレビ朝日提供

■「男は何歳になっても子供」を地で行く張り合い

32歳ポンコツ独身男性の桃地のぞむ(松坂桃李)が、大好きな漫画『SEIKAの空』作者の蟹釜ジョーこと唯月巴(麻生久美子)と運命の出会いを果たし、いつしか押し倒されてキスされそうになるまでの関係に。しかし、突然の飛行機事故で巴の魂が見知らぬおじさん(井浦新)に乗り移ってしまったことから、体がおじさんで心は女性の“オジ巴”をめぐるラブコメディが展開されている。三浦翔平が演じる高見沢は、巴の元夫で編集担当でもあるイケメンだ。

前回第4話のラスト、目の前でオジ巴が高見沢に押し倒された姿を見て、ショックのあまり持っていたおかゆを落としてしまった桃地。そのままオジ巴が連れ去られてしまうと、人生で初めての“ヤキモチ”という感情に襲われ、奇怪な行動を連発する。今作でもたびたびコメディへのハマりっぷりを見せてきた松坂だが、スーパーの仕事そっちのけで“上の空状態”の桃地の演技で、さらに磨きがかかっている。

そして、ここに高見沢というライバルが加わることによって、コメディパートのシナジー効果を発揮。よく女性から聞かれる「男は何歳になっても子供」という表現を地で行くような張り合いを見せ、最後のフラダンス対決の激闘でピークに達するのだ。2人の奇妙な振り付けを見ていると、周囲の共演者やスタッフたちが笑いをこらえる姿まで想像してしまい、撮影現場の雰囲気の良さが伝わってくるようである。

このようにキャスト・制作陣がこのドラマを楽しんで作っているように思える要素は、他にもある。桃地が着ているオリジナリティあふれすぎるデザインのパーカーは、ネットで話題に。また、劇中の漫画『SEIKAの空』が、なんと本編キャストらによって実写化(28日の放送後からTELASAで配信)されるというまさかの展開に、井浦新が「だいぶムチャするなー」と苦笑いするほどだ。

さらに、ホームページの登場人物説明も、高見沢春斗(三浦翔平)を「本人の自覚は一切ないが、おそらくちょっと天然」、エグゼクティブ真二(六角慎司)を「すぐにハシゴを外すクソ野郎」、李善善(うらじぬの)を「宇宙人ジョーンズさんに憧れている」など、ユーモアあふれた筆致で楽しませてくれるコンテンツになっている。

■成長する桃地の姿に勇気がもらえる

今作の貴島彩理プロデューサーがこれまで手がけてきた作品は、童貞を脱したら即卒業という高校に強制入学させられた大人たちの物語『オトナ高校』、33歳の女好きなおっさんがピュアすぎる乙女心のおっさん上司&イケメン後輩との三角関係を繰り広げる『おっさんずラブ』、新人ADの元に彼女だけ見える妖精のおじさんが現れる『私のおじさん~WATAOJI~』など、一見“突飛”な設定が特徴的と評されがちだ。

だが、どの登場人物たちも真面目で、一生懸命で、ひたむきで……そんな姿を見ていると、「こんな状況は現実世界にないだろう」なんて考えていたのを忘れ、思わず応援している自分がいるのだから、実に不思議である。

今回の『あのキス』も、その術中にまんまとはまってしまう作品。ダメダメだった桃地が本気の恋を通して成長していく姿に、コロナ禍で落ち込みがちな今だからこそ、前向きに生きる勇気をもらえる人も多いはずだ。

そして、井浦新のあまりにも自然な麻生久美子とのシンクロぶりに、文字にすると綺麗事にしか見えない「愛は見た目が全てではない」が実感できるドラマにもなっている。

ちなみに第5話の演出は、貴島Pの『おっさんずラブ』でもメガホンを取ったYuki Saito氏。ラストシーンでは、桃地が話をまたいだ“天丼”をやってくれるので、そこも楽しみに見てほしい。