「虚心坦懐」は頻繁に使われる言葉ではないため、初めて目にする方も多いでしょう。本記事では、虚心坦懐の意味や類語、英訳などを紹介します。正しく理解してビジネスシーンに活かしましょう。
「虚心坦懐」の意味とは
虚心坦懐とは、心にわだかまりがなくさっぱりした気持ち、物事に平静に臨むこと、臨んでいる姿を表す意味の言葉です。そのため、抱えているわだかまりや先入観などを取り払い、素直な気持ちや平静な気持ちで物事に取り組むときに思い出したいワードと言えます。
人は緊張すると、雑念に振り回されやすくなります。また意気込みすぎて気負ってしまい、力を発揮できない場合もあるでしょう。そのようなときは虚心坦懐し、肩の力を抜くことで、いつも通りの力を発揮することにつながるのです。
ビジネスシーンにおいては、初めての仕事内容で緊張する後輩にアドバイスをするときや、報告書の文章などでも活用できます。また、交渉の場でも用いられる言葉です。
読み方は「きょしんたんかい」
虚心坦懐の読み方は「きょしんたんかい」です。一見難しく思えますが、特別難しい読み方の漢字があるわけではないので、一度覚えてしまえば読み間違えることもないでしょう。一方、漢字で書くときには「懐」を「壊」と書き間違えないように注意してください。
「虚心坦懐」の由来・語源
虚心坦懐は、2つの言葉を組み合わせてできた四字熟語です。虚心は、「空」や「何もない」という意味の「虚」と、気持ちを表す「心」の組み合わせによってできています。これは「心に先入観やわだかまりがない状態」を表し、ありのままで素直な気持ちを意味します。
坦懐は、「心が穏やか」「平」などの意味を持つ「坦」と、「心に抱く思い」や「胸中」を表す「懐」の組み合わせです。「心が安らかな状態」を表し、平静な状態を意味します。
この2つの言葉の意味が組み合わさって、わだかまりや先入観がない平静な気持ちという意味の虚心坦懐という言葉ができあがりました。
「虚心坦懐」の使い方・例文
率直な意見を交わしたいときや、先入観なく取引先との対話を進めたいときなどに、虚心坦懐の心構えは重要です。
使い方はシチュエーションにより異なり、会議や打ち合わせの報告書の所見欄に、自分の意見として「虚心坦懐な話し合いで契約締結となった」などと記載できます。また、先入観で凝り固まっている相手に「虚心坦懐の気持ちで行こう」などと声をかけるケースもあります。
そのほか下記のような使い方もできるので、ぜひ参考にしてみてください。
<例文>
- 気負わず虚心坦懐の気持ちで臨めば大丈夫
- 虚心坦懐に意見をすり合わせましょう
「虚心坦懐」に似た四字熟語
虚心坦懐には、似た意味の四字熟語がいくつかあります。言葉によって微妙にニュアンスが異なるため、シチュエーションを選んで使い分けましょう。
虚心平気
「虚心平気」は、心を穏やかにすることや、心に動揺がなく落ち着いている様子を表し、虚心坦懐と同じような意味で用いられる言葉です。
<例文>
- 虚心平気にやってのける
明鏡止水
心が清く澄み切って邪念のないことを表す「明鏡止水」も、虚心坦懐と似た意味を持つ言葉です。汚れない鏡、明鏡で邪念がないこと、止水は動きがない不動の心を表します。心穏やかに焦りや不安、苛立ちなどのマイナスの心がない状態です。
<例文>
- 明鏡止水の気持ちで休みを過ごした
- 明鏡止水の心境で挑む
誠心誠意
「誠心誠意」とは、打算的な気持ちを持たず、真心こめて相手に接することを表す言葉です。心を穏やかに、誠実な心で物事にあたることを意味するため、虚心坦懐と似た意味を持つ言葉として使用できます。虚心坦懐よりも使いやすく、意味が浸透している言葉でしょう。
<例文>
- 企画に対して誠心誠意尽力します
- 期待に応えられるよう、誠心誠意努力します
自由闊達
「自由闊達」は、心がのびのびとして、物事にこだわらない様子を表します。ビジネスシーンにおいては、柔軟に対応するという意味で使われることが多いです。
<例文>
- 自由闊達な社風だ
- 自由闊達な議論を行う
関連記事: 社風にも使われる自由闊達の意味ってなんですか?
「虚心坦懐」の類語・言い換え表現
虚心坦懐にはいくつかの類語、言い換え表現があり、心を開いて関わる様子や、真摯な心で物事にあたる様子を表す言葉がそれにあたります。言い換え表現も覚えて、適切に使い分けましょう。
胸襟を開く
「胸襟を開く」とは、心を打ち明けることを意味する言葉です。胸襟とは胸の内や心の中という意味で、それを開く、すなわち「心の中を打ち明ける」ことを表します。
また、胸襟は着物の前合わせを指します。前合わせを開いて包み隠しているものをなくすことで、胸の内をさらすという意味を持ちました。
<例文>
- 胸襟を開いて話し合う
- 胸襟を開けるようになった
平穏な心
「平穏な心」は、心が穏やかで、気持ちが落ち着きもの静かな状態です。波風が起きない、心が静かに凪いだ状態を平穏と言い表せます。わだかまりや先入観、偏見がなく心穏やかな方は、人間関係も円滑に発展できるでしょう。
<例文>
- 平穏な心で対応する
- 平穏な心を保つ
「虚心坦懐」の対義語
虚心坦懐には対義語もいくつかあります。わだかまりのない平静な心を表す虚心坦懐の対義語は、心が落ち着かない、制御できないという様子を表す言葉があげられます。
疑心暗鬼
疑いの心で見ると何でも疑わしく感じるという意味の「疑心暗鬼」は、「疑心暗鬼を生ず」という「師友雑志」の中の一説から生じた言葉です。
疑心は仏教から出た言葉で「疑う心」、暗鬼は「暗闇の中の鬼」という意味で、疑いの心は暗闇に見えないはずの鬼をも見せる、というのが語源となっています。一度疑い始めると些細なことですら不安に感じ、恐ろしくなるという意味です。
<例文>
- 心配性で疑心暗鬼になりやすい
- 疑心暗鬼の状態では客観的に考えられない
意馬心猿
「意馬心猿」の心猿は「欲望で心の乱れが抑えられない状態」を表します。意馬は「走り回る馬のように心の働きが鎮まらない」という意味です。そのため意馬心猿は、煩悩や欲情、妄念のため心が落ち着かない状態を例え、本能のまま、自分自身をコントロールできない場合などに使われます。
<例文>
- 意馬心猿ではなく周囲への気配りが大切である
- 意馬心猿とは無縁の生活を送っている
玩物喪志
「玩物喪志」は、自分の好みを過度に愛好し正しい心を失うこと、枝葉末節にこだわり本質を見失うことを表します。書経の中の「人を玩べば得を喪い、物を弄べば志を失う」という一説が語源となっていなす。ビジネスでも、自分の中の偏見やわだかまりに固執するあまり、本質を見誤らないようにしましょう。
<例文>
- 玩物喪志にならないよう気を付ける
- ゲームに夢中で仕事が進まないのは玩物喪志というものだ
焦心苦慮
「焦心苦慮」は、あれこれ悩んで苦心すること、心を痛めてあれこれ思いをめぐらし悩むことを意味します。焦心は「心を苛立たせること」、また「思い悩む気持ち」を表します。苦慮は「苦心して色々と考え、思い悩む」という意味です。
<例文>
- ひとりで焦心苦慮しても何も変わらない
- 焦心苦慮したことが水の泡だ
「虚心坦懐」の英語表現
虚心坦懐と同じような意味や状態を表す英語表現を、例文を交えて紹介します。使うシチュエーションやニュアンス、前後の文脈により、使われる英語表現が変わってくるので、正しく理解しておきましょう。
open mind
虚心坦懐の主な英訳は「open mind」があげられます。open mindは偏見のない心、先入観を持たないなどの意味を持ちます。
<例文>
- He is open minded person.(彼は心の広い人間だ)
- with an open and calm mind.(心を開き、落ち着いた心で)
to be frank
率直にいえば、正直にいうとという意味を持つ「to be frank」も、虚心坦懐と同じニュアンスで使えます。to be frankは、本音をいう場合の前置きにも使われます。
<例文>
- to be frank with you.(率直にいうと/はっきりいって)
without prejudice
「without prejudic」は、偏見なしに、虚心なしにという意味です。withoutは~がなく、 prejudiceは偏見や先入観という意味を持ちます。
しかし、法律など英文の契約書で使用される場合には「権利侵害」という意味になり、「他の権利に影響を与えることなく」といった訳になるため注意しましょう。
<例文>
- Discuss without prejudice(先入観なしに話し合う)
- without prejudice to the right on(法律の権利を侵害することなく)
「虚心坦懐」の意味や使い方を理解しよう
先入観にとらわれず、わだかまりのない平静な状態を表す虚心坦懐という言葉ですが、頻繁に活用する言葉というわけではありません。
ビジネスシーンにおいて、わだかまりや偏見にとらわれ、心を乱されると思ってもいない状態に陥る可能性があるかもしれません。そうならないためにも、虚心坦懐の心構えを常に意識したいものです。
また、人間関係を円滑にするためにも、虚心坦懐の心構えは役立ちます。お客様や取引先の方と虚心坦懐の気持ちで接することで、良好な関係を築きやすくなるでしょう。