このほかに2021年だけで『樹海村』『10年、渋谷をさ迷って-A de cade of roaming-』『裏アカ』『彼女が好きなものは』と4本の出演映画が公開されるなど、いくつもの仕事をこなす注目の若手俳優に成長している。もはや単なるイケメンなだけの俳優ではない。
神尾は、演技の仕事は楽しいと話す。「モデルやバラエティの仕事よりも楽しい。自分じゃない人間になるから新たな発見もありますし、思ったとおりの芝居ができたら、すごくうれしいなと感じることもある。全体的に演じることが楽しいんです。やりがいがあります。違う人間になれること。自分の表現ができること。引き出しが増えていくことも、本当に全部が楽しい」。
それゆえ演じたい役も、出演したいジャンルもない。「それは前々からないんです。自分でこれをやりたいと制限をかけることがもったいないと思うんです。来たものをやり続けていく感じですね」と自身のスタンスを語る。唯一の興味は、ファンタジー系の世界観だ。「能力者のキャラクターには興味があります。現実とは違うものは、いつかやりたいですかね。そもそもアニメやバトルものが好きなんです。憧れがあるみたいで。『呪術廻戦』など今クールは7本もアニメを観ています」。
芝居が楽しいと感じた最初の体験は、日本テレビ系ドラマ『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(2019)の頃だった。「あの現場、主演の菅田(将暉)さんがすごかったんです。若いのに重みがある。熱量を感じました。仕事が増えたのも『3A』のおかげで、だいぶ俳優としての転機になった作品ですね。共演した萩原利久とはずっと仲がいいですし、いろいろな人と『最近どう?』みたいな連絡を取ったりはします」。当時の共演者間は同志的な関係で、特殊なつながりが今も続いている。「みんな何しているのかなと、いい刺激になります」。
俳優として成長するために日々意識していることがある。「なるべくフラットでいることですね。自分を作りすぎると役が入ってきた時に苦労するんです。自分とのせめぎ合いになるので、いつも空っぽでいたいんです」。その作業は苦ではないという。「もともと引っ込み思案なんです。だから自分を出すことが恥ずかしくて、自分が出ると何もできなくなってしまう。それもあって演じる役にも自分が出ないように、なるべく普段は何も考えないようにしています」と説明し、「おかげで深く悩んで考えることがプライベートでなくなった。そういう意味では人生が楽に、要領がよくなった気がします」と意外な効能も明かす。
人生が楽になるとは、いったいどういうことなのか。この点改めて尋ねると、「芝居がOKなら後はいいかなって、ポジティブに物事を考えられるようになった」という。「人生で嫌なことがあっても、仕事があれば生きていける。極端ですけど、そういう感覚です。学生時代も嫌なことがあったらずっと引きずるタイプでしたが、芝居があればいいと。そう思い始めたのは2年前くらいからです」。つまり『3A』の頃だ。「そうですね。今思えばですけど、ポジティブになりました」と語る。