お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣が脚本&監督を手掛けた大ヒット絵本『えんとつ町のプペル』が、現在アニメーション映画として上映されている。黒い煙に覆われ、“星”があるなんて誰も想像すらしなかった“えんとつ町”で、少年・ルビッチ(声:芦田愛菜)とゴミから生まれたゴミ人間・プペル(声:窪田正孝)が出会い、大冒険が始まるという物語だ。
『怪盗グルー』シリーズや、『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』(18年)、『海獣の子供(19年)など、16歳にしてアフレコ経験も豊富な芦田。今回演じたキャラクター・ルビッチや物語の魅力について、インタビューした。
■「本当の友達ってなんだろう」と考えた
――今回ルビッチ役で声を担当した『えんとつ町のプペル』ですが、芦田さんが物語に感じたことや、共感したところはありましたか?
ルビッチの「星があるかどうかわからないけど、ないこともわからない」というセリフがすごく印象的でした。「できると思うのも自分だけど、できないからと諦めてしまうのも自分だから、とにかく挑戦してみよう」という意味なのかなと感じて、その気持ちがすごく大事だな、がんばってみようかなという気持ちになりました。台本を読んだ時から素敵だなと思っていたセリフです。
――アフレコにあたって、西野さんからのアドバイスなどはありましたか?
西野さんとは、まず録音する前にお話をさせていただいて、この作品に対する思いや、ルビッチのキャラクター設定についても伺いました。収録でも本当にすごく丁寧に、ワンシーンワンシーンこだわって、西野さんと監督とプロデューサーさんと私で「もっとこうした方がいいんじゃないか」と話し合って、何回も録り直したシーンもあります。
――西野さんはどういうところにこだわっていたんですか?
けっこう、お笑いの要素を求められることが多くて(笑)。私も「西野さんの気持ちに応えられてるかなあ」とドキドキしてたんですけど、その場で「もっとこうしたらいいんじゃない?」と教えていただきました。例えば、焼却炉に行ってしまいそうなプペルをルビッチが頑張って追いかけるシーンは、全部西野さんにレクチャーをいただきながら、台本にない言葉をたくさん入れています。
――あのシーンは、キッズが見たらすごく笑いが起こりそうだなとも思いました。
私も見ていて、「西野さんの指示はすごいなあ」と思いました。ルビッチのシーンだけじゃなくて、他のキャラクターにもそれぞれ面白いシーンがあるので、そういうところも楽しんでいただけたら。
――完成した作品を観て、「すごいな」と思ったところはありますか?
まずはアニメーションが本当に素敵です。星空や町の風景がすごく綺麗で、スクリーンで観たい気持ちになりました。あとは、プペルとルビッチが喧嘩して仲直りするシーンが好きなんです。プペルが『友達ですから』と言うんですけど、すごくいいなと思って……。窪田さんと一緒に収録させていただいたんですけど、録音しながらもうるうるしてしまいました。今まで、友達とは何かさえ知らなかったプペルが、ルビッチと出会って友達を知って、その友達にひどいことを言われても、まだ尚「友達ですから大丈夫です」と言える。2人の関係性が素敵だなと思って、「本当の友達ってなんだろう」と考えさせられたシーンです。
――ちなみに、うるうるきてるのは窪田さんには…?
ばれていなかったと思います(笑)。でも本当にルビッチとしても大事なシーンだし、完成した作品を観ても、うるうるきていました。窪田さん演じるプペルが純粋であればあるほど苦しくなるというか、ルビッチ的にはすごくつらくて、心を動かされました。
■みんな笑顔になれるような世の中がいい
――『プペル』は夢や希望をもたらす冒険を描いていますが、読書家でも知られる芦田さんは、どんな物語が好きですか?
『プペル』のように感動する話、友情や仲間の大切さを語るような話も好きなんですけど、実は最近、イヤミス(後味の悪いミステリー)にハマっていて(笑)。
――意外な方向性でした!
『プペル』とは真逆な感じなんですけど……(笑)。人間心理のやるせない部分が出ているところが面白いです。もちろん、お化けとかが出てくるホラーも怖いけど、それ以上に、自分の背後まで迫りくる恐怖というか、明日自分の身にも起こり得るかもしれないような、身近な恐怖を感じられるヒヤヒヤ感が好きで、最近ハマっています。もともとミステリーやゴシックホラー、たとえば海外作品でゾワゾワくるような、「うわあ、見たくなかった」というオチも好きだったんです。
――そうなんですね。『プペル』も実は現実の社会にも通じるような作品でもあると思いますが、芦田さんは「こんな風な世の中になればいいな」と思う理想はありますか?
最近猫を飼い始めたんですけど、笑顔になる機会がすごく増えて、笑うだけでも幸せになれる気がするんです。笑いって大切なんだなと思うので、皆が笑顔になれるような世の中がいいなと思います。
猫ちゃんは本当にかわいくて、もう、寝てるだけでかわいくて! ずっと「かわいいね~」と言ってます(笑)。うちの子はけっこう寝相が悪くて、人間だったら考えられないような、上半身は右、下半身は左という変な形が、本人(猫)的にはお気に入りみたいで、見ると大爆笑してしまいます。すごく気持ちよさそうに寝てる(笑)。だから、動物と暮らしたら笑顔になれるかもしれません。人間にはないものをもたらしてくれるんじゃないかなと、感じますね。
――動物に接して、自分じゃない存在を気に掛けるようになるといったところなどもあったりしますか?
そうですね。自分がお世話をしてあげないと……という責任感もありますし、猫ちゃんもワンちゃんも素直なので、嬉しいときは全力で嬉しい表現をしてくれたり、悲しいときは本当に悲しそうにしていたりして。人間って、どうしても自分の感情を隠してしまうところもありますけど、そうやって素直なところを見ると浄化されます。素直っていいな、と思います。
――それでは、最後に作品を楽しみにしている方にメッセージをいただけたら。
私はルビッチの「星があるかどうかわからないけど、ないこともわからない」というセリフがすごく心に響いたんですけど、この映画の中には色々な人の言葉やメッセージが詰まっていて、きっとどんな方にも楽しんでいただけるような作品になっていると思います。ぜひ劇場でご覧いただけたら嬉しいです。
■芦田愛菜
2004年6月23日生まれ、兵庫県出身。2010年に『ゴースト もういちど抱きしめたい』で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2013年には『パシフィック・リム』でハリウッドデビューを果たす。声優としては『怪盗グルー』シリーズ(10年/13年/17年)のアグネス役、『海獣の子供』(19年)の主人公・安海 琉花役を担当。ほか主な主演映画は『星の子』(20年)など。