ニーズの多様化する社会において、企業の価値提供のハードルは高まり、サービス・プロダクトの改善に求められるスピードは日に日に速まっています。
本記事では、昨今の状況も影響してますます重要視されている「シナジー効果(あるいは相乗効果)」について紹介します。
シナジー効果(相乗効果)の意味
ビジネスシーンにおける「シナジー効果」とは、複数の企業あるいは部署が提携・協力することで、個別に活動した時よりもいい結果が得られる――という状況を指す言葉です。「相乗効果」とも言い換えられます。
<例文>
- 企業のM&Aによってシナジー効果が生まれる
元来、「シナジー」とは生物学の専門用語として使われていた言葉であり、これはモノや事柄などが複数存在することで、お互いに作用しあい効果や機能を高めることを意味しています。
その後、「戦略的経営の父」と呼ばれる経営学者のイゴール・アンゴフ氏によって使われたことも影響し、経営戦略上の言葉として「シナジー」に「効果」を付けた「シナジー効果」という言葉が用いられるようになりました。
ビジネスにシナジー効果をもたらす方法
ビジネスでシナジー効果を狙う場合にはいろんな方法があるので、発想や組み合わせ次第で期待以上の効果を得られる可能性があります。
どういった狙いでどんな企業と組むかによって方法も変わってくるので、目指す地点については具体的に決定しておく必要があるでしょう。
事業提携
異なる商品やサービス、技術や顧客を持つ企業が事業提携をすることによって、ノウハウを共有したり企業価値を高めたりすることが期待できます。M&Aのような強い結びつきでありませんが、互いの強みや弱みを活かすことで結果を求めることが可能になります。
M&A
M&Aというのは、買収や合併などによる企業の再編の総称で、シナジー効果を得られやすい手法であるといわれています。市場における知名度、支配力や効率性の向上がメリットとして挙げられ、コストの削減も期待できます。
経営多角化戦略
企業の総合的な売り上げや利益を向上させるために、主力事業と別事業に進出し事業拡大を目指す戦略です。別事業といっても共通点が多いところに進出することで、シナジー効果が期待できます。新事業や新市場への進出をゼロスタートで行うよりも、スムーズでコストもかからないので軌道に乗せやすいという特徴があります。
グループ一体経営
顧客を共有しているグループ会社が一体となって事業を行うことでシナジー効果を狙う方法です。巨大グループでは事業が分割されているため、非効率的だと考えられたことからこの方法が浸透してきました。
共有している顧客へのアプローチを強化したり、業務を統一化したりすることによってコストの削減も期待できるのがメリットです。また、ノウハウを共有しやすいこともプラスの影響を与えるポイントです。
シナジー効果が生み出す事業へのメリットとは
シナジー効果によって企業価値の向上が期待できるため、競争力が高まります。ほかにも、事業部門の見直しができるので人員カットやコストを削減できるといった効果も期待できます。
ここからはシナジー効果によって生まれるメリットを解説していきますので、これらを参考にしてシナジー効果で狙うものを明確にしていきましょう。
1. 競争力の強化
市場原理で成り立っているビジネスの世界では、他社に対しての競争力が必要になってきます。他社との提携によって自社の競争力を強化し、競合他社との競争にも優位に立つことが期待できます。
2. 取引先の拡大
取引先の拡大・開拓にも期待できます。例えば、中小企業が大企業に買収された場合には、資本力が高まり、今までは取り引きできなかった企業とも取り引きが可能になる可能性もあるでしょう。
3. コスト削減
仕入れや販売、製造にかかる生産コストの削減や、人事や法務などの機能の一体化もできればさらにコストを削減することも可能です。ほかにも、システムの共有や人員削減などにもつなげられることがポイントです。
4. スケールメリット
スケールメリットとは、生産規模を拡大すればするほど生産性や効率化が期待でき、利益率が高くなることを指しています。会社規模が大きくなれば物流を統一し、大量かつ一括で仕入れることでコストの大幅な削減が可能になります。
シナジー効果が生み出す組織へのメリット
シナジー効果は事業のみならず組織全体にもメリットを及ぼします。以下、メリットの詳細を紹介します。
1. 余剰資金の有効活用
大企業であれば、使い道が決まっていない余剰資金を持っていることは多いです。そのため、合併や買収によって余剰資金の有効活用が可能になります。将来有望な企業に投資したり、優秀な人材を確保するために資金を使ったりすることで、将来的な利益につながることが期待できます。
2. 人材獲得
会社の規模が大きくなることによって人材の分母が増えるので、優秀な人材を確保しやすくなります。人事面での活性化を図れるので、業績アップや競争力の向上が期待できます。
3. ノウハウの共有
独自のノウハウを持っている企業同士が集まることで、互いのノウハウを共有することができます。
シナジー効果の英語表現
シナジー効果を英語で表現するにあたっては、そのまま「synergistic effects」を用いましょう。
<例文>
- expect synergistic effects of~
~の相乗効果を期待する
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ビジネスシーンにおけるシナジー効果の活用は、売り上げの向上、コストカット、企業価値の向上などに寄与する可能性がある一方、時には協力者同士の意見の食い違いや考え方の違いなどが影響し、マイナスに働いてしまうこともあります。
シナジー効果、相乗効果といった言葉はビジネスシーンで頻繁に使用されます。言葉の意味を理解し、正しく使えるようにしましょう。