生命保険料控除について、控除の対象となる保険契約と種別、控除額の上限や手続き方法(確定申告・年末調整)など基本的な知識をまとめました。生命保険料控除を行う際よくある質問についても紹介しているため、申告時には参考にしてみてください。

  • 生命保険料控除とは

    生命保険料控除を行うことで大きな節税効果がある

生命保険料控除とは

生命保険料控除とは、納税者が生命保険料や介護医療保険料などの保険料を支払った際、支払った保険料の一定額をその年の所得から控除できる制度のことです。保険の種類や契約の締結時期により、取り扱いや計算方法が異なるため、以降で順番に説明します。

生命保険料控除の対象となる保険契約と種別

生命保険料控除の対象となる保険契約は生命保険、介護医療保険、個人年金保険の3種類です。

生命保険とは、生死によって一定額の保険金が支払われる保険契約のことを指します。介護医療保険とは、疾病や身体の傷害などにより支払った医療費に対する保険金などが支払われる保険契約のことです。

生命保険と介護医療保険は、さらに以下の条件を満たす必要があります。

  • 保険期間が5年以上の契約
  • 貯蓄保険や貯蓄共済ではないこと
  • 外国の保険会社と国外にて締結した保険契約ではないこと
  • 信用保険契約、傷害保険契約、財形貯蓄契約、財形住宅貯蓄契約、財形年金貯蓄契約などではないこと

個人年金保険は、年金(退職年金を除きます)を給付するタイプの保険契約などで、以下の条件を満たす契約です。

  • 年金の受取人は保険料の払込者またはその配偶者
  • 年金の支払いを受けるまでに10年以上の期間、定期に支払う契約
  • 年金受取人が満60歳になってから支払う10年以上の定期または終身年金
  • 被保険者の重度障害により年金支払いを開始する10年以上の定期または終身年金

いずれの保険契約も毎年10月頃、生命保険会社から生命保険料控除証明書が郵送されて来るため、生命保険料控除の対象かどうかがわかります。

旧契約と新契約の違い

生命保険料控除は、2011年(平成23年)12月31日以前に締結した契約を旧契約、2012年(平成24年)1月1日以後に締結した契約を新契約として扱いが異なります。どのような違いがあるかを一覧表にまとめました。

相違のある部分 旧契約 新契約
保険の種類 生命保険
個人年金保険

生命保険
介護医療保険
個人年金保険

(旧契約の生命保険から介護医療保険分離)

保険種類別の所得税控除額 5万円 4万円
合計の所得税控除額 10万円 12万円
保険種類別の住民税控除額 3万5,000円 2万8,000円
傷害特約や災害割増特約などの扱い 控除対象 控除対象外

旧契約・新契約の大きな違いは、控除額を計算する保険料の種類が2種類から3種類(介護医療保険新設)になった点です。

旧契約では介護医療保険も生命保険とされていましたが、新契約では別々に計算できるようになり、合計の所得税控除額は10万円から12万円にアップしました。ただし、保険種類別の所得税・住民税の控除額上限は、新制度になって減額となっています。

生命保険料控除の上限額

新契約では生命保険、介護医療保険、個人年金保険をそれぞれ分けて計算し、各控除額の上限は4万円ずつ、合計12万円が合計控除額の上限です。

旧契約では、生命保険と介護医療保険はまとめて生命保険として計算します。生命保険と個人年金保険の控除額上限は5万円ずつ、合計10万円が控除額の上限です。

生命保険料控除の基本的な知識を整理したところで、具体的に生命保険料控除の控除額の計算方法について説明します。

  • 生命保険料控除とは

    新旧契約や保険の種類別に生命保険料控除の方法は異なるので確認しながら合算を

生命保険料控除の控除額の計算方法と早見表

生命保険料控除の控除額について、計算方法と控除額の早見表を紹介します。

生命保険料控除の計算方法を詳しく知りたい方は、この記事も参考にしてみてください。

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所得税の控除額

所得税の控除額を旧契約と新契約で分けて示します。

【旧契約の所得税控除額・合計上限10万円】

年間支払保険料など 控除額
25,000円以下 支払保険料などの全額
25,001円~ 50,000円以下 支払保険料など × 1/2 +12,500円
50,001円~ 100,000円以下 支払保険料など × 1/4 +25,000円
100,000円超 一律50,000円

【新契約の所得税控除額・合計上限12万円】

年間支払保険料など 控除額
20,000円以下 支払保険料などの全額
20,001円~ 40,000円以下 支払保険料など × 1/2 +10,000円
40,001円~ 80,000円以下 支払保険料など × 1/4 +20,000円
80,000円超 一律40,000円

旧契約の生命保険料控除の上限額は、保険の種類別に5万円ずつ、合計10万円までです。新契約の上限額は、保険の種類別に4万円ずつ、合計12万円までです。控除額の計算式も旧契約と新契約は異なるため、間違えないよう注意して計算しましょう。

住民税の控除額

住民税の生命保険料控除額は、旧契約と新契約では、以下のようになっています。

【旧契約の住民税控除額・合計上限7万円】

年間支払保険料など 控除額
15,000円以下 支払保険料などの全額
12,001円~ 40,000円以下 支払保険料など × 1/2 + 7,500円
40,001円~70,000円以下 支払保険料など × 1/4 +17,500円
70,000円超 一律35,000円

【新契約の住民税控除額・合計上限7万円】

年間支払保険料など 控除額
12,000円以下 支払保険料などの全額
12,001円~ 32,000円以下 支払保険料など × 1/2 +6,000円
32,001円~ 56,000円以下 支払保険料など × 1/4 +14,000円
56,000円超 一律28,000円

旧契約・新契約両方とも、住民税の合計控除上限額は7万円です。ただ、保険種類別の控除上限額は、旧契約が3万5,000円、新契約が2万8,000円と違いがあります。計算式も変わってくるため、住民税も旧契約・新契約で間違わないように計算しましょう。

併せてよむ>>
生命保険料控除の上限額は? 新旧どちらがお得? 気になる情報まとめ

新契約と旧契約の双方に加入している場合の扱い

保険種別が生命保険と個人年金保険の場合、新契約と旧契約の双方に加入しているケースがあります。この場合は、旧契約の保険料をいくら支払っているかによって控除額の計算方法が以下のように変わります。

  • 旧契約の保険料が6万円を超える:旧契約の計算式に従う(最高5万円)
  • 旧契約の保険料が6万円以下:新契約の計算式に従う(最高4万円)

この点も間違いやすいので要注意です。

  • 生命保険料控除の控除額の計算方法と早見表

    生命保険料控除の控除額の計算方法をひとつずつ確認して進めよう

生命保険料控除を受けるための手続き

生命保険料控除を受けるための手続きを、確定申告と年末調整の2パターン説明します。

個人事業主の場合は確定申告で申告

個人事業主の場合、毎年2月15日~3月15日(2021年は新型コロナウイルスの影響で4月15日まで)の期間に確定申告で生命保険料控除の手続きを行います。利用する書式は申告書Bの第一表・第二表です。

  • 生命保険料控除を受けるための手続

    個人事業主の場合は確定申告で申告

生命保険料の控除額を計算したら、第一表の(1)に生命保険料控除の合計控除額を記載してください。第二表には、旧契約(生命保険・個人年金保険)と新契約(生命保険・介護医療保険・個人年金保険)別に計算した控除額を(2)に記入します。

給与所得者の場合は年末調整で申告

給与所得者の場合は、勤務先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入して、年末調整で申告します。

  • 生命保険料控除を受けるための手続

    給与所得者の場合は年末調整で申告

保険料控除の左半分が、生命保険料控除の記載部分です。上から順番に、生命保険(1)・介護医療保険(2)・個人年金保険(3)の情報を記載します。計算方法は左下に記載されているので、その内容に従いましょう。最後、下部の合計欄(4)に、最終的な生命保険料の控除額合計(上限12万円)を記載します。

添付する証明書の扱い

生命保険料控除の際に添付する証明書は、申告時に必要となります。ただし、旧契約で年間保険料が9,000円以下のものと、年末調整の際に控除を受けたものは提出不要です。

また、一部の保険会社は生命保険料控除証明書を電子データとして発行できるようになっています。そのまま電子データとして電子申告に使ったり、印刷して添付したりすることも可能です。

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生命保険料控除証明書とは? 見方や添付方法・電子交付などを解説
  • 生命保険料控除を受けるための手続

    複雑に見える生命保険料控除も順番に進めていけば大丈夫

生命保険料控除のよくある質問

生命保険料控除の手続きを進める際のよくある質問をまとめました。どうしたらいいのか迷う場合にご確認ください。

本人名義以外の扶養親族の生命保険料控除証明書で生命保険料控除は可能?

本人名義以外の扶養親族の生命保険料を納税者本人が支払っている場合、保険料を支払った本人の生命保険料控除の対象となります。

本人名義以外の扶養親族が契約者の生命保険料は控除できる?

本人名義以外の扶養親族の生命保険料を納税者本人が支払っている場合、契約者の名前は問われず、保険料を支払った本人の生命保険料控除の対象となります。

年の中途で解約し一時金を受け取った場合はどうなる?

年の中途で解約した場合、それまでに支払った生命保険料分は控除を受けることが可能です。解約一時金は一時所得となるため、支払保険料からの控除は不要です。

通常剰余金の分配や割戻金の割り戻しは支払保険料から控除する必要があります。しかし、解約一時金と合算して支払われた場合、こちらもすべて一時所得として扱うため、支払保険料からの控除は不要です。

離婚後の生命保険金の受取人を元の妻・夫にしている場合は?

生命保険料控除の対象となる生命保険契約等とは、その保険金等の受取人のすべてが、自分または配偶者・その他の親族でなければなりません。離婚した後は配偶者ではなくなるため、生命保険料控除はできなくなります。離婚時に受取人を元妻・夫から子供に変更した場合は、引き続き生命保険料控除を受けることが可能です。

生命保険料控除を正しく理解しスムーズに申告を

生命保険料控除は、契約の新旧や保険の種類別に計算しなければならず、少々面倒かもしれません。しかし、正しく理解して順番に計算していけば、大きな節税効果があります。本記事の内容を確認しながら手続きを進め、スムーズに申告を進めてください。

参照 :
(※1)国税庁No.1140 生命保険料控除
(※2)国税庁No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等
(※3)国税庁申告書B【令和2年分以降用】
(※4)国税庁令和2年分給与所得者の保険料控除申告書