声優アーティストの上田麗奈による1stライブ「上田麗奈1st LIVE Imagination Colors」が3月14日、東京・LINE CUBE SHIBUYAにて開催された。

同公演は、昨年7月23日に予定されながらも新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期となった公演の振替公演であり、開場前から上田麗奈の記念すべき初ライブを待ちわびるファンの姿が見られた。

開演前、会場には波の音のSEが流れ、ステージ前方に下された紗幕には波打つようなダークブルーのライティングが施されていた。そんな“海”をイメージさせる空間に、デビューミニアルバム『RefRain』のリード曲「海の駅」のイントロが静かに鳴りはじめ、紗幕越しに上田の姿がぼんやり現れる。まるで海の底に佇んでいるような上田の「ラララ……」という声が会場に響いた瞬間、観客の多くが「このライブはやばい」と息を呑んだのではないだろうか。それほどまでに存在感のある、あるいは場を支配するような歌声とともに1stライブは幕を開けた。

「海の駅」をワンコーラス歌ったところで紗幕が上がると、ステージ最奥に青々と葉を茂らせた大樹、その手前に緑に包まれた丘を設けたステージセットが露わになり、先ほどまで“海”だった空間が“森”へと変わる。上田はシンプルな白のロングワンピースに、羽をあしらった白いスニーカー、右耳にイヤリングという出立ちで、柔らかい笑みを浮かべながら「海の駅」を歌い終えると「みなさんこんにちは、上田麗奈です」と客席に向かって一礼。現場の観客と生配信の視聴者に感謝の気持ちを伝えたのち、ステージ下手にあるもうひとつの小さな丘に移動しながらMCを続ける。

「緊張は、私はしているんですけどね、みなさんはリラックスして、楽しく聴いてください。寝ちゃってもいいです(笑)。このセリフ、どこかのお祭りでも言ったような気がしますけど……懐かしい。『ランティス祭り』があって、あの曲を歌って、『ライブ、やってみようかな』って、今日この日を迎えました。ちょっとだけ、チーム上田麗奈が作る、みんなで作る夢の世界、覗いていってください」

そう話しながら椅子に腰かけ、緑色の表紙の絵本を開き、歌いはじめたのは1stシングル表題曲「sleepland」。同曲は「ランティス祭り2019」にて、作詞・作曲・編曲を手がけたrionosのキーボード演奏をバックに、上田がソロアーティストとして初めて人前で歌った曲だ。そんな「sleepland」を当時と同じスタイルで、しかし今度は上田ひとりで、物語を読み聞かせるように観客へ届けた。

歌が終わると、上田は手にしていた絵本を開いたままの状態で机に立てかけ、次の曲「fairy taleの明けに」へ。この曲では森の中をさまようような演劇的なパフォーマンスで、続く「誰もわたしを知らない世界へ」では大樹を背にした堂々とした歌唱で観客を魅了した。

この「誰もわたしを知らない世界へ」の終盤、ステージ後方の丘が割れて岩肌が現れ、いつしか“森”は“湖”へと変貌していた。そして水のせせらぎ、小鳥のさえずりのSEが流れ、「花の雨」へ。それまでより明るい照明のもと、上田は軽快なカントリーポップのリズムに合わせて体を揺らしながら、寿退社したマネージャーへの思いを込めたこの曲を嬉しそうに披露した。続いて「たより」「きみどり」という、温もりを感じるミディアム~スローテンポのナンバーを丁寧に、しっとりと歌い上げた。

アンビエントなインスト曲「Falling」が流れるなか、照明は昼から夕方へ移り変わるように調光され、上田が1stアルバム「Empathy」のライナーノーツで「ぐるぐる悩んで抜け出せないまま」と評した「ティーカップ」へと接続される。上田はときにくるくる回り、ときに顔をしかめ、あるパートでは音源より感情を露わにし、歌詞の最後「抜け出せずに揺れる ティーカップから」でちょこんとしゃがみ込むなど全身を使って楽曲の世界を表現した。

余談だが、ライブ当日のリハーサルでの上田の声出しの第一声は「うわああ、緊張するううう! 消えたい!」だった。しかし上田のステージングは、本番の数時間前までそんなことを言っていた人のそれとはとても思えない。上田の動きはあくまで自然体であり、同時に芝居のようでもある。いずれにせよ、身体表現においても観客を楽しませていたことは間違いない。

「ティーカップ」のあと照明は紫と青に切り替わり、ステージ上は夜の湖に。そこで歌われたのは、息苦しさとともにほのかな光を感じさせるストレンジなエレクトロニカ「aquarium」。上田は今にも泣き出しそうな表情で、ときに声を震わせながら目一杯の感情を込め、観客を圧倒した。

次の瞬間、ステージが暗転。ほどなくして、薄明かりの中で白いロングコートを羽織った上田の姿が浮かび上がる。その背後の大樹はすっかり葉を落とし、灰色に。“湖”だったステージは、“冬”を迎えていた。そんなモノクロの世界で披露されたのは、上田の声とピアノの音だけで奏でられる「旋律の糸」。両手で自らの首を絞めるような仕種で「殺してく 並んだ糸を一つ 切り離そう 私と世界を」と歌い、うっすら笑みを浮かべる上田の姿には静かな狂気を感じた。

間髪をいれず「毒の手」「車庫の少女」という、やはり上田のディスコグラフィの中でも特に暗く、冷たい2曲が続く。しかし、いずれも「RefRain」に収められた曲であるが、「毒の手」では上田の悲痛ともいえる歌声に言葉を失うも、後半は音源よりも希望的なニュアンスが感じられた。「車庫の少女」も同様に、コンプレックスを描いた曲でありながら、その歌声は自信に溢れているように思えた。これが「Empathy」を経た上田の歌ということなのだろうか。