寒さが本格化していくこれからの季節は、風邪やインフルエンザが流行します。そして忘れてならいないのは、新型コロナウイルスの存在。これからまた感染拡大がないとはいえず、油断はまったくできません。まだ、新型コロナウイルスを完全に治す薬やワクチンは存在しませんから、マスクをしたり手洗いやうがいをこまめにしたりするなどして、身を守っていくしかありません。

そういった「予防」はもちろん大切ですが、食事からの栄養を摂ることも大切なことです。栄養を十分に摂り、免疫力を上げることが大事なことはいうまでもないでしょう。その免疫力に大きく関係するのは、腸内環境です。

腸は「体内で最大の免疫機能」と呼ばれるほどで、腸の健康を保つことは、そのまま免疫力を上げることにつながります。自律神経研究の第一人者として知られる、順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生がおすすめする、免疫力を高める「朝の習慣」を紹介します。

■コップ1杯の水で腸を目覚めさせる

朝食の準備をする前に、まずコップ1杯の水を飲む習慣を身につけましょう。

腸は睡眠中にもっとも活発に働き、前日食べたものの消化・吸収を行い、翌朝の便の準備を済ませてから休息します。そこで、朝食の前に水で腸を刺激し、朝がきたことを教えてあげるのです。

水の刺激で蠕動運動のスイッチが入り、用意していた便をスムーズに排泄してくれます。便秘に悩む方は、この習慣を1週間も続けると便通の改善を感じられると思います。

冷水でも構いませんが、身体を冷やしたくない人は温かな白湯か常温の水がおすすめ。ただし、刺激を与えるにはグイッと一気に飲むことがポイントです。

水は朝だけでなく、1日1.5リットルをこまめに飲むことが健康の秘訣です。わたしたちの身体は毎日、代謝や呼吸、汗や尿で2リットルほどの水分を排出しています。そのため、食事で摂る水分とは別に、1.5リットルは飲み物で摂らないと水分不足になり、血液がドロドロになって循環が滞るほか、便秘の原因にもなります。外出先や職場にも水を携帯し、こまめに飲む習慣を身につけてください。

■トイレタイムをつくり、排便の習慣を身体に覚えさせる

水を飲んでも便意が起きない場合は、毎朝のルーティンとしてしっかりトイレタイムを設けましょう。朝食後に必ず便座に座る時間を確保し、身体にタイミングを覚えさせるのです。

無理に出そうといきむ必要はありません。むしろ交感神経が高まり、腸の働きが抑えられてしまいます。そこで、お通じをうながす腸マッサージをしながら、リラックスして排便を待ってください。

便秘の改善は気長に待つ気持ちが大切です。15分、あるいは30分待っても無理ならその日はすっぱりあきらめ、あまり思い悩まず続けていきましょう

■良いウンチ、悪いウンチで腸内環境をチェック!

腸内環境は、日々のウンチを見ることでわかります。

健康な腸からは健康的なウンチが出ますし、脂っこい食事や生活リズムの悪化で悪玉菌が増えれば、ウンチのコンディションも悪化します。また、細菌性の炎症が起これば、水のような下痢や血液を含む赤いウンチが出てきます。

ウンチはわたしたちの腸内環境を雄弁に語ってくれるのです。ウンチだけで腸のすべてを判断することは危険ですが、受診のきっかけにすることができます。また、日々の食事が腸に与える影響を実感することができ、食生活を改めるモチベーションになります。下図のポイントを参考に、毎日チェックする習慣を身につけましょう。

■「ゆるスクワット」で効率良く腸の筋肉を鍛える

健康を維持するうえで、避けて通れないのが「運動」です。とくにいま、テレワークで身体を動かす時間が減っている人は、なおさら注意が必要です。

筋力の衰えは血流の低下につながり、基礎代謝が下がって体温も低下します。エネルギーの消費量が減って肥満の原因になるほか、血流の低下によって老廃物がたまり、老化の促進や身体の不調を引き起こします。また、体温の低下もともなって、免疫力を下げてしまいます。

わたしは健康を維持できる程度の効率的な運動として、「ゆるスクワット」と名づけたオリジナルの運動を毎朝行っています。 

スクワットは全身の筋肉でもっとも体積の大きい、太もも・ふくらはぎ・お尻の筋肉を鍛え、効率的に基礎代謝を高められる運動です。また、立って歩くために必要な下半身の筋肉を維持するだけでなく、腸の筋肉も鍛えることができます。

みなさんも、まずは朝昼夜10回ずつ、1日30回を目標にはじめてみてください。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 写真/川しまゆうこ イラスト/えんぴつ

※今コラムは、『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(著:小林弘幸 監修:玉谷卓也 プレジデント社)より抜粋し構成したものです。