職場での人間関係や営業などの仕事をするうえで、自分が相手にどのような評価をされているか心配になる機会があるはずです。相手に与える印象は、ビジネスシーンにおいてとても重要ですが、ひたすら好印象を求めることが必ずしも「正解」とは限りません。

本記事では、効果的に相手の印象を高められる「ゲインロス効果」について詳しく解説します。

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    ゲインロス効果について知りましょう

ゲインロス効果の意味

ゲインロス効果とは、マイナスの印象からプラスの印象、またはその逆に変化する度合いが大きいほど、相手に与える影響が大きくなる心理効果を指します。

例えば、ドラマや漫画などで、普段はどこか抜けていて頼りない部分があるキャラクターが、大事な場面で真剣な面持ちや強さを見せたとき、なぜかいつも以上に心を揺さぶられてしまう、という経験がある方もいるのではないでしょうか。

このように、最初のイメージに対する後からの印象のギャップを大きくすることで、心に与える影響も大きくできるというわけです。

ゲイン効果とは

ゲインロス効果はゲイン効果とロス効果に分けられ、ゲインとは「得る」ことを意味します。ゲイン効果とは、初めにネガティブな部分を見せ後からポジティブな面を見せることで、プラスの印象を与えられる効果です。

継続してポジティブな面を見せた場合よりも、プラスの印象を強く残すことが可能になります。

ロス効果とは

ロスとは「失う」という意味なので、ロス効果とは、ゲイン効果とは反対でよりネガティブな印象を強くしてしまいます。

初めにポジティブな印象を持っていても後からネガティブな要素を見てしまうと、初めから一貫してネガティブな印象を持っていた場合よりもマイナスの印象が大きくなってしまう効果があるということです。

ゲインロス効果の例文

ゲインロス効果を用いた具体的な例文をみていきましょう。

(BさんがAさんに対し)「Aさんは第一印象で『怖そうな人だな』と思ったのですが、話してみるととても心の優しい人だと感じました」

Aさんは「見た目や外見でBさんを『怖そう』だと判断したものの、話しているうちにBさんが外見とは裏腹に優しい人だと感じた」といった趣旨のコメントをしています。

このような言葉をかけられたBさんは、「ああ、ちゃんと自分の外見ではなく内面をしっかりと見たうえで人間性を判断してくれているんだな。それにとても正直に話してくれた」とAさんに対して感じ、好印象を抱くようになるでしょう。

もう一つ異なる例文をみていきましょう。

(料理の食べ手が作り手に対し)「見た目は野暮ったいけれど、実際に食べてみるどこか懐かしい味わいがして、心もおなかも満たされました」

こちらの表現も、最初は「野暮ったい」と提供された料理に対してネガティブな表現を用いていますが、そこから「心もおなかも満たされた」という最大級のポジティブな賛辞を送っています。このネガティブからポジティブな評価へのふり幅のおかげで、作り手の食べ手に対する評価はグッと高まりやすくなるでしょう。

ゲインロス効果のビジネスでの活用とは

ゲインロス効果は、ビジネスシーンにおいて主に2つの面での活躍が期待できます。コミュニケーションを必要とする場面が多いビジネスでは、ビジネスパーソンとしてどのような評価をされるかが業績に大きく関わります。

また、営業職の場合、商品などを紹介する機会で効果的な営業活動を求められますが、ゲインロス効果をどのように活用できるのでしょうか。

ここからは、ゲインロス効果をビジネスで活用する方法について解説します。

自分の人間性に惹きつける

人とコミュニケーションをとる際には、ゲインロス効果を上手に活用すると相手からの評価を上げられ、周囲を惹きつけることが可能になります。

ゲインロス効果を取り入れるときには、まずは自分の評価を下げるところから始めましょう。

例えば、最初に自分の得意なスキルや知識を隠して、少し頼りない印象を与えます。その後、コミュニケーションを重ねながら徐々に自分の実力を出していくと、それまでの低めの印象がプラスに変わり、相手によりポジティブな印象を与えられます。

初めから自分のよいところをさらけ出してしまうと、相手にそれ以上のインパクトを残せず、そこまで大きな印象を与えられないというわけです。

商品を魅力的に感じさせる

商品の魅力を感じてほしい場合は、最初に相手にネガティブな印象を植えつけてみるとよいでしょう。

自社商品の特徴として良い点と悪い点があるならば、まずは悪い点から伝えてみてください。こうすることによって、相手にとってネガティブな印象が基準となります。

その後に「ただし、こういった点を補って余りある魅力がこの商品にはあります。具体的には~」といった具合に商品をアピールすることで商品をより魅力的に感じさせられるでしょう。

ゲインロス効果の実践で注意したいこと

ゲインロス効果はさまざまな場面で活用できますが、人間の心の動きは繊細なものです。ゲインロス効果を使っても簡単に効果が出るわけではなく、使う場面を間違えたり過度な使い方をしたりすると、より悪い影響をもたらしてしまう可能性もあるため注意して使用しなければなりません。

ここからは、ゲインロス効果を使用するときの注意点について解説します。

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    ゲインロス効果を使う際の注意点を把握しておきましょう

ふり幅を大きくしすぎない

ゲインロス効果を使うときには、ふり幅が大きくなりすぎて違和感がでないようにコントロールをする必要があります。急な態度の変容、発言内容の変更は相手を混乱させて疑念の目で見られてしまうようになります。

活用する場面を見極める

ゲインロス効果は、どんな場面でも効果が出るわけではありません。例えば、継続してコミュニケーションを取る機会のない人と話をする際にゲインロス効果を使おうとすると、マイナスの印象をプラスの印象に書き換えることができないまま終わってしまう場合もあります。

ゲインロス効果を活用する場面をよく考えてから活用しましょう。

ネガティブ要素は最初だけにする

ネガティブ要素を途中で入れ込むと、ゲインロス効果が薄れてしまいます。途中でネガティブなところを見せてしまうと、相手に「やっぱりこれが普通なのかな」といった印象を持たれてしまうことがあるため注意が必要です。

ネガティブ要素は出す場所を誤ると逆効果を生むため、初めだけにするように徹底しましょう。

ゲインロス効果以外の効果

ここまでゲインロス効果について紹介してきましたが、活用できる心理効果は他にもいくつかあります。

心理効果は気づかないうちに影響していることもあるため、どのような効果があるのか頭に入れておきましょう。

ハロー効果とは

ハロー効果とは「ある対象に対する印象や評価が、その見た目や特徴に左右されて歪められてしまう現象」を意味します。「ハロー」は光の輪が現れる大気光学現象を指し、日本語では後光と訳されるため、ハロー効果は「光背効果」「後光効果」とも呼ばれます。

ハロー効果は社会心理学において「認知バイアス」と呼ばれるものに該当します。

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単純接触効果とは

単純接触効果とは、初めのうちは興味関心がなくても、何度か触れる(接触する)うちに強い印象を受け、好感を抱くようになる――というものです。「ザイアンス効果」とも呼ばれています。

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ゲインロス効果の上手な活用で評価と結果を得よう

今回は、ビジネスにおいて活用できる、ゲインロス効果について紹介しました。

初めにあえてマイナス要素を見せておいて、後からプラスに変えていくことを利用した心理効果は、上手に活用すれば自身の評価を高めてビジネスでの成績アップにもつなげられます。

しかし、ゲインロス効果は、活用する場面や度合いを間違うと逆の効果を生むリスクもあるため注意が必要です。むやみに使うのではなく、加減や場面を見極めながら上手に活用し、ビジネスに役立てましょう。