確定申告や年末調整の際に必要となる「社会保険料控除証明書」。

毎年目にするものとは言え、頻繁に使用するものではないため、「どのように見ればよいのか」「確定申告・年末調整時に提出が必要か否か」など、記憶が曖昧になっている方も多いことかと思います。

そこで、本記事では社会保険料控除証明書にはどのような種類があるか、および証明書の見方や確定申告・年末調整時の提出要否、送付時期はいつ頃か……など、基本的な情報について紹介します。

  • 社会保険料控除証明書とは

    社会保険料控除証明書とは? 見方・提出の要否・確定申告方法を紹介

社会保険料控除証明書とは

社会保険料控除証明書とは、確定申告や年末調整の際に申告できる「社会保険料控除」の金額を証明するための書類です。基本的には、国民年金・国民年金基金保険料に関する控除証明書が発行されます。

社会保険の1つに国民健康保険料も含まれますが、国民健康保険は社会保険料控除証明書が発行されず、申告時に添付する必要もありません。

社会保険料控除証明書の見方

社会保険料控除証明書の見方を、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書を例に解説します。社会保険料(国民年金保険料)控除証明書のフォーマットは以下の通りです

  • 社会保険料控除証明書の見方

    確定申告には社会保険料控除証明書が必要【画像クリックで拡大】

上図のうち、①は、すでに支払った国民年金保険料の金額です。この金額は、その年の1月1日から9月30日までに支払った金額となります。

②には、「見込額」と「合計額」が記載されています。見込み額とは、その年の10月1日から12月31日までに支払う予定の金額です。合計額には、実際に支払った金額と見込額の合計が記載されます(※)。

(※)次年分の国民年金保険料を前納している場合や、保険料に未払い分がある場合などに、「見込額」と「合計額」が空欄になっている場合もあるため、注意が必要です

③は、国民年金保険料の納付状況一覧です。「済」の字がある場合は支払い済み、「見」の場合は支払い見込みという意味です。②の部分で「見込額」や「合計額」が空欄になっている場合は、③の一覧を見て、実際に支払った金額を利用します。

社会保険料控除証明書はいつ届く?

社会保険料控除証明書は、基本的に年末調整や確定申告に間に合うよう、毎年11月ごろに届きます。社会保険料控除証明書は申告時に提出する必要があるため、届いたら紛失しないよう大切に保管してなくさないようにしましょう。

  • 社会保険料控除証明書の見方

    社会保険料控除証明書は国民年金と国民年金基金の年間支払証明書

社会保険料控除の対象と社会保険料控除証明書の関係

社会保険料控除証明書は、国民年金と国民年金基金の保険料を支払った場合に発行されます。では、その他の社会保険料控除の対象となっている社会保険料はどのような扱いになるのでしょうか。

以下では、社会保険料の種別と、申告時の社会保険料控除証明書提出の要否について解説します。

社会保険料の種別と社会保険料控除証明書提出の要否

社会保険料の種別と社会保険料控除証明書提出の要否は以下の通りです。

社会保険の種別 社会保険料控除証明書の提出要否 申告時の扱い
国民年金 提出必須 金額記載+証明書提出
国民年金基金 提出必須 金額記載+証明書提出
厚生年金保険 会社がすべて処理するため、提出不要 何もしない
国民健康保険 提出不要
(控除証明書は発行されない)
・確定申告では金額記載のみ
・年末調整では何もしない
国民健康保険以外の健康保険
例 : 会社を退職した後に任意で継続する健康保険など
提出不要
(控除証明書は発行されない)
・確定申告では金額記載のみ
・年末調整では何もしない

会社の年末調整では、会社から天引きされている厚生年金保険や健康保険組合の保険料は会社側が手続きをするため、記載の必要はありません。

一方、確定申告の場合には、国民年金保険料や国民健康保険料、会社を退職した後の任意継続保険料などを自分で支払うため申告の必要があります。

なお、証明書の添付が必要な社会保険は、国民年金と国民年金基金のみです。

支払い遅れなどで別途支払った社会保険料は領収書が必要?

支払い遅れなどで社会保険料控除証明書と実際の支払総額が異なる場合に、別途領収書の添付が必要な社会保険は国民年金保険料と国民年金基金保険料のみです。

国民健康保険料の場合は、その年に支払った総額のみ記載しておけばよく、領収書は添付しなくても問題ありません。

  • 社会保険料控除対象と社会保険料控除証明書

    国民健康保険や厚生年金保険はそもそも社会保険料控除証明書が発行されない

社会保険料控除の手続き

社会保険料控除の手続きについて、確定申告の場合と年末調整の場合の2パターンを簡単に説明します。

まずは、社会保険料控除証明書を手元に出しましょう。国民年金と国民年金基金の両方に加入している場合は2枚必要です。また、自分以外の親族の国民年金保険料と国民年金基金保険料を支払っている場合は、親族分の社会保険料控除証明書も用意します。

1. 個人事業主(確定申告)の手続き

国民年金と国民年金基金の社会保険料控除証明書に記載されている合計額が、実際に支払った金額と一致している場合は、そのまま社会保険料控除対象の金額として算出します。

証明書に記載されている合計額が実際に支払った金額と不一致の場合は、必要に応じて払い込んだ国民年金保険料や国民年金基金保険料の領収書を添付します。

健康保険料に関しては、1年間で支払った金額を確認して合算するだけで、証明書や領収書の添付は不要です。国民健康保険料や健康保険組合の保険料は、その年の途中で見直しが入って金額が変わるため、正確な金額を算出するようにしてください。

  • 社会保険料控除の手続き

    個人事業主(確定申告書)の手続き【画像クリックで拡大】

金額を合算した後は、確定申告書第二表の右上にある「保険料控除等に関する事項」の「社会保険料控除」の欄に、社会保険の種類別の年間支払金額を記載します。「国民健康保険」「国民年金保険」「国民年金基金」の単位で合算しましょう。

記載が終わったら、第一表左側の13番「社会保険料控除」にすべての社会保険支払額を合算し、合計額を記載します。最後に、社会保険料控除証明書を添付書類の第四に貼り付けて税務署に提出すれば、申告完了です。

ただし、e-Taxを利用して確定申告をする場合は、社会保険料控除証明書の添付は必要ありません。手元に5年間保存する必要がありますので、大切に保管してください。

2. 会社員(年末調整)の手続き

会社員が年末調整の手続きを行う場合も、基本的には確定申告と同じ手順で計算を進めます。自身の厚生年金保険や健康保険料は会社の方で計算済みです。その他子供など親族の国民年金保険料を支払っていれば、社会保険料控除証明書や領収書を添付して、自身の社会保険料に合算します。

年末調整では、以下の「給与所得者の保険料控除申告書」のフォーマットに社会保険料に関する事項を記載して提出します。

  • 社会保険料控除の手続き

    給与所得者の保険料控除申告書【画像クリックで拡大】

以下が社会保険料控除の欄です。「国民年金保険」「国民年金基金」など、支払った社会保険種類と、支払先の名称、誰の保険料を負担しているのか、氏名と自分との続柄、支払った保険料の年額を記載しましょう。

  • 社会保険料控除の手続き

    社会保険料控除欄

最後に、右下に社会保険料控除の全合計額を記載してください。この書類とともに、国民年金などの社会保険料控除証明書を提出して申告終了です。

  • 社会保険料控除の手続き

    健康保険料は支払総額を書くだけでいいが国民年金は証明書も提出する

社会保険料控除証明書・社会保険料控除の注意点

社会保険料控除証明書・社会保険料控除について、ここまで説明した以外で注意したい点をいくつか解説します。

証明書を紛失した場合の再発行の手続きは?

社会保険料控除証明書を紛失した場合は、以下の3パターンで再発行の手続きができます。

ねんきんネットの利用には、ユーザIDの発行が必要です。ユーザIDがない場合は、ねんきん加入者ダイヤルや年金事務所にて再発行を申請しましょう。なお、再発行申請にはマイナンバーまたは基礎年金番号が必要となります。

2年分の国民年金保険料を前払い(前納)している場合は?

2年分の国民年金保険料を前納した場合は、支払った年にすべての金額を社会保険料控除するか、各年分の保険料を各年に控除するかを選択できます。平均的に所得控除をしたい場合は各年分を控除する方を選びましょう。

社会保険料控除証明書の見方と手続き方法を確認しよう

社会保険料控除証明書の記載内容はシンプルなので、言葉の意味さえ分かれば年末調整や確定申告ですぐに利用できます。また、健康保険に対する社会保険料控除証明書はありませんので、銀行口座の引き落とし記録や支払時の領収書を確認だけして、金額を合計してください。

会社員の場合は、自分の社会保険料控除は会社側で処理されるので何もしなくて大丈夫です。ただし、自分以外の親族の社会保険料を払っている場合は、年末調整時に社会保険料控除証明書を添えて社会保険料控除を申告してください。