三省堂は11⽉30⽇、「三省堂 辞書を編む⼈が選ぶ『今年の新語 2020』選考発表会」を実施し、2020年を代表・象徴する新語ベスト10を発表した。

  • 「ぴえん」

新語の選定にあたっては⼀般公募を⾏い、応募総数は延べ4,871通(異なり714語)に。これらの投稿などをもとに、辞書を編む専⾨家である選考委員が⼀語⼀語厳正に審査し、「今年の新語 2020」ベスト10を選定した。

大賞は、控えめな泣き声を表現する「ぴえん」。

  • 「今年の新語 2020」ベスト10

従来泣く様⼦を表現するには⼤泣きかすすり泣きかのオノマトペを使うしかなかったが、控えめに声を出して泣く表現として登場。穴になっていた部分を埋める言葉として、多くの人々の熱烈な支持を得た。2010年代末に流行語として現れたものが⽇常的に使われ、今や辞書の項⽬の候補になったというのが選考委員の判断という。

ぴえんの意味を解説

  • 国語辞典編者による「ぴえん」の解説

ベスト10に選出された言葉には、実際の編者によって国語辞典としての言葉の解説(語釈)が書かれた。各辞書のぴえんの解説は以下の通り。

ぴえん[2](感)悲しいことがあったときなどに上げる軽い泣き声。また、その泣くときの様子やその声の形容。〔うれしいときにも用いられることがある〕「ぴえーん[2]」とも。「わたしの分のケーキ残ってないの、―」
『新明解国語辞典』編集部執筆

ぴえん(感・副)〔俗〕小声で泣きまねをするときの ことば。また、小さく泣く声。「電車に間に合わない、―」〔二〇一〇年代末に広まった ことば〕
『三省堂国語辞典』飯間浩明氏執筆

ぴえん〈感〉困ったり、思い通りにならなかったりして、ちょっと悲しい気分であることをあらわすことば。「話題の店に来てみたら臨時休業だった、―」[「びえん」が激しい泣声であるのに対して、かわいらしい泣声をあらわしているオノマトペ]《用法》「ぴえんとした顔つき」のような、副詞的に用いられる場合もある。
『三省堂現代新国語辞典』小野正弘氏執筆

ぴえん[2](感)(若者言葉で)軽度の悲しみや落胆、また喜びや感激の気持ちを表す語。「推しのイベントあるけど、今日はバイトだ。―」「このアクセ可愛い。―」〔特にSNSのメッセージなどに付したり、顔文字で表現されたりすることも多い〕
『大辞林』編集部執筆

「○○警察」「密」「リモート」などコロナ時代を反映

2位の「○○警察」は、個⼈的に警察の真似事をしている⼈々を指して使う⾔葉。コロナ禍の中で「⾃粛警察」「マスク警察」など、さまざまな「警察」が現れた。ネット上などで古くから使われていた俗語であり、最近までマイナーな印象があった「○○警察」が、コロナ禍をきっかけに全国区になったと⾔える。

3位の「密」、4位の「リモート」も、コロナ禍をきっかけに新しい⽤法が⽣まれた⾔葉。それぞれ従来の辞書に載っている⾔葉だが、「密」は⼝頭語の性格もあわせ持つようになり、「避けるべきもの」という語感も⽣まれた。また、「リモートワーク」「リモート授業」「リモート飲み会」などを略したかたちの「リモート」が⽇常的に使われるようになった。

続いて、man(男性)と explain(説明する)の合成語mansplainの名詞形である「マンスプレイニング」、ネットを中⼼に「⼤満⾜」「最⾼」という意味で広がった「優勝」、「ごりごりのイケてる低⾳」などとポジティブなニュアンスに変化して使われるようになってきた「ごりごり」がランクイン。

「DVD買ったまである」などのように、動詞句や形容詞句につける⽤法が広がってきた「まである」、コロナ時代のアウトドアの楽しみ⽅を象徴する⾔葉の⼀つである「グランピング」、そして、2020年1⽉に国際標準模式地に登録された「チバニアン」は、⽇本の地名が地質時代の名前になったことで脚光を浴びた。

今回投稿された新語候補の中には、コロナ時代を反映して、新型コロナウィルスに関連した⾔葉が多く含まれていたという。2020年の「選外」については、「ソーシャルディスタンス」「ステイホーム」「クラスター」「アマビエ」「ロックダウン」「⼿指(しゅし)」という 6 つの⾔葉が「コロナ枠」として選ばれた。

また、ベスト10を検討するにあたり、それぞれの選考委員が選出した⼀推しの10語は次の通り。

  • 『三省堂現代新国語辞典』⼩野正弘氏
    オンデマンド/クラスター/コロナ/zoom/ぴえん/フラッシュモブ/密/優勝/ロックダウン/○○んご
  • 『三省堂国語辞典』飯間浩明氏
    グランピング/○○警察/ごりごり/世界線/ぴえん/まである/マンスプレイニング/密/優勝/リモート
  • 『新明解国語辞典』編集部
    新しい⽣活様式/○○警察/コロナ/三密/⼿指/ステイホーム/ソーシャルディスタンス/濃厚接触/ぴえん/リモート
  • 『⼤辞林』編集部
    アマビエ/エッセンシャルワーカー/ギフテッド/新型コロナウイルス感染症(COVID-19)/三密/ソーシャルディスタンス/チバニアン/HSP/Black Lives Matter/ロックダウン