寄付金控除は、社会貢献ができる節税方法です。特に有名な寄付金控除はふるさと納税ですが、公益社団法人、公益財団法人、独立行政法人などへの寄付も、寄付金控除として認められています。

本記事では、寄付金控除の基本的な仕組みや対象団体について紹介した後、寄付金控除の具体的な手続き方法について解説します。最後に、寄付金控除の節税効果も紹介しますので、自分の場合はどれぐらい効果があるかをぜひ確認してください。

  • 寄付金控除とは

    ふるさと納税は返礼品がもらえることから寄付金控除の中でも有名

寄付金控除とは

寄付金控除とは、納税者が国や地方公共団体、特定の公益増進法人などに対し「特定寄付金」を支払った場合、所得控除が受けられる制度です。また、一定の条件が当てはまる場合は、所得控除(寄付金控除)ではなく税金控除(寄付金特別控除)を受けられる場合もあります。

身近な例で言えば、地方公共団体に納める「ふるさと納税」は、寄付金控除を受けられる一例(※1)です。また、公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人また団体などへの寄付も、一定の要件を満たしていれば寄付金控除として認められます。

寄付金控除によって税金が安くなる

寄付金控除のメリットは、寄付をした後に一定の手続きを行うことで税金が一部軽減されるという点です。複数の団体に寄付をした場合、寄付金は合算できます。上手に金額を調整することで、特別寄付金のうち自己負担分は2,000円のみとなります。

寄付金控除には所定の書類と手続きが必要

寄付をしただけでは寄付金控除を受けられません。寄付金控除を受けるには、基本的に所定の書類を揃えて寄付をした年度の確定申告をしなければなりません。

確定申告にて寄付金控除を申請するには、確定申告書に次の書類を添付するか、各地申告書の提出時に提示する必要があります。

  • 寄付先の団体が発行する受領証(領収書)
  • 寄付先に応じて必要となる書類

ただし、ふるさと納税については例外的に確定申告をしなくて済む「ワンストップ特例」という制度があります(※2)。確定申告をする場合とワンストップ特例を利用する場合の具体的な手続きについては、後ほど解説します。

寄付金控除上限額の計算方法

ふるさと納税などで寄付を行って寄付金控除を受けるためには、寄付金控除の上限額を確認しておきたいところです。寄付金控除上限額の計算方法は次の通りです。

寄付金控除上限額の計算方法 特定寄付金の限度額
所得控除 その年支払った特定寄付金の合計額 - 2,000円 所得金額の40% 相当額
税額控除 政党等寄付金特別控除 その年支払った特定寄付金の合計額 - 2,000円 × 30%
※100円未満切り捨て
所得金額の25% 相当額 所得金額の40% 相当額
認定NPO法人等寄付金特別控除 その年支払った特定寄付金の合計額 - 2,000円 × 40%
※100円未満切り捨て
所得金額の25% 相当額
公益社団法人等寄付金特別控除 その年支払った特定寄付金合計額 - 2,000円 × 40%
※特定寄付金は一定の要件を満たすこと
※100円未満切り捨て

※計算式中の2,000円は寄付金控除と寄付金特別控除を合わせた金額

基本的に寄付金控除は所得控除です。ただし、以下の場合は寄付金特別控除として税額控除も可能で、どちらか有利な方を選択できます。

  • 政治活動に関する寄付金のうち政党または政治資金団体に対する寄付金
  • 個人が支出した認定NPO法人に対する寄付金
  • 個人が支出した公益社団法人に対する寄付金

税額控除の場合、個々に認められる寄付金特別控除の上限額が違うだけではない点に注意しましょう。税額控除全体の合計額、認定NPO法人等寄付金特別控除と公益社団法人等寄付金特別控除の合計額にもそれぞれ上限額が決まっています。

多くの団体に寄付をしている場合は計算が複雑になります(※3)ので、順番に進めていきましょう。

  • 寄付金控除とは

    寄付金控除の仕組みは複雑

寄付先はどこがいい? 対象団体の紹介

寄付をすることで寄付金控除を受けられる団体は多種多様です。寄付対象に選べる団体を紹介します。

特定寄付金の範囲となる団体

寄付金控除の対象となる団体を、特定寄付金の種類別にまとめました。

特定寄付金の種類 対象団体(団体でないものは省略)
国又は地方公共団体
地方団体
認定NPO法人
特例認定NPO法人
指定寄付金  公益社団法人
公益財団法人
公益を目的とする事業を行う法人または団体
特定公益増進法人に対する寄付金 特定公益増進法人
特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
認定NPO法人等に対する寄付金 認定NPO法人
政治活動に関する寄付金 政党(支部を含む)
政治資金団体
その他の政治団体
特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額

公益を目的とする事業を行う法人または団体では、幅広い団体が対象となります。 学校法人や日本赤十字社、社会福祉法人、更生保護法人も対象です。

特定寄付金に該当しないもの

特定寄付金の対象団体であっても、次の条件に当てはまる場合は、特定寄付金としては認められません。

  • 学校入学時の寄付金
  • 寄付をした人に特別の利益があると認められる寄付
  • 政治資金規正法に違反する寄付

これらの条件に当てはまる寄付は、特定寄付金の計算に入れないようにしましょう。

  • 寄付金控除の手続き方法

    自分が役立ててほしいと思える団体を探して寄付しよう

寄付金控除の手続き方法

寄付金控除の手続き方法は、確定申告を行う方法と、ワンストップ特例を利用する方法の2種類あります。ワンストップ特例は、確定申告をしなくてもいい給与所得者が、5団体以内のふるさと納税をした場合に適用される制度です。

以下、それぞれの手続き方法について順番に解説します。

確定申告

確定申告の手続きは、以下の流れで行います。

  1. 寄付先より寄付金受領証明書などの必要書類を受け取る
  2. 確定申告で書類を集める
  3. 確定申告書を作成する
  4. 税務署に確定申告書と必要書類を提出

手続きの内容を順番に解説します。

1.寄付先より寄付金受領証明書を受け取る

寄付をした団体などからの寄付金受領証明書(領収書)は、寄付をした証明になる書類であり、寄付金控除を受けるためには必要な書類です。寄付先から受け取った寄付金受領証明書は、確定申告の時期までなくさないよう大切に保管しましょう。

2.確定申告で書類を集める

領収書以外にも、団体によっては、次のように必要となる書類があります。

寄付先 必要となる書類
政治活動に関する寄付 寄付金(税額)控除のための書類
特定公益増進法人
特定公益信託の信託財産
その法人や信託が適格であることの証明書や認定書のコピー

これらの書類も確定申告に必要となるため用意しましょう。

3.確定申告書を作成する

確定申告書を作成します。所得控除と税額控除で記載する場所などが異なるため、それぞれ以下のように進めてください。

順番 所得控除の記載内容 税額控除の記載内容
1 申告書第二表の「寄附金控除」欄に寄附先の所在地、名称、寄附を記入 計算明細書「令和○年分の所得税の額」欄に申告書第一表の「上の21に対する税額(課税所得金額)」欄を転記
2 申告書第二表の「寄附金控除」欄に領収書に記載された金額を「都道府県、市区町村分」欄に記入 申告書第一表の「政党等・寄附金等特別控除」欄に計算した控除額を転記
3 申告書第一表の「寄附金控除」欄に控除額を計算して記入

申告書第二表「特例適用条文等」欄に、以下のいずれか当てはまる条や項番号を記入

政党等寄附金は「措法41の18」
認定NPO法人等寄附金は「措法41の18の2」
公益社団法人等寄附金は「措法41の18の3」

4 第二表の所得控除の「寄附金控除」の欄に3の金額を記入

確定申告書のフォーマットを確認しつつ、順番に記載していきましょう。

4.税務署に確定申告書と必要書類を提出

確定申告書が完成し、必要書類が揃ったら、所轄の税務署に確定申告書と必要書類を提出します。必要書類を貼り付けて提出するフォーマットがあるため、必要書類はそちらに糊付けして提出してください。

ワンストップ特例制度(ふるさと納税)

確定申告をしなくていい給与所得者のうち、寄付した先が5団体以内の場合は所得申告をしなくても寄付金控除を受けることが可能です。ワンストップ特例制度を利用した手続き方法について解説します(※4)

1.ふるさと納税をする自治体を決める

ふるさと納税をする地方自治体を決めましょう。寄付先の自治体に直接申し込むか、ふるさと納税サイトを通じて申し込むことができます。ワンストップ制度を利用したい場合は5団体以内に収めなければなりません。じっくり検討して寄付先を5団体まで選んでください。

2.ふるさと納税ワンストップ特例の申請書を提出

ふるさと納税を行う際に、ふるさと納税ワンストップ特例の申請書を提出します。地方自治体ごとにフォーマットがありますので入手して作成しましょう。ふるさと納税サイトを利用している場合は、ワンストップ特例制度を利用することを選択するだけで、自動的に申請書を提出してもらえることもあります。

3.確定申告不要で「翌年度の住民税」から控除される

ワンストップ特例制度で受けられる寄付金控除は、所得税から控除されるわけではない点に注意しましょう。控除される税金は、翌年度の住民税です。

  • 寄付金控除の手続き方法

    寄付金控除の方法は基本的に確定申告だが一定の条件でワンストップ特例も可能

年収などの条件による節税効果

年収と寄付金の金額による節税効果はどのくらいになるでしょうか。多くの人が利用しているふるさと納税の場合および所得控除と税額控除の節税効果について紹介します。

ふるさと納税の場合

ふるさと納税の場合、年収、寄付金額、世帯構成の条件によって節税効果は変わってきます。これらの条件を加味した節税効果の例は次の通りです。

年収 世帯構成 寄付上限額の目安 節税効果
300万円 単身 2万7,000円 2万5,000円
400万円 単身 4万1,000円 3万9,000円
400万円 夫婦(配偶者を扶養) 3万2,000円 3万円
500万円 夫婦+子ども2人(3人扶養) 2万4,000円 2万2,000円

単身で年収が多いほど、節税効果が高いことがわかります。

その他の寄付金控除の場合

所得控除と税額控除は、どちらの方が節税効果が高いでしょうか。一例として、年収400万円の独身会社員Aさんが3万円を認定NPO法人に寄付した場合で計算してみましょう。

控除の種類 計算式 節税効果
所得控除 3万円 - 2000円 = 2万8,000円
所得税率5% と仮定 2万8,000円 × 5% = 1,400円
1,400円
税額控除 3万円 - 2000円 = 2万8,000円
2万8,000円 × 40% = 1万1,200円
1万1,200円

計算の結果、税額控除の節税効果が高いことがわかります。ただし、高額所得者で所得税率が最大の45% の場合は、2万8,000円 × 45% = 1万2,600円という結果に。所得控除の節税効果が税額控除の節税効果を上回ることになります(※5)

  • 寄付金控除で社会貢献と節税を両立しよう

    寄付金控除の節税効果はさまざまな条件で変わるため実際に計算して確認を

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寄付金控除は、ふるさと納税制度によって注目されるようになった税制のひとつです。ふるさと納税では、返礼品に注目が集まりがちですが、本来寄付金控除は社会貢献と節税の両立ができる点が大きな魅力です。

自分の母校や自然災害の被災地を支援したいときには、ぜひ寄付金控除を活用することを検討してみてくださいね。

参照 :
(※1)国税庁「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
(※2)国税庁「ふるさと納税(寄附金免除
(※3)国税庁「寄附金を支出したとき
(※4)総務省「ふるさと納税のしくみ
(※5)国税庁「所得税の税率