「一生懸命」は、日常生活はもちろん、履歴書の自己PR欄やビジネスシーンにおいてもよく使われます。しかし「一所懸命」とどちらを使えばいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。本稿では、「一生懸命」と「一所懸命」の違いや使い分け方を解説します。また、ビジネスシーンでの「一生懸命」の使い方・例文や類語・言い換え表現も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  • PCを前にタイピングしている男性

    「一生懸命」の意味を理解しましょう

「一生懸命」と「一所懸命」の違いは?

「一生懸命」と「一所懸命」にはどんな違いがあるのでしょうか。意味や由来を見ていきましょう。

「一生懸命」と「一所懸命」の意味は?

「一生懸命」とは、命をかけて物事に取り組むさまを意味する四字熟語です。本気で何かに打ち込んでいるときや、これから頑張ろうというときに用いられます。

実は、「一生懸命」は「一所懸命」が元となってできた言葉。「一所」は、中世の武士が賜った「一カ所」の領地、つまり土地を意味します。その先祖代々の土地を武士が命がけで守ったことから生まれた言葉が「一所懸命」で、それが近世になると「物事を命がけでやる」という意味に変わり、「一所」が「一生」と間違われたことから読み方も「いっしょう」となって広まりました。

すなわち、「一生懸命」と「一所懸命」はどちらも同じ意味合いです。ただし、「一所懸命」の「一所」は「一カ所」を表すため、ひとつのことに力を尽くすというようなニュアンスにも取れるという違いがあります。

なお、読み方は「一生懸命」は「いっしょうけんめい」と読み、「一所懸命」は「いっしょけんめい」と読みます。

  • ウォールボードに貼った紙を眺める男性の後ろ姿

    語源を知り、理解を深めましょう

「一生懸命」と「一所懸命」の使い分け方

「一生懸命」と「一所懸命」は同じ「物事に全力を尽くす」という意味合いのため、どちらを使っても問題ありません。しかし、一般的には「一生懸命」が使われることの方が多いので 、基本的にはこちらを使った方がいいでしょう。

歌舞伎では一所懸命が使われる

前述したように現在では「一生懸命」の方が一般的ですが、歌舞伎においては、一所懸命が使われることがあります。歌舞伎では基本的に古語を使用することや、代々伝わる屋号(一所)を命がけで守るという意味を持つことから、一所懸命を使うようです。

  • 2枚の紙を並べて何かを書き記しているところ

    「一生懸命」と「一所懸命」の違いを理解しましょう

ビジネスシーンでの「一生懸命」の使い方

「一生懸命」はビジネスシーンにおいて、新しいプロジェクトが始まるときや大きな役割を任されたときなど、意気込みを伝えたい場面で使うのにふさわしい言葉です。全力で取り組もうとする姿勢をアピールできるので、相手に自分の熱意を伝えられるでしょう。

【例文】

  • 社運をかけたこのプロジェクトを、一生懸命に取り組む
  • 御社のご期待に添えるよう、一生懸命に力を尽くす所存です
  • お客様の期待を裏切らないよう、一生懸命頑張ります
  • 一生懸命努力して、営業成績を上げてみせます
  • 会議中に書類を広げて話し合っている

    「一生懸命」をビジネスシーンで使いましょう

「一生懸命」の類語・言い換え表現

「一生懸命」にはいくつかの類語があり、言い換えが可能です。シーンによって適切に使い分けられれば、文章に起こす際や相手との会話において、自分の思いをより明確に表現でき、伝わり方も変わってくるため覚えておきましょう。

真面目

真面目とは、「嘘やいい加減ではなく、真剣な様子」を表す言葉で、「真心や誠意がある」という意味もあります。「一生懸命」のように「命がけ」というニュアンスが込められていないため、言い換えには注意しましょう。

【例文】

  • 真面目に仕事に取り組んだ結果、高評価を得られた
  • 大事なことは、お客様の話に真面目に耳を傾けることだ

熱心

熱心は、「物事に心を打ちこんでいる様子」を表します。「一生懸命」は「行動」を表す言葉であり、熱心は「心がけ」に対して使う言葉です。

【例文】

  • 先方は、当社の話を熱心に聞いて下さった
  • 自分のスキルアップのためにも、様々なセミナーに熱心に参加している

一途

一途(いちず)は、「他のことを考えず、ひとつのことに打ち込む様子」を表します。他のことは目に入らないほど集中している際に使う言葉です。一途は行動だけでなく、心に対しても使える言葉でもあるため多様な場面で使えます。

【例文】

  • こちらのお客様は、数ある中から当社を一途にご利用いただいている
  • 原因を一途に追及した結果、解決できた

一心不乱

一心不乱は、「ひとつのことに心を集中して打ち込む様子」を表します。意味合いは一途と似ていますが、一心不乱には「必死に物事に取り組んでいる」というニュアンスが込められています。

【例文】

  • 顧客数を獲得するため、一心不乱に営業に打ち込む
  • 一心不乱に努力した結果、苦手を克服できた

一所懸命

上述したとおり、「一生懸命」と一所懸命は同じ意味を持つ言葉ですが、言葉の由来をたどれば、一所懸命はビジネスの場で避けた方が無難でしょう。

仮に、代々続く店や会社の跡取りとなる人が使うのであれば、ひとつのものを守り抜くという意気込みを感じられるので最適です。

【例文】

  • 200年続いたこの店を一所懸命守っていく所存です
  • 父から受け継いだこの会社をますます発展させるべく、一所懸命がんばります
  • 薄明かりの中でスケジュール帳にペンがのっている

    シーンによって正しい言葉を使い分けましょう

「一生懸命」を正しく活用しよう

「一生懸命」は、「一所懸命」が由来であり、時代とともに意味や使い方が変化して成り立った言葉であると説明しました。

この言葉は、他にも「誠心誠意」「精一杯」などに言い換えができます。言葉が持つ本来の意味や由来を知り、シーンに合わせて使い分けて、ビジネスで活用しましょう。