片上七段は初の王位リーグ入り達成
藤井聡太王位への挑戦を目指す、第62期王位戦予選(主催:新聞三社連合)が進行しています。予選の全8ブロックはすでに決勝戦を残すのみ。12月7日には▲谷合廣紀四段-△片上大輔七段戦が東京・将棋会館で行われました。結果は88手で片上七段が勝利し、予選通過一番乗りを果たしました。
片上七段と谷合四段には、ある共通点があります。それは共に東京大学を卒業した棋士ということです。片上七段は東大に在籍中の2004年4月に四段昇段。谷合四段は卒業し、東京大学大学院在籍中の2020年4月に四段に昇段しています。
また、谷合四段は現在も大学院生であり、棋士とAIの研究者という二足の草鞋を履いている異色の棋士です。
両者は最先端の振り飛車に精通している振り飛車党ですが、少しタイプが異なります。
片上七段は相手が飛車を振った際には居飛車を採用することが多い棋士。元々は相居飛車の将棋も指しこなすオールラウンダーだった片上七段らしい戦型選択です。一方の谷合四段は、四段昇段後の対局すべてで振り飛車を採用する生粋の振り飛車党です。
本局、振り駒で先手番になった谷合四段は四間飛車を採用しました。それを見た片上七段は居飛車にし、対抗形の将棋となりました。
△4二銀上として急戦の構えを見せた片上七段に対し、谷合四段は見たこともないような布陣に構えました。金無双のように金を2枚を並べた後、▲3七桂~▲2九玉と玉を深く収納。四間飛車の最先端の戦型である、耀龍四間飛車と振り飛車ミレニアムをミックスしたような形です。
両者守りを固めた後、片上七段が相手の角頭から仕掛けて戦闘開始。両者大駒をさばき合った局面は、先に飛車を成り込んだ片上七段がわずかにリードを奪ったようです。
その後、互いに相手の金銀をはがし合う激しい終盤に突入します。苦しい形勢ながらも粘る谷合四段。しかし、取られそうな角の利きを生かして端に王手で桂を放り込む、△1七桂という決め手を放って片上七段が突き放しました。
最後は△2九桂成と、打ち込んだ桂を働かせて勝負あり。この手を見て谷合四段が投了を告げました。
東大対決を制した片上七段。今期予選では渡辺明名人も破っており、堂々のリーグ参加です。王位戦は第46期から参加していて、今回が初のリーグ入りとなりました。