キリンビールでは3月16日より、レモン果汁を酵母発酵させた「麒麟 発酵レモンサワー」を全国発売する。同社によれば、発酵レモン果汁・香料無添加の缶入りサワーとして世界初の試みだという。オンラインで25日に開催した事業方針説明会にて、担当者は「既存市場の概念を一新する、まったく新しい美味しさ。100年愛され続けるブランドにするという思いで、キリンが総力を結集した」と言葉に力を込めた。

  • キリンビールがRTD(※)市場の概念を一新する「麒麟 発酵レモンサワー」を発売する(※Ready to Drink、栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料のこと)

まったく新しい発酵レモンサワー登場

「麒麟 発酵レモンサワー」は、濃厚なレモン味が特徴の、爽やかな美味しさを追求したレモンサワー。キリン114年の発酵技術により濃厚さ、まろやかさ、華やかさ、香りなどの新たな香気成分を55種類も増加させた。一方で、従来の”レモン味”をつくっていた香料・酸味料・甘味料は一切不使用。人工感のない自然な美味しさの追求にこだわった。ターゲット層は、お酒好きの40~50代男女を想定。オープン価格で、市場想定価格は350ml缶が174円(以下すべて税込)、500ml缶が240円となっている。

  • 「麒麟 発酵レモンサワー」。アルコール分は7%、販売予定数は300万ケース(18,000KL、250ml×24本換算)とした

この新しいチューハイをつくるため、キリンの3つの研究所(ビール商品開発研究所、飲料未来研究所、RTD商品開発研究所)が初めて共同開発に踏み切った。まず、ビール商品開発研究所がプロトタイプを作成。次に発酵させる技術を保有する飲料未来研究所が、レモンを発酵させる技術、アイデア、ノウハウを練った。最後に、様々な原料を厳選してブレンドする技術を持つRTD商品開発研究所が発酵の最終調整をしている。

  • キリンの3つの研究所が共同開発した

本格的な開発がスタートしてから商品になるまで1年半くらいかかったという。しかし発酵によりレモンサワーのような新しいRTD商品を開発する、という考えは20年くらい前からあったようで、担当者は「これまでずっと試行錯誤を繰り返してきた」と明かす。なおイスラエル産のレモンを採用した理由については「世界中のレモンを調べた結果、イスラエル産のものはレモンの香りと味わいが強く、発酵レモンサワーに最適だったため」と説明している。

消費者のモニター調査では、キリンRTD史上歴代No.1の味覚好意度を獲得した。具体的には「レモンが濃いのに爽やかで、毎日でも飲みたい」「自然な味わいで人工感がない。発酵が身体にも良さそう」といった声が聞かれたという。

2021年の事業戦略を説明

キリンビールは昨年(2020年)のRTD市場において、販売実績は前年比+12.3%、販売数量は約7,152万ケースと順調に成長を続けることができた。特に「氷結」「麒麟特製サワー」「本搾り」「麹レモンサワー」が事業を牽引している。マーケティング部長の山形光晴氏は「市場の成長を超える進捗。ブランドを育成してきた結果が出た」と評価した。

  • 事業方針説明会に登壇した常務執行役員 マーケティング部長の山形光晴氏。「10年後も愛され続けるブランドを創る、との思いで活動しています」と話す

  • 厳しい環境の中で、各ブランドが前年超えを果たした

13年連続で伸長しているRTD市場は、今後も順調に拡大を続けると見ている。昨年の酒税法改正後も成長が止まるどころか、むしろ勢いが増している状況だ。山形氏は「(RTD市場が)様々なアルコール飲料カテゴリの受け皿になっている」と分析する。

  • RTD市場の動向。ほかのアルコール飲料カテゴリからの流入も続いており、今後も成長が続くと期待される

また、レモン系飲料の需要が拡大傾向にある。「食事中に、さっぱりした柑橘系のRTDを好んで飲む方が増えた。それまで飲食店で1杯目にビール、2杯目にサワーやチューハイを飲んでいた方が、コロナ禍となり家においてRTDを飲むようになった」と山形氏。同じくコロナ禍に特有の傾向として、健康志向の高まりも影響したようだ。つまり身体への負担を気にする消費者が増えたため、なるべく身体に負担がかからないアルコールを、という観点でRTDのニーズが増したとしている。

こうした動きを踏まえ、キリンビールでは「定番ブランドの育成」と「高付加価値ブランドの創造と育成」に注力していく。山形氏は、まずは「定番ブランドの育成」について説明した。2021年度の販売目標は、約7,500万ケース(前年比+4.9%)に設定している。

  • キリンビールの2021年度の販売目標

「氷結」「氷結ストロング」では、一貫したブランドイメージを継続して強化し、飲みやすさ、ゼロ系・オフ系のニーズにも応えていく。累積出荷本数が3億本に到達した「麒麟特製レモンサワー」は、うまさにこだわったリニューアルによりさらなる販売増を見込む。9年連続で2ケタの成長をする「本搾り」は、自然な果汁感が味わえる美味しさを引き続き消費者に伝えていくという。

  • 「氷結」「氷結ストロング」

続いて「高付加価値ブランドの創造と育成」について。40~50代の4割以上は健康に不安があるという市場の健康志向トレンドを捉え、身体に取り入れやすい素材を使った「おいしさ」×「健康感」のある新商品を打ち出していく。そのひとつ、「麹レモンサワー」は昨年、目標値の3倍となる112万ケースを出荷した。山形氏は「健康に配慮できそう、といったイメージから付加価値を感じていただけている」と評価する。

  • 高付加価値ブランドの一翼を担う「麹レモンサワー」

キリンビールでは、(冒頭に紹介した)3月16日に発売する「麒麟 発酵レモンサワー」とともに、高付加価値ブランドを育成することで市場全体の活性化も図っていきたい考えだ。

  • 高付加価値ブランドのコンセプトは「自然とつくる、人に心地いいお酒」。消費者に、美味しさと健康感を届けていくとしている