2011年3月11日に発生した未曾有の災害・東日本大震災から10年。マイナビニュースでは、この震災に様々な形で向き合ってきた人々や番組のキーパーソンにインタビューし、この10年、そしてこれからを考えていく。
日本テレビ系バラエティ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』(毎週日曜19:00~)で、TOKIOのメンバーたちが体を張って農作業などに挑む看板コーナー「DASH村」は、福島第一原発事故によって撤退を余儀なくされたが、「出張DASH村」や「新男米」はもちろん、「新宿DASH」「DASH島」など、様々な企画でそのDNAは今も生き続けている。
島田総一郎統轄プロデューサーに、この10年の取り組みやTOKIOに感じる福島への愛情、そして4月以降新体制となるTOKIOとともに構想する今後の展開について、話を聞いた――。
■月10回はTOKIOの誰かが来ていた
――「DASH村」は2000年にスタートした企画ですが、島田さんが『ザ!鉄腕!DASH!!』のプロデューサーに就任された2008年には、TOKIOさんと福島の皆さんとの関係は、もうかなり強固なものになっていましたよね。
そうですね。僕が来たときは、「DASH村」がこの番組の代名詞みたいな感じで、『鉄腕DASH』という名前よりも有名だったかもしれないです。TOKIOさんが街でロケをやっていても「あ、DASH村だ!」と言われることがあるくらいだったので(笑)
当時は、長瀬(智也)さんと松岡(昌宏)さんがドラマで忙しくて、国分(太一)さんは『すぽると!』(フジテレビ)のキャスターをやってオリンピックの取材にも行ってた時期で、リーダー(城島茂)と(山口)達也さんがわりとメインになって、どんどん農業にのめり込んでいたので、僕が来たときにはもうプロ集団みたいになってました(笑)
――福島のDASH村には、どれくらいの頻度で行っていたのでしょうか?
スタッフたちが周辺に暮らしていたので、DASH村は常に誰かがいるにぎやかな場所でした。撮影も毎日のように行っていたので、下手したら月10回くらいはTOKIOの誰かしらが来ていました。達也さんに至っては、たまに休日もプライベートで来てましたよ(笑)。きっと、畑で育ててる野菜や建築中の建物とかが心配だったんでしょうね。
TOKIOやスタッフに農業を教えてくれる近所の農家さんたちにとっても、DASH村が集会場のような感じになっていて、みんなぷらっとやってくるんですよ。本当に地域のコミュニティができていたんです。たぶん近所の皆さんも「芸能人がいる」という感覚はないので、「写真撮って」とか「サインください」とか一切なく、フラットな温度で接してもらえるので、TOKIOにとっては居心地が良かったのかもしれないです。
■防護服で数か月無人状態のDASH村へ…
――そんな中、2011年3月11日14時46分に、東日本大震災が起きました。
あれは金曜日でしたが、僕は汐留の日テレ社内で翌週の『鉄腕DASH』の準備をしていて、DASH村には城島リーダーと達也さん、そしてスタッフたちがいました。地震発生から、わりとすぐにDASH村と連絡が取れて全員の無事が確認できたとき、ものすごく安堵したのを覚えています。当時はまだ事の重大さを理解し切れていなかったので、翌日にリーダーが日テレの特番収録に出る予定で、「新幹線止まっちゃったけど、明日の収録間に合うか?」みたいな心配をしていましたね。
――福島第一原発の事故が大きく報じられたのは、発災翌日でした。
翌日になって、「原発が危ないという情報があるから、急いで避難して」と、東京から電話したんです。でも、その温度感がなかなか現地のスタッフに伝わらない。というのも、DASH村には目に見えるような被害はなくて、敷地も広くて余震で建物が倒れる心配もない。近所の方もDASH村に避難しに来るくらい安全に感じられたみたいです。3月11日の夜も一緒にご飯を食べたりして過ごしていたそうです。だから、東京から「急いで避難して」と言っても、向こうは「安全だから」と返してきて、すごく温度差を感じたのを覚えています。その後、皆DASH村から陸路で東京に戻ってくるんですが、周辺の道が地割れしていて、かなり苦労したようです。
――その後、DASH村の地域は避難区域に指定されました。
DASH村という企画そのものは2011年3月11日のロケが最後になっています。とはいえ様子は気になるので、浪江町に許可を頂き、防護服を着た状態で定期的に様子を見に行きました。
避難区域になった直後の2011年夏にDASH村へ行ったときは、数か月も無人状態のDASH村が大丈夫なのか緊張して入っていったのを覚えています。でも、被害は崖が崩れたくらいで、茅葺き屋根も崩れてなくて、びっくりするくらい何も倒壊していなかったんです。だから、古の知恵を生かした木造建築は揺れにすごく強いんだなというのを感じました。