働き方改革により「副業」を解禁する、あるいは推奨する企業が増えてきました。そして、このコロナ禍において、給料カットやボーナスカットのあおりを受け、副業をすることを考えている、あるいはすでにはじめている人もいるでしょう。そこで重要なのは、どうすれば副業で「より多く稼ぐ」ことができるのかということ——。

お話を聞いたのは、戦略的PRコンサルタントとして一流企業のコンサルティングやPR活動を行う野呂エイシロウさん。野呂さんは、大学在学中から起業家として注目され、その後は雑誌編集者、放送作家、そして戦略的PRコンサルタントと、さまざまな職種の一線で活躍してきました。野呂エイシロウ流「副業で稼ぐ方法」を教えてもらいます。

■副業がもたらしてくれる多くのメリット

——まずは、副業のメリットとデメリットについて、お考えを教えてください。
野呂 デメリットはまったくなく、メリットしかありません。いまはもう、ひとつの会社に勤め続けることが評価されるような時代ではありませんし「勤続何十年」「生涯一筋」という人よりも、転職を何回もしたとかいろいろな副業をしてきたという人のほうがタフだし魅力的に感じるものです。

——これはもう、野呂さんの実体験もそうですし、そういった人にたくさんお会いしてきた実感として思われるのですね。
野呂 そうです。わたしの場合、仕事柄、たくさんの会社やビジネスパーソンと仕事をしてきましたらからね。副業をすることによって、ひとつの会社に勤めること、ひとつの仕事を続けることでは得られないスキルを身につけることができます。

それは、ただ収入が増えることとはまたちがった部分における副業の大きなメリットでしょう。

古くは、江戸時代の武士だって傘を直したり寺子屋で勉強を教えたり庶民から灰をもらって農家に売ったりと、さまざまな仕事をして多くのスキルを身につけていました。転職や副業をよしとする考え方は、その時代からあったのです。

それを思えば、ひとむかし前まであった、ひとつの企業に勤め上げることを美徳としたり副業を禁止したりする考え方がちょっとずれていたといえるのではないでしょうか。

——なるほど。副業することで得られる他のメリットは?
野呂 これは「時間」と大きく関係しますが、仕事の効率は間違いなくアップしますよね。誰にとっても時間は有限なものですが、限られた時間のなかで本業も副業もこなすのですから、仕事を進める要領がよくなるのは当然です。ひいては、日本のビジネスパーソンにとって大きな課題である生産性向上を果たせるようにもなるはずです。

もちろんこれは、両方をしっかりこなすことが前提です。片方をおろそかにしてしまうような取り組みでは、副業をやる資格はないと思いますし、そのような副業は単なるアルバイトですよね。

■副業で「時給商売」を選ぶのは絶対にNG

——あらためていうまでもなく「収入を増やせること」も副業のメリットです。
野呂 収入について考えてみると、日本の企業における給料に対する疑問が湧いてきます。日本の企業の給料は、その多くが能力給ではないのです。「新入社員の給料は○万円」というように、年齢によって決められている企業もいまだに多いでしょう。

——少しは変わってきているのでしょうけれど、たしかにそういうスタイルが一般的ですよね。
野呂 そういうおかしな決まり事での金額ですから、自分の給料に不満を持っている人もたくさんいるはずです。だとしたら、「会社の給料はあてにできない」ということを前提にして、自分の能力を生かした副業をはじめてみましょう。そうすれば、自分の実力や価値がはっきりわかります。

——ひとつの企業のものさしだけでなく、他のものさしではかられてみるということですね。ある意味それは、自分の実力を試してみるということ。
野呂 そういうことです。わたしの友人のひとりに、副業で月に200万円ほど稼いでいる人がいます。彼はとある企業に勤めていて、本業での年収はおそらく700~800万円ほどでしょう。でも副業では、それをはるかにしのぐ収入を得ています。

ただ、彼が副業をはじめたのは30代半ばくらいからでした。いま彼は30代後半ですから、もし30歳からはじめていたらもっともっと稼ぐことができていたはずです。それだけ長いあいだ、自分の実力と価値に気づいていなかったということです。

——副業でより多く稼ごうと思ったら、どうすべきでしょう?
野呂 まず重要なのは「時給商売」という考え方をやめることです。たとえば、はやりのフードデリバリーの配達員としていくら頑張ったとしても、移動手段や効率化で稼げる金額は変わってくるにせよ、1時間で稼げる金額に限界はありますよね。

そうではなく、時給などには換算できない、自分だけのスキルを生かした「能力給」を得られるような仕事をすべきだと思うのです。これまでの経験を通じてどんなスキルを持っているのか、それを生かしてどんな仕事ができるのか——。そこを突き詰めて考え、実際の副業にすることを考えてみましょう。

■ネット上で多くの人に向けて経歴とスキルをPRする

——ただ、まだ経験の浅い若いビジネスパーソンにとっては、なかなか難しいことのようにも思います。
野呂 それなら、それこそ副業でスキルを身につけることであったり、スキルを磨くことを考えてみたりするのはどうでしょうか? そこでまず、「いまの会社に就職していなかったら、なにをしていたか」と考えてみてください。

それがまったく別の業種や職種だったとしたら、それこそいまの会社では身につけることができないスキルを得ることができます。

でも、いますぐには仕事にできないことだというなら、副業をする感覚で学校に通ってもいいじゃないですか。多少遠まわりになるかもしれませんが、そうして身につけたスキルは将来的に大きな武器になってくれるし、「より多く稼ぐ」道へと導いてくれるはずです。

——副業をはじめるには、自分を売り込むことも重要なポイントですよね。
野呂 はい。それは、わたし自身がもっとも重要視していることです。わたしはフリーという立場で企業のコンサルやPRの仕事をしていますが、わたし自身の「自己PR」なしには仕事を得ることはできません。少しの実績だけで仕事がどんどん舞い込んでくるほど生易しい世界ではないし、そもそも自己PRが下手な人に、自分の会社のPRを委ねることはできませんよね。

——野呂さんご自身が意識していることは?
野呂 まずは、「雇ってもらおう」という考えを捨てることです。履歴書なんて書かなくても仕事が舞い込んでくるような人間になることを考えましょう。それが、自分のスキルを生かして稼ぐ最高の生き方です。

ここではみなさんが実践できることとして例を挙げますが、いまは、インターネットという大きな武器がある時代です。それを生かさない手はありません。「雇ってもらおう」と考えて作成するリアルの履歴書は、提出した企業の採用担当者の目にしかとまりません。

でも、インターネット上に自分の経歴やスキルを公開していたらどうですか? 比較にならないほど多くのの人の目にとまり、仕事を得る可能性は格段に高まるでしょう。多くの人に見てもらうための努力は必要ですが、やっていくうちにコツは摑めてきます。

――具体的には、どのようにインターネット上で自己PRをすればいいでしょうか。
野呂 わたしがおすすめするのは、ビジネス特化型SNSです。それらに自分の経歴を書いておけば、それこそ世界中の人が見てくれる。いずれにせよ、自分のスキルを明確にし、そのスキルをより多くの人に向けてPRすることがなにより大切です。その努力はやったぶんだけ、還元されるものだと思います。

■自己PRスキルがあれば、理想の自分に近づいていける

——自己PR自体は、副業するうえでかなり大切なスキルといえそうです。自己PRのスキルはどんな有用性を発揮してくれるでしょうか。
野呂 これはもう副業云々という話ではなく、「理想の自分に近づける」ことですね。そのためにも、インターネット上に公開する自分は、「理想の自分」にすることをおすすめします。もちろん、嘘はよくありませんよ。仮にわたしが、「東大卒です。東大を首席で出ました!」と書いたら、経歴詐称になりますから大問題です(笑)。

——あくまで、いまの自分の延長線上にある理想の自分ということですね。
野呂 感覚的な話になりますが「2割増し」といったところでしょうか。5割増しでは「盛っている」と思われるかもしれませんが、2割増しならそうでもないでしょう。そして、その2割増しの理想は、なるべく細かい部分まで設定しておくことが大切です。

——その理由を教えてください。
野呂 それだけ、理想の自分に近づける可能性が高まるからです。あいまいな目標を実現するのは難しいので、目標は具体的であれば具体的であるほうがいい。理想の自分を具体的に描けていれば、あとはその実現に向かって全力疾走するだけ。ぜひ、理想の自分になれるように頑張ってください。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/塚原孝顕