ら抜き言葉を普段から当たり前のように使っている人は、きっと多いでしょう。では、ら抜き言葉は使ってはいけない言葉なのでしょうか。使ってはいけないのであれば、どう見分けたらいいのでしょうか。この記事では、ら抜き言葉が生まれる原因から見分け方までご紹介します。

  • ら抜き言葉とは何か

    見分け方を知りましょう

ら抜き言葉とは何か

まず、「ら抜き言葉」とは何かを確認しておきましょう。

可能を表す言葉から「ら」が抜けたもの

ら抜き言葉とは、可能を意味する言葉から「ら」が抜けたものです。これだけではピンとこないかもしれませんが、例としては本来「見られる」というべきところを「見れる」、「食べられる」とするところを「食べれる」といってしまうことが挙げられます。

ら抜き言葉が起きる原因

ら抜き言葉が起こるのは、動詞に言葉を足して「可能」を表したいときに、「られる」を付ける場合と「れる」を付ける場合の2通りあることが原因と考えられています。

例えば「測る」という動詞を可能表現にするなら「測る」+「れる」となり、「測れる」となります。

いっぽう「見る」という動詞を可能表現にするなら「見る」+「られる」となり、「見られる」が正しい言葉です。こうして本来であれば「られる」を付ける動詞に対し、誤って「れる」を付けてしまうことがら抜き言葉が起こる原因とされています。

使われ始めたのは昭和初期

文化庁によると、ら抜き言葉が使われるようになったのは昭和初期の頃といわれています。意外にも昭和初期から続く「若者言葉」の一種であるようです。

話し言葉で使われることが多い

ら抜き言葉の多くは、リズム感やスピード感を求める若者の話し言葉に見受けられます。確かに「食べられる」と「ら行」が続くよりは「食べれる」としたほうが、発音しやすいことも確かです。

  • ら抜き言葉とは何か

    昭和初期には「ら抜き言葉」が生まれていました

ら抜き言葉は間違い?

それではら抜き言葉は間違いなのでしょうか。公的な見解を確認してみましょう。

2021年時点では「間違い」

文化庁のページに解説があるように、2021年時点では「間違い」とされています。新聞等で用いられることが少なく、世論調査においてもら抜き言葉を使うという人は正しい用法で使う人を下回っています。そのため、共通語として認識するには世間に浸透しきっていないという見解です。

ら抜き言葉で可能と受け身の見分けがつく?

ら抜き言葉は間違いとはされていますが、それなりのメリットもあります。それは、可能表現か受け身表現かの見分けがつきやすくなるという点です。

例えば「見られる」という言葉では、ら抜き言葉「見れる」は「見ることができる」という可能表現を指し、「見られる」は「誰かに見られる」という受け身表現を指すと、区別がつきやすくなります。

「汚れた服を洗って少しは見られるようになった」という文章を例にしてみましょう。このままだと「(見るも耐えない状態から)見ることができるようになった」なのか「(周りから)見てもらえるようになった」なのか判断しにくいでしょう。

これにあえて「見れる」というら抜き言葉を使い、「汚れた服を洗って少しは見れるようになった」とすると、「見ることができるようになった」という可能表現であることがわかります。

今後「ら抜き言葉」が認められる可能性も

2021年時点ではまだ間違った使い方とされていますが、文化庁では今後、ら抜き言葉が認められる可能性を指摘しています。

主な理由として、前述した「受け身表現との差別化」や、書き言葉と話し言葉で違いがあること、地方によってはら抜き言葉が昔から定着していること、またら抜き言葉のほうがリズム感がよいことなどが挙げられています。

  • ら抜き言葉は間違い?

    「ら抜き言葉」は変化しつつある日本語のひとつです

ら抜き言葉の3つの見分け方

将来的に認められるかもしれないとはいえ、現時点ではまだ間違った言葉です。ビジネスシーンでうっかり使ってしまうと、常識がない人と思われてしまうかもしれません。

ビジネスシーンにおけるら抜き言葉を防ぐために、動詞に「れる」「られる」どちらを付けるべきか迷ったときの対処法を3つまとめました。

勧誘の「~しよう」に言い換えてみる

まずは動詞を「~しよう」の勧誘表現に言い換えてみましょう。言い換えたとき「~よう」が付く動詞は、可能表現にするとき「られる」がつきます。例えば「みる」は勧誘表現にすると「見よう」となるので、可能表現は「見られる」となります。

一方、勧誘表現にして「~よう」が付かない動詞は、可能表現にするとき「れる」をつけます。例えば「書く」の勧誘表現は「書こう」で「~よう」となりません。そのため可能表現は「書ける」になります。

未然形の「~ない」に言い換えてみる

動詞を未然形にして「~ない」という形に言い換えても見分けられます。例えば「食べる」を未然形にすると「食べない」になります。「~ない」の前にくる母音が「エ」のとき、可能表現は「られる」をつかいます。同じく「見る」は「見ない」となり、「~ない」の前にくる母音は「イ」です。これも「られる」がつきます。

一方、「書く」は未然形にすると「書かない」となり、「~ない」の前の母音は「ア」です。このとき可能表現は「れる」となります。

つまり未然形にしたとき「~ない」の前が「イ」「エ」であったときは「られる」、「ア」だったときは「れる」と覚えておくといいでしょう。

「ら」を足してみる

ら抜き言葉では、可能表現か受け身表現かを判別しやすくなると前述しました。言い換えれば、「~れる」という表現に「ら」を付けても可能表現として意味が通じれば、それはら抜き言葉であると見分けらます。

例えば「見れる」という言葉、「ら」を足して「見られる」としても意味が通じます。一方「読める」という言葉は、「ら」を足すと「読められる」となり意味が通じません。

つまり、「見れる」はら抜き言葉であり、「読める」はら抜き言葉でないと見分けられるのです。

  • ビジネスシーンではNG! ら抜き言葉の3つの見分け方

    表現を変えてみましょう

ら抜き言葉でも許されるケース

今後認められる可能性の高いら抜き言葉ですが、使うシーンによってはさほど不自然でないこともあります。いくつかケースをご紹介しましょう。

親しい間柄の会話

親しい間柄なら、ら抜き言葉もさほど嫌がられないでしょう。ただし、いくら親しいからと言っても、ビジネスシーンでは使わないほうが得策です。

方言として使う

実は北陸から中部、北海道などでは、ら抜き言葉が方言として地域に根付いています。こうした地域では考慮する必要があります。

リズムがいい

文学作品や楽曲などで、あえて使うケースもあります。これは作品の雰囲気を言葉のリズムで壊したくない、という作り手の意図が込められており、あえて正す必要はありません。次のような例があります。

  • おまへだつて、そこから出ては来れまい/「山椒魚」井伏鱒二
  • あれから ぼくたちは なにかを信じてこれたかな/「夜空のムコウ」SMAP

見分けをつけやすくする

前述したように、可能表現か受け身表現かの見分けがつきやすくなるという一面もあります。そのため小説などでは意味をわかりやすくするために、あえてら抜き言葉が選ばれることもあります。

  • ら抜き言葉でも許されるケース

    「ら抜き言葉」にもメリットがあります

ビジネスシーンでの「うっかり」に気をつけて

ら抜き言葉について深堀りしてきました。文法的に間違っているからといって、頭から否定される言葉でないことはわかっていただけたかと思います。

淘汰されることなくここまで浸透しているのも、ら抜き言葉そのものに魅力があると捉える意見があるからです。一方で、間違いであることは変わっておらず、ビジネスシーンなどでは好まれない言葉であるのも確か。

今回紹介した3つの見分け方を参考にして、うっかり使ってしまわないよう気をつけましょう。