「目標を一緒に追いかけないと、中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は成功しない」。そう断言するのは、人工知能搭載型RPAの開発・販売を行う、batton 代表取締役の川人寛徳氏。

今回は前回に引き続き、"伴走力"を強みとするbattonの川人氏と、同じく中小企業の"伴走者"である税理士であり、幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家でもあるSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、「中小企業のDX」をテーマに対談を行いました。

  • 中小企業のDX成功の秘訣は「伴走力」にある【後編】

RPAのレシピをシェアすることでRPA導入をスピーディーに

井上一生氏(以下、井上) : RPAを扱う会社はたくさんあります。前回伺った「伴走力」のほかに、battonの特徴はどのようなものがありますか?

川人寛徳氏(以下、川人) : 人間が行うコピー&ペーストのような一連の流れをロボットに覚えさせて自動化するのがRPAで、そのプログラムを「レシピ」と呼んでいます。このレシピをユーザー同士でシェアできるのがbattonの特徴です。

川人 : ビジネスモデル塾時代に参加者の経営者の方々と話をしていて「自社でもやっているけど、他の会社でもやっていること」があって、それで「同じことをやっているなら、会社を超えて業務をシェアできないか?」と考えたことがありました。同じ業務をしているなら、同じRPAのレシピを他社でも活用できるはずですよね。活用できる既存のレシピがあるのに、すべてを1から作り上げるのは非効率ですし非合理的です。

使っているソフトが違うと微調整は必要ですが、battonユーザー同士はレシピをシェアでき、微調整で済むので1からレシピを作る必要はありません。これで、スピーディーにRPAを導入できるようになります。

井上 : 今後、後継者不在などで会計事務所のM&Aが増えていくと思います。そのとき、会計ソフトがそれぞれ違うことがハードルになりますが、battonなら微調整で済むので業務の統合作業もスムーズにいくかもしれませんね。

川人 : RPAがうまく動かない場合は、弊社側で検証することができます。他のRPA会社だと1週間かかる改善が、弊社では最短1時間でできることもあります。レシピをシェアしているからこそ実現できることです。

  • batton 代表取締役 川人寛徳氏(左)、SAKURA United Solution 代表・井上一生氏(右)

RPA+BPO=「DXソーシング」

井上 : なるほど。それはRPAを導入する側にとって、とてもありがたいです。私なら、一回全部をbattonにBPO(アウトソーシング)して、一通り検証してもらいますね。その方が確実に思えるので。

川人 : それも可能ですし、RPAとBPOはセットだと考えています。RPAでロボットに置き換える業務と、BPOで社外に外注する業務を分けることで、業務の効率化を図り、本来すべきコアな業務に集中できるようになります。これらを「DXソーシング」と呼んでいます。

井上 : まさに、中小企業に必要とされるサービスですね。DXを検討しているものの、どうすれば良いかわからない中小企業は多いと思います。この課題に対して、RPAとBPOを組み合わせたDXソーシングに答えがありそうです。

川人 : 私はよく「ドリルと穴」に例えるのですが、ドリル=RPAで、穴=目標の実現です。中小企業はドリルではなく、穴が欲しいわけですよね。RPAは、たくさんの種類があり、正直どれを使っても穴は開きます。その企業や業務に合う合わないや、導入が早い遅いはありますが、穴は開くのです。多くのRPA開発会社はドリルをつくるだけで終わってしまう。私たちはそれだけでは不十分だと感じたので、目標の実現まで伴走することに決めました。

より良い仕事をするためにDXソーシングを実現する

井上 : DXはブームと言えるかもしれませんが、ブームで終わらせてはいけないと思います。一時のブームだと、やがて「どうせできない」となってしまう。でも、コロナ禍の影響もあり、そうも言っていられない状況です。

川人 : そうですね。「今年はDXをやるぞ!」と経営層は思っても、現場はそうでもない。上が言うからやるだけ、という企業も多いと思います。

井上 : 「RPAやDXで、自分たちが不要になるのでは?」と、不安になる社員もいるはずです。できない理由を並べるのは簡単なことですが、より良い仕事をするためにRPAを導入する、DX化するという目的をより理解してもらえるように、経営層も努力する必要があるのかもしれませんね。さて、川人さんは、今後どのような展開をお考えですか?

川人 : マーケットプレイス化を考えています。つくったレシピを売買できるマーケットをつくっていきたいですね。それも、日本国内だけではなく、世界を股にかけたグローバルなマーケットにしたいです。

例えば、シリコンバレーの最先端のレシピを買う。もしくは、自分でつくったレシピをアジアやアラブ、ヨーロッパで売るなど、そんな自由なマーケットができたら楽しいと思います。レシピが売買されることで、世界中のさまざまな企業にレシピが広まります。そこから多様で新しい働き方を生み出せると考えています。