『つぐもも』や『アイドルマスター シャイニーカラーズ』など、さまざまな作品に出演する声優・芝崎典子が、2021年1月20日にメジャーデビュー。今回、インタビューが到着した。
●その喜びがきっと私の幸せにもなる
――アーティストデビューおめでとうございます。デビューの話をもらったときはどのようなお気持ちでしたか?
実はアーティストデビューの話をいただいてすぐに、マネージャーさんから「これから打ち合わせに行くけど、大丈夫だよね?」と言われまして。いきなり過ぎてビックリしちゃいました(笑)。このお話を受けるかどうか、悩む時間もそんなになかったんです。だから、「よし、やるか」と腹をくくりました。
――そんなにすぐ腹をくくれたんですね……!
話を聞いたとき、役者としても人間としてもまだまだ未熟なので、こんなに大きなことを私がやっていいのだろか、という葛藤はありました。ただ、応援してくださっている方々に何かお返ししたいという気持ちは常に持っていて、アーティスト活動をすることで誰かが喜んでくださるなら、断る理由はないんじゃないかと思って。その喜びがきっと私の幸せにもなる、応援してくださっている方々との新たなつながりにもなると思ったので、腹をくくることができました。
――元々アーティスト活動をしたいという気持ちはあった?
アーティスト活動をしたいと表明をしたことは特別ありませんでした。歌うことは好きでしたし、キャラクターソングなどをはじめ、これからも歌っていきたいという気持ちはあったので、それをくみ取ってくださったのかなと思います。
――歌うことが好きということですが、これまで音楽に関する習い事などはされてきましたか?
子供の頃にピアノを習っていたのですが、早々に嫌になってしまい続きませんでした。それ以降、特に音楽関係の習い事はしていません。だから、デビューを控えているのにこんなこと言っていいのかは分かりませんが、特別歌が上手ということはないんです。そもそも、昔は人前に立つのが嫌だったので、音楽のテストなどで歌うのも地獄でした。
――歌うことは好きだけども、苦手意識があった。
そうですね。そんな私ですが、大学生の頃にミュージシャンを目指していた友達から路上ライブを一緒にして欲しいとお願いされたことがあって。相変わらず人前に立つのは得意ではありませんでしたが、何とか友達の力になりたかったんですよね。それに、その時にはもう声優になりたいと思っていたので、その子の手伝いをすることが私の経験にもなるだろうとも思い、ふたりで路上ライブをやったり、学園祭でパフォーマンスしたりしました。
――そんな経験もされていたとは! ちなみに担当は?
声をかけてくれた友達がメインボーカル、私はコーラスとお鍋を叩くパーカッションを担当していました。
――お鍋を叩く(笑)。その経験によって、人前へ立つことや音楽への苦手意識が少しは改善されましたか?
そうですね。とはいえ、この活動も友達に誘われたから「やってみるか」と思えたことだったので、まだまだ苦手意識が完全には拭い切れませんでした。
――声優として活動していくなかで、キャラクターソングなどを歌う機会もあったかと思います。
初めてキャラクターソングを歌ったのが『アイドルコネクト -AsteriskLive-』という作品で、高花ひかりちゃんを演じたとき。その子は元気いっぱいで天真爛漫な子で、普段の私とはアウトプットの方法が全然違うタイプの子でした。それに加えて、私自身が歌に対しての苦手意識を持っていたので、「うわーどうしよう」とテンパってしまって。私、特にリズム感に自信がないんです。だから、レコーディングの時には、クリック音に併せて自分の太ももをガンガン叩いてリズムを取ってみたんですよ。帰るころには、叩いていた箇所がヒリヒリしました(笑)。今でも難しいリズムの時は、この時のことを思い出して叩くことがあります。
――私は、「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 1stLIVE FLY TO THE SHINY SKY」で披露された「アルストロメリア」で、桑山千雪として歌っている芝崎さんのパフォーマンスに、心を奪われました。まさか、先ほどお話されたような経験をされていたくらい、歌への苦手意識があったとは……。
あのステージ、見てくださったんですね! 嬉しいです! 作品のなかでも歌うような子(キャラクター)って、基本的にはみんな歌が上手なんですよ。ということは、演じる私の技術のせいでその子が下手と思われるわけにはいきませんし、単純に嫌だったんです。だから……少し語弊があるかもしれませんが、歌が上手いように振舞ってきたんです。それが自分の中に染み込んできたことで、少しだけ進歩することができました。
――キャラクターを演じる責任感や愛情が、歌へも影響した。
そうですね。自信がついた、とまでは言いませんが、歌への意識は変わりました。……アーティストデビューするからには、「自信あります」って言ったほうがいいんですかね?
――いえ、多くの人がそのままの芝崎さんを受け入れてくれると思います。
それならよかったです!
●踏み出した先を全部肯定するような曲にしたかった
――歌への意識が変わり、応援してくださる方との新たなつながりを持つために決意したメジャーデビュー。まずは、1月20日にミニアルバム『Follow my heart』がリリースされます。
本アルバムのタイトルは、2020年に行った私のバースデーイベント「Noriko Shibasaki BirthdayEvent 2020 ~Follow my heart~」のサブタイトルでもありました。あのイベントでアーティストデビューを発表したのですが、スタッフの方から「デビューするにあたっての心構えをサブタイトルにつけてほしい」と言われていたんです。色々と悩んだ結果、「自分を信じて」「自分の心を追っかけて」という意味のこの言葉が一番しっくりきたんですよね。それが、そのままミニアルバムのタイトルにもなりました。悩んで決めたということもあって、思い入れがありますね。
――そんなミニアルバムのリード曲は「MAZE」。ロック調で、心が熱くなる曲です。
カッコいい曲ですよね! 正直、こういう路線になるのは意外でした。というのも、私自身はそういうカッコいい人間ではないので……。もっとにこやかな、可愛い系統がくると想像していたので、最初に曲を聞いたときのギャップがすごかったです。実際に、「今までとは違うギャップを出していきましょう」と言っていただけていたので、全力のカッコいいを歌で表現するよう意識しました。
――歌詞についてはどのような印象をお持ちですか?
最初に歌詞をいただいたときは、もっと迷いを表す言葉が使われていたんですよ。例えば、「私は間違った道を進んでいるんじゃないか」というニュアンスの言葉。ただ、私は、遠回りはあるにしろ、間違った道は基本的にないと思っているんです。だから、この曲も踏み出した先を全部肯定するような内容にしたくって。私が作詞するわけではないので、どれくらいリクエストしていいものか迷いましたが、これからアーティスト活動をしていくうえで遠慮するのはよくないと思い、お話させていただきました。そしたらすごく前向きな歌詞にしてくださって! とても嬉しかったです。
――レコーディングはいかがでしたか?
「今まで使ったことがないような声でカッコつけてもいいんじゃないか」という提案をしていただきました。自分としては恥ずかしいという気持ちもありましたが、実際に歌ってみたら。それがしっくりきたんです。この曲を通じて、また新しい私を見つけられた気がしました。
――初回限定盤には本曲のMVが収録されます。
自分だけが撮られるというのが初めてだったので、ワンシーン撮り終えるごとに「これでいいのかな? 大丈夫かな?」と、ソワソワしてました。現場で「これで合っていますかね?」「カッコよく仕上がっていればいいなと思います」という言葉を繰り返していた記憶が残っています(笑)。
――それくらい、分からないことだらけの中での撮影だった。
そうですね。自分の顔だけがアップになることも、外で撮影する経験もそんなにしたことがなかったので、新鮮でした。これまで人前に立つときはあまりカッコいい表情や真顔をさらけ出したことがなかったんです。だから、「ちょっとこれは……」と不安を口に出したら、「カッコいいから大丈夫」と言われまして。その言葉を信じてはいますが、正直「スタッフさんに乗せられちゃったんじゃないか」という気持ちも少し残っています(笑)。私は森や空の映像をもっと増やしてほしいと伝えたんですけどね……。
――じ、自信を持って大丈夫だと思います!
そ、そうですよね! なんといってもプロの方が撮ってくださったんですから。実際、仕上がったものはすごくカッコいいMVになっていたので、テンションが上がりました。私の表情はさておき(笑)。
――今回の経験は、次回以降のMV撮影にも生かせそうですね。
頑張ります。念のため、空の映像は多めに撮っていただき、いつでも差し替えできるようにしておきたいです。
――毎回、空の映像がたくさん入っていたら、シュールで面白い映像になってしまいそうです(笑)。
確かに(笑)。