「間髪」という熟語を耳にする機会は「間髪をいれず」という慣用句ではないでしょうか。しかし、「間髪」の正しい意味や使い方を理解している方は少ないはずです。この記事では、「間髪」の意味や読み方について解説していきます。また、「間髪をいれず」を使った例文や英語での表現方法も紹介しますので、正しい使い方を把握していきましょう。

  • 「間髪」は間違った熟語だった?

    「間髪をいれず」という慣用句で耳にすることも多い「間髪」は実は熟語として間違ったものなのです

「間髪」は間違った熟語だった?

意外に思われるかもしれませんが、実は「間髪」だけで終わる熟語はありません。慣用句である「間髪をいれず」の読み方が「かんはつ・をいれず」と間違った区切り方をされてしまったことによって、「間髪が1つの熟語である」と誤解されました。そのため、「間髪」単体で使われる機会もなければ、意味がついているわけでもないのです。

「間髪」の由来

「間髪」は中国の逸話集「説苑(ぜいえん)」から来ていると考えられています。「その出づる出でざるは、間に髪を容れず」という文章から、間に髪の毛1本すら入れることができないということから転じて、「即座に」という意味になりました。

この文章は、恨みをもって謀反を起こそうとした王に対しての言葉にあたります。それは「王の行為は、糸に千釣(釣は重さの単位)もの重りをつけ、際限なく高いところから計り知れないほどに深い淵に吊り下げるようなものです。いったん糸が切れてしまうと2度と出ることができないでしょう。出ようにも、その隙間は髪の毛1本も入らないほどです」という部分からきており、最後の「その隙間は髪の毛1本も入らない」という表現では非常に狭いことをいっています。

その言葉が日本語に定着する中で「少しの時間も置かない・すぐに」といった意味に転じたと考えられています。言葉の成り立ちを考えると、「間髪」だけで意味を成り立たせることには無理があり、慣用句の形で使われるのが適切であるのがわかるはずです。

「間髪」は「かんぱつ」と呼んでもOK?

「間髪」の正式な読み方は「かんはつ」であり、「かんぱつ」と読むのは適切ではありません。「間髪」は単体で使われることはなく、「間髪をいれず」という慣用句で使われることが多いです。また、「かんはつをいれず」の区切り方は「かんはつ・をいれず」ではなく、「かん・はつをいれず」が正式なものです。

  • 「間髪」は間違った熟語だった?

    間違った読み方や使い方が主流になっていくと正しいものが排除されていくのはよくあることです

「間髪をいれず」はどう書くのが正解?

「間髪をいれず」という慣用句について解説していきます。聞いたことがある人は多いでしょうが、正しい意味や漢字の表記まで把握している人は少ない傾向にあるのではないでしょうか。

「間髪をいれず」の意味

「間髪をいれず」は「ほとんど間を置かずにすぐ・即座に」という意味を指しています。先述した通り、もとは髪の毛1本すら入れる余裕がない、というところからきており、その意味が転じて今のものになりました。

また、「間髪をいれず」の漢字について悩む人も多いのではないでしょうか。出典元に従うと「間髪を容れず」という表記が正しいものになります。しかし、「容れる」は常用外の読み方なので、一般的な国語の用法に従った場合には「間髪を入れず」が適切であるといえます。

一般的によく使われる「入れる」の漢字のもつ意味には「容れる」の意味が内包されているので、どちらで表記しても間違いではありません。ひらがなで「いれる」と表記しても間違っているわけではないので、どちらか悩んだときにはひらがなで表記してもいいでしょう。

「間髪をいれず」はどこで切れるのか

成り立ちの漢文が「間不容髪」という句であるので、区切られるところは「間・髪をいれず」が正式なものです。「間髪・をいれず」と間違った区切り方が浸透してしまったことによって、「間髪」という間違った熟語が生まれてしまったので正しく把握しておきましょう。

  •  「間髪をいれず」はどう書くのが正解?

    「間髪をいれず」について正しい知識を身につけておくことで用法を間違わずに使うことができます

「間髪をいれず」の類義語・対義語

「間髪」という熟語は存在しないので、「間髪をいれず」の類義語・対義語について解説します。基本的に類義語は言い換えることができるので、他の表現を使いたい際の参考にしてみてください。

類義語 : 「咄嗟に」「即座に」「間一髪」

「咄嗟(とっさ)に」は「あっという間に・すぐに」という意味を指します。「間髪をいれず」のほんの少しの時間といった意味合いを強く引き出した言葉です。「咄嗟に反論した」というような使い方ですが、名詞と一緒に使う場合には「咄嗟の判断」というように「に」ではなく、「の」でつなげる必要があります。

「即座に」は「すぐに・間を置かずに」といった意味をもちます。「間髪をいれず」に非常に近い意味で使われるので、語句の入れ替えをまるごとしても問題ありません。「間髪をいれずに反応した」を「即座に反応した」と言い換えても、違和感がないでしょう。

「間一髪」は、「物事がすぐそこまで迫っていること」を意味しています。これも区切り方は似ていて「間・一髪」という区切り方になり、「かんいっぱつ」が正しい発音になるので読み方を混同しないようにしましょう。

対義語 : 「愚図」

読み方は「ぐず」で、動作や判断が鈍いことやそういった人を指す言葉です。「ぐずぐずする」「愚図つく」といったように使われます。「間髪をいれず」の対義語にあたりますが、良い意味で使われることはほぼありません。使う際には注意が必要でしょう。

  • 「間髪をいれず」の類義語・対義語

    類義語は言い換えることができるものが多いので言い回しを工夫したいときに参考にしましょう

「間髪をいれず」の使い方

では、「間髪をいれず」のよく見られる使い方について紹介していきます。人の動作にもモノに対しても使うことができる慣用句であり、形を変えずにそのまま使うことができます。また、英語での表現方法に関しても解説していきます。

「間髪をいれずに答える」

間をあけずにすぐに答えるという様子を表現します。動作を表す言葉と合わせて使うことで、すぐにその動作をしたことを言い表すことができます。他にも「間髪をいれずにツッコむ」や「間髪をいれずに話す」などと使うことができます。素早い動作や反応について表現したいときには、最適な慣用句です。

「間髪をいれずに電車が来る」

使う対象は人だけでなく、モノでも間違っていません。すぐに電車が到着する様子を表現しています。「間髪をいれずに商品が届く」や「間髪をいれずの再発行」などと使うことができます。

英語表現は「immediately」「with nary a pause」

「immediately」は「直ちに・早速」という意味を指しています。時間を置かずにといった意味合いで、「間髪をいれず」と似たようなニュアンスで使うことができます。「I wrote her an answer immediately(私は早速彼女に返事を書きました)」のように副詞として使うのが一般的です。また、接続詞としても使うことができます。

「nary」が全くないという意味を示し「pause」は休む、ためらうといった意味です。それらを組み合わせて、「with nary a pause」が「ためらうことなく=間髪をいれず」と訳すことができます。

  •  「間髪をいれず」の使い方

    例文を参考にしながら自分なりの文章を組み立てて日常生活や英語を活用する場面に役立てましょう

「間髪」を正しく理解しよう

「間髪」は間違った熟語であり、この言葉自体は特に意味をもたないことを把握しておきましょう。「間髪」を使う際には、「間髪をいれず」という慣用句で使います。人の動作のみならずモノの様子を表したいときも使うことができるので、さまざまなシーンで正しく使えるようにしておきましょう。

また、読み方に関しても間違えがちな表現なので、正しい読み方を把握しておくことが重要です。英語での表現方法も覚えておくことで、場面や相手を選ばずに豊かな表現ができることでしょう。

「間髪」のように間違った読み方や熟語が使われると、だんだんとそれが一般的なものかのように定着していくことがあります。しかし正しい用法について学んでおくことは、恥をかかないためにも必要なことです。きれいな日本語を使えるようになるには、基礎から疑うことも大事なことかもしれません。