「業腹」という言葉をご存知でしょうか。日常生活ではあまり見聞きしない単語ですが、小説や文学の世界ではポピュラーな言葉です。つまり、話し言葉というよりは書き言葉で常用されています。とはいえ、ビジネスの場などでは使用する機会がある単語です。
この記事では、「業腹」という言葉の意味や語源、使い方について、日常生活やビジネスシーンなどで使用できるように、例文を交えながら紹介していきます。
「業腹」とは? 意味と読み方
業腹とは、「非常に腹が立つこと、癪にさわること」という意味の言葉で、読み方は「ごうはら」です。
だれかや何かに対して軽く苛立つ程度ではなく、どうしようもなく腹が立ったり、激しい怒りを抱いたりするようなシチュエーションで使います。
「業腹」の語源・由来
業腹は、業火が腹の中で激しく燃えるような状態が語源の言葉です。激しい怒りを表す言葉であるにもかかわらず、なぜ「怒り」ではなく「業火」という意味を含む文字が入っているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
それは、「業火」という言葉がもともと仏教用語に由来するためです。仏教語での「業火」とは、自分の行った悪業の報いによって苦しめられることを「火に焼かれること」に例えた言葉です。ちなみに、「業」は仏教語で人間の煩悩に基づく行為、特に悪行を示します。
「業腹」の使い方・例文
業腹の使い方にはポイントがあり、上述したとおり、軽く苛立つ程度の怒りではなく、心の底から腹立たしいという時にのみ使用されます。また、自分の感情を表現するだけでなく、だれかを形容する場合にも使えます。
<例文>
- 私から声をかけるのは、彼に屈したようで業腹だ。
- あの方はどこまでも業腹だった。
「業腹」の類語・言い換え表現
業腹にはいくつか類語がありますが、日常生活でもよく聞く類語から取り上げて解説していきます。意味と使い方を知り、それぞれの似た言葉を使い分けられるようにしましょう。
激怒
「激怒」は、「激しく怒ること、また、その怒り」という意味の言葉です。業腹よりも、日常会話でよく耳にすることが多い言葉でしょう。漢字の意味も分かりやすく、口語で使っても意味が相手に伝わりやすい言葉です。
<例文>
- あの温厚な上司が激怒する姿は初めて見た。
- あまりの屈辱に、私はかつてないほど激怒した。
怒気
「怒気」は、「怒った気持ち、怒りを含んだ様子」を表す言葉です。基本的に、怒気を含む・怒気をはらむ、といった使い方をします。怒りの気配が感じ取れる、という意味での使い方が多いです。
<例文>
- 彼の口調には怒気が混じっている。
- 後ろ姿からも怒気がにじみ出ている。
忌々しい
「忌々しい」という言葉には、「非常に腹立たしく感じる、しゃくにさわる」、「けがれを避けて慎むべきである、遠慮すべきである」、「不吉である、縁起が悪い」などの意味があります。業腹と似ている意味は、「非常に腹立たしく感じる」が最も近しいでしょう。
<例文>
- 彼の挙動が忌々しくて仕方がない。
- あの忌々しいビルのせいで、うちはいつも日陰だ。
腸が煮えくり返る
「腸(はらわた)が煮えくり返る」は、激しい怒りをこらえられないさまをいいます。「腹が立つ」よりも、強い怒りを表した表現です。
「腹」は腹部の表面を指しますが、「腸」は腹部の内部を指す言葉です。そのため身の内から怒りがこみ上げているさまを表現している言葉ともいえます。
<例文>
- 言葉にはしないけど、彼が腸が煮えくり返っていることはよく伝わる。
- あの日を思い出すと腸が煮えくり返る思いだ。
「業腹」の英語表現
業腹には、英語で表現できる単語がいくつかあります。ここからは、業腹の英語表現を、例文を交えて紹介します。英語でコミュニケーションを取る機会に備えて覚えておきましょう。
spite
「spite」は日本語に訳すと「悪意、意地悪」という意味です。厳密に「激しく怒る」という意味ではありませんが、同じようなニュアンスで使われることが多い単語です。
<例文>
- vent one's anger [spite, spleen] on [upon].(激しい怒りをぶつける)
- He did it from [out of] spite.(激しい怒りから[腹いせに]それをしたのだ)
resentment
「resentment」は、日本語訳で「(長く続く、または鬱積した)憤り、立腹」という意味です。
<例文>
- He felt resentment at the way he had been treated.(彼は自分の受けた待遇に腹が立った)
- I feel resentment against your unwarranted criticism.(僕は君の根拠のない非難に腹が立っているんだ)
「業腹」の意味や読み方を覚えてビジネスシーンでの誤用を防ごう
業腹は普段あまり見聞きすることのない単語ですが、仏教に由来する、深く激しい怒りを表す言葉であるということがわかりました。
類語や英語表現も覚えて、業腹をより身近な言葉にし、これからのコミュニケーションをより充実させていきましょう。