カンテレ社内に集まった企画は、総数72本。その中から、田中&吉川両ディレクターの企画が選ばれた。意気揚々と、シンガポールからオンライン開催されるATFのペーパーフォーマット(※海外への販売を目的として作られた番組企画で、まだどの国でも放送・制作がされていないもの)コンペティションに臨む。すると、世界各国から集まった5つの企画のファイナリスト作品の1つに、『QUIZ GO ROUND』が選出された。
コンペの審査員は、欧州の大手制作会社幹部など世界エンタテイメント業界の専門家たち。テレビや配信を通じて「世界ヒットにつながるポテンシャル」と「独自性」が主な審査基準になるが、『QUIZ GO ROUND』には「回転寿司のベルトを模したセットは視覚的にインパクトがある。構成もよくユニークな企画」と評価が集まった。
同じくファイナリスト作品に選ばれたのはインドネシア、フィリピン、シンガポールの作品。最優秀賞はインドネシアの企画が獲得し、カンテレは惜しくも受賞を逃したが、初の海外コンペでファイナリストに選ばれたことは制作者に十分に刺激を与えていた。それは、吉川Dが話す言葉からも伝わってくる。
「格闘技をベースにした企画など、視覚的にパンチが強い企画がファイナリストにそろっていました。それに比べて、回転寿司を見立て、ベルトコンベアーが回るというビジュアルは弱いのかもしれないと思っていたところもありました。でも、結果はポジティブに受け取られていました。日本のバラエティらしいバカバカしさも含まれていることも海外からは目新しく映ったようで、自信がつきました」
■ベルトコンベアーのセットに制作費の半分
シンガポールでの好結果を得て、社内も動き出す。実際に世界にセールスするとなると、実際に番組化されている現実味のある企画が求められるからだ。聞けば、ベルトコンベアーのセットに制作費の半分を要するという。予算上においても苦労が伴ったようだが、『QUIZ GO ROUND』を番組化するための予算がついに通った。
企画案の通り、回転寿司の要領でくるくると回ってくる4つの選択肢の中から、流れきる前に正解を選び取るというシンプルながら、心理戦を交え、リアクションを楽しむクイズ番組として成立させた。アンタッチャブル・柴田英嗣のMCで、四千頭身、みちょぱ、ちぴたん、JOY、わたなべ麻衣がクイズに挑戦し、ゴールデンタイムで放送される。
最後に、田中&吉川両ディレクターに、世界ヒットを目指す中で、大阪ローカルの局として、番組の“大阪らしさ”はどこにあるのか尋ねた。返しは「回転寿司は大阪発ですから!」と即答。東大阪市の元禄寿司が回転寿司を始めたのが有力な説という。
大阪のテレビマンが世界進出を夢見る企画として、考えようには必然性すら感じる。ドイツ拠点の大手配給会社であるRed Arrow Internationalと国際版を共同開発することが決定し、その吉報が放送当日に届いた。着実に歩み出す中、海外でもかたちになる日が待たれる。
●吉川亮太
1990年生まれ、東京都出身。法政大学卒業後、13年に関西テレビ放送入社。『土曜はナニする!?』『ちゃちゃ入れマンデー』などを担当。
●田中祥吾
1991年生まれ、兵庫県出身。早稲田大学卒業後、14年に関西テレビ放送入社。『にじいろジーン』『土曜はナニする!?』『ちゃちゃ入れマンデー』などを担当。