IT業界で培ったノウハウを飲食に

――代表ご自身のフットワークが軽いのも強みなんですね。

坂:私の社会人経験だと14年あるんですけど、もともとIT業界でSEを13年やっていて、飲食に関してはまだ1年なんですよ。正直飲食で今まで積み上げてきた経験がないからこそ、色々チャレンジしてみようという気持ちがあります。ただ、求められていることに対して、何か新しいサービスを生み出していきたいという本質はずっと変わっていないんです。コロナ前は、これからの日本全体のことを考えたときに、日本っていう限られたマーケットでやるんじゃなくて、市場を世界に向けてやった方がパワフルだよなって思ってたんです。そのトリガーとしてオリンピックがあると思うんですけど、インバウンドの色んな状況を見たときに、例えばインバウンド大国のフランスは、人口に対して観光客って1.5倍か2倍いるんです。日本は1億2千万人という人口に対してオリンピックのときには4千万人の訪日観光客が来ると言われていて、人口の3分の1ですけど、それでもインバウンドバブルって騒がれていて。まだまだ世界的なインバウンド大国からしてみれば、訪日観光客の数って少ないし、むしろ日本は少子高齢化で人口も減っていて、2045年には人口が1億人を切るって言われている時代の中で、どう考えても国内だけで勝負していても厳しいだろうなって。オリンピックをきっかけに色んなインフラが整うとしたら、インバウンドで何か新しいことをやれたらなというのが、もともと飲食を始めたきっかけです。

  • 「@ Kitchen AOYAMA」の店内。オープンキッチンでシェフたちの調理風景が見える

――なるほど、それで浅草で飲食店を始めたんですね。

坂:本当は銀座でやりたかったんですけどね(笑)。銀座で飲食をやっている色んな経営者から、「インバウンドをやりたいなら浅草じゃない?」って言われて。そこから浅草で物件を探したら良さそうなところがあって。これは何かのご縁だなと思って立ち上げたのが、もともとやっていた飲食店なんです。

――今のお話を聞いたら「@ Kitchen」オープンに至る早さも納得できます。以降、次々と新規オープンさせて、2021年1月中旬には麻布十番に6号店がオープン予定とのことですが、こうした展開はどの程度考えていらっしゃったのでしょうか。

坂:インバウンドの軸は長期プランに切り替えてゆっくり育てながら、今目の前をどうするかを考えたときに自分の店をシェアキッチンにしようと考えて始めたので、そこから多店舗展開をしていくというところまでは描いていなかったです。ただ、これから頑張りたい人に向けてチャレンジできる場所を作っていくということとか、シェアキッチンを通じて、従来飲食業界が抱えていた、初期費用、人件費、家賃の高さ、在庫リスクがある、廃業リスクが高いといった問題を解決できたらいいなということは描いていました。それは私がもともとITに13年いて、そこから飲食に行こうと思った1つのきっかけなんです。逆に言うと、「絶対飲食だけはやらない」って、まわりに言っていたんですよ。

――それはどうしてですか?

坂:WEBの仕事をしている側からしたら、(飲食店は)わざわざ場所を借りて人を雇って、食材のロスを抱えて、というのはそもそもリスクが大きく感じましたし、ほかにも天気にも左右されたり、毎日一日が終わらないと売り上げがわからない、1ヶ月の売り上げも結局最終日にならないとわからないですよね。例えばITでサブスクリプションで考えてやる方が仕組みとしては簡単だし、収入としても固定で安定しますし、ある意味家賃収入みたいな感じで、仕組みっていくらでも生み出せると思うんです。それが、飲食ってすごくアナログですし、ITをやってる人間からすると、天気に影響されるって信じられないじゃないですか(笑)? 台風で売り上げゼロとか。

――それはそうですね(笑)。

坂:だから、そういう業界でわざわざ勝負する理由ってないと思っていたんですけど、やりやすい業界だけでチャレンジしていても面白くないという思いもありましたし、一番のきっかけはインバウンドをやりたいから飲食をやろうということがきっかけではあるんですけど。畑違いの業界で結果を作れたら、面白いし、自分の経営者としてのキャリアアップにも繋がるなと思ったことも大きいですね。