「乖離」はビジネスシーンや投資の話でよく聞かれる言葉ですが、意味をあいまいにしか知らないという人も少なからず見受けられます。本記事では、乖離の意味や使い方から、類語・英単語までを紹介しています。
乖離の意味・読み方とは
まずは乖離の基本的な意味などを見ていきましょう。
乖離の意味
乖離の意味は「そむき、結びつきが離れること」です。予定値と実績値の間が離れているときに「予定値と実績値が乖離している」のように使用します。「両者の見解は大きく乖離している」のように使われることもあります。
乖離の読み方は「かいり」
乖離とは「かいり」と読みます。「乖」が複雑な漢字であり、常用漢字表にもないため「かい離」と表記されるケースもあります。
乖離と混同しやすい言葉と違い
乖離と同じ読み方だったり、漢字が似ていたりするものの、意味が異なる熟語が複数あるので、混同して使わないよう注意が必要です。
「解離」の意味と違い
「解離」も「かいり」と読みます。ただ「離れる」だけではなく、「解き離す」「分解して離れる」という意味で使います。
「解」という漢字の成り立ちは、「『角』を持って、『刀』で『牛』を裂き分ける」ことからです。もともと一つだったものがわかれるという意味を含んでいる点が乖離との違いです。
主に化学や医学の分野で使われ、「分子の解離」や「解離性障害」のように使用されています。
「剥離」の意味と違い
「剥離」は「はくり」と読みます。「離」という漢字が入っていることと、「乖」も「剥」も日常的には使わない難しく複雑な漢字であることから、読み間違える可能性のある熟語です。
「剥離」の意味は、「剥(は)がれて離れること」または「剥がすこと」です。「網膜剥離」や「塗装を剥離する」のように使います。こちらは「剥がれる」という意味が含まれている点が乖離と異なります。
乖離の使い方と例文
乖離はビジネスシーンで使われる機会の多い言葉です。例文とともに、乖離の使い方を確認しましょう。
ビジネスシーンにおける乖離の使い方と例文
ビジネスシーンでは、予算や実績、計画と現状に差がある場合や、対人関係において、考えに隔たりがある場合などで使われます。
・当初立てたスケジュールと乖離が見られる
・クライアントの費用感がプロジェクト平均とは大きく乖離している
1つ目の例文は、計画に対して現状が伴っていないことを表現しています。2つ目の例文は、複数の関係者の間で考え方に差異があることを意味しています。
乖離を動詞として使う場合の例文
また、乖離という言葉は動詞として使う場合と、名詞として使う場合があるのにお気付きでしょうか。まずは乖離を動詞として使用する場合の例文をもう少し見てみましょう。
・彼の政治は、人心から乖離している
・このままのペースでは、当初のスケジュールから大きく乖離するだろう
乖離を名詞として使うの例文
次は乖離を名詞として使う場合の例文も見ていきましょう。
・彼の提案には、市場ニーズとの乖離があると言わざるを得ない
・今回のトラブルのせいで、当初の予定から大幅に乖離が生じている
「乖離率」など、株式投資における乖離の使い方
「乖離」は金融や投資でもよく目にする言葉です。
株式投資で、株価予測の手法として「株価移動平均線」という考え方があります。株価移動平均線と現実の株価の差を、指標として数値化したものを乖離率と呼びます。
株価移動平均線に沿って推移していくと考えられる株価が、実際にはどのくらい離れているのか乖離率として表すことで、「売られすぎ」「買われすぎ」などの現状を把握できるとされています。
乖離の類語や言い換え表現
乖離という言葉を知らない人と話すときや、わかりやすい言葉に言い換えて話したいときには、類語を知っていると便利です。
類語に言い換えると、若干ニュアンスが変わってしまうこともありますが、複数の類語を押さえておけば、より適切な言葉に置き換えることが可能です。ここで紹介する乖離の類語を覚えておきましょう。
「離反」の意味
「離反」は「りはん」と読みます。離反が乖離と共通しているのは、「隔たりができる」という意味です。ただし、乖離をそのまま離反に置き換えて、文法と意味のどちらもが同義となるわけではありません。
乖離は隔たりが生じることを表し、離反は離れていくことを表現します。「各メンバーとチームとの間には乖離があった」と「メンバーの気持ちがチームから離反する」がほぼ同義となります。
「隔離」の意味
「隔離」は「かくり」と読み、「へだてること」や「へだて離すこと」という意味があります。「離す」という意味が含まれることから、乖離の類語として使えそうですが、若干対象物が異なります。
乖離は気持ちや状況などの、目に見えないものを対象としていますが、隔離は人間や物などの明確に見えるものを対象として多く使われます。隔離は、「病人を隔離する」や「隔離病棟」などに使われます。
「分立」の意味
「分立」は「ぶんりつ」と読み、「分けて設立する」ことや「分かれて別々に存在する」ことを意味します。乖離とは異なり、離れているだけでなく、個として存在していることも表現しています。
分立が使われている場面として特に有名なのは「三権分立」です。これは意味が異なってしまうので、乖離で言い換えることはできません。
「疎遠」の意味
「疎遠」は「そえん」と読みます。疎遠は遠ざかってしまい、関係が薄くなった状態を表現します。乖離と同様に、目には見えない「心」の表現とも言えますが、「疎遠」では「縁」が遠のいていることを意味に含みます。
「疎遠」は、「〇〇さんとはすっかり疎遠になってしまった」とか、「日ごろの疎遠を詫びる(わびる)」といった使われ方があります。
乖離の対義語
乖離の意味や使い方を覚えたら、ビジネスシーンでは対義語も併せて使うことが多いので、覚えておく必要があります。
それぞれの言葉を使うビジネスシーンを考えながら参照してみてください。
「一致」の意味
「一致」の意味は「2つの物がぴったりとひとつになること」です。乖離が起点からどんどん離れていくイメージの意味であることに対し、「一致」は離れた場所から一点に重なったイメージの意味となるので、対義であるのも納得できるでしょう。
「思いが乖離していく」に対し、「思いが一致した」という使い方ができます。
「同調」の意味
「同調」には、「調子が同じであること」のほか、「ほかに調子を合わせること」といった意味があります。
「思いが乖離していく」は、思いが反対方向へ離れていくイメージが浮かびますが、「思いが同調していく」だと、同じポイントを目指して寄り添っていくイメージになります。
「密接」の意味
「密接」には、「すきまのないほど、ぴったりとくっついていること」という意味があります。
乖離が離れていることを表現する言葉なので、ぴったりとくっついている「密接」は対義語となりますが、乖離を置き換えて対義的な文章を作成するのは難しいでしょう。
「密接な関係を作る」とか「都会では家が密接している」という使い方ができますが、乖離に置き換えても文章として成立しません。
「結束」の意味
「結束」は「結んで束にすること」「志を同じくする者が団結する」という意味を持つ言葉です。「荷物をひとつに結束する」とか「仲間が結束すれば怖いものはない」といった使い方ができます。
乖離の英語表現
乖離と同じ意味を伝えられる英語表現もありますが、ひとつの単語ではありません。日本語での類語や対義語と同様、乖離を使用している文章のニュアンスによって、適切な英語表現ができる単語も異なります。
英語においても乖離を表現できるように覚えておきましょう。
「estrangement」の意味
「estrangement」の直訳は「疎遠」になります。乖離を使って表現している文章のなかで、乖離の類語である疎遠を使っても意味が通じる文章を英訳する際には「estrangement」が適した単語ということになります。
「gap」の意味
「gap」には「隔たり」という和訳が含まれており、数値のへだたりや感情の違和感の表現として使われる乖離を英訳する際に適した単語です。
「予算の数値と実績との間には大きな乖離がある」という文章は、そのまま乖離を「ギャップ」に置き換えても意味が正しく伝わります。
「separate」の意味
「separate」は動詞なので「乖離する」という表現として使えます。乖離そのものを英語表現するときは、名詞の「separation」を使います。
「separate」は動詞として「離す」「切り離す」「引き離す」などとも和訳され、別れに使われることが多い単語です。
「disconnect」の意味
「disconnect」は、「切断する」「切る」といった意味があります。「縁を切る」という意味もあることから、乖離の類語である「疎遠」を使って表現できる意味で乖離が使われているときには、英訳の際にdisconnectを使うと適切な英文になると考えられます。
「乖離がある」「乖離が生じる」「乖離する」など、乖離を使いこなそう
乖離はビジネスシーンではよく耳にするものの、日常会話で使われることは少ないため、意味があいまいなままやり過ごしていたという人もいるのではないでしょうか。
ビジネス会話の中で、誤った使い方をして恥をかくことがないよう、乖離の意味をしっかり覚えておきましょう。