子どもは夫の扶養に入れるもの、そんなルールはないのに、夫の扶養に入れている人は多いのではないでしょうか。共働き夫婦の場合、扶養は収入の多い人のほうに入れるのが良いと考えがちですが、必ずしもそうではありません。

どちらの扶養に入れるのが良いのか、ここでは、お互い扶養関係のない共働き夫婦のケースでお伝えします。確認してみましょう。

  • 共働き夫婦、子どもはどちらの扶養に入れる?

    共働き夫婦、子どもはどちらの扶養に入れる?

■扶養の考え方

扶養には2種類あります。1つは税法上の扶養、もう1つは社会保険上の扶養です。まずは、税法上の扶養からチェックしていきましょう。

■夫と妻どちらの扶養に入れる?

税法上、扶養に入れるということは、扶養控除を受けることをいいます。扶養控除とは、扶養する人がいる場合に、一定金額を経費として所得から差し引けるシステムです。所得から経費を差し引くことで、課税対象となる所得金額が小さくなり、その結果、税額も小さくなるというわけです。

扶養控除は、所得税、住民税それぞれで受けることができます。そして、所得税、住民税とも扶養控除を受けられるのは子どもが16歳以上の場合のみです。子どもが16歳未満であれば、所得税、住民税とも扶養控除は受けられません。 しかし、住民税には、扶養控除以外に扶養が関係する別のルールがあります。それは、住民税非課税ルールです。住民税は、非課税上限額を超えないと課税されません。そして、上限額は、扶養人数が多いほど上がり、扶養される人に年齢は関係ありません。どういうことなのか、具体例で確認していきましょう。

■住民税非課税と扶養の関係

住民税が非課税になる所得の上限額は、以下の計算式より求めることができます。住民税は均等割と所得割の主に2種類がありますが、均等割は所得にかかわらず約5,000円と金額が統一されているため、ここでは所得割が非課税になる所得上限の計算を行います。

(東京都の場合)
(1)同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
総所得金額等≦35万円×(同一生計配偶者・扶養親族の人数+1)+ 32万円

(2)同一生計配偶者または扶養親族がいない場合
総所得金額等≦35万円

上記は2020年の計算式です。2021年からは、税制改正に伴い上記金額に10万円を加算して計算するため、ここでは、2021年以降適用される金額で下記家族のケースを計算します。

・夫 給与収入500万円
・妻 給与収入220万円
・16歳未満の子どもが2人いる場合

(1)同一生計配偶者または扶養親族がいる場合(子ども2人を扶養に入れる場合)
35万円×(2+1)+10万円+32万円 = 147万円

(2)同一生計配偶者または扶養親族がいない場合(子どもを扶養に入れない場合)
35万円+10万円=45万円

(1)より、子どもを扶養に入れる場合、総所得金額が147万円以内であれば住民税非課税となります。一方、(2)より、子どもを扶養に入れない場合、総所得金額が45万円以下であれば住民税非課税となります。

次に、夫と妻の収入からそれぞれの総所得金額を計算します。この夫婦の場合、収入から給与所得控除を差し引くと総所得金額を求めることができます。

夫の総所得金額356万円
妻の総所得金額146万円

妻の所得が146万円で、(1)の147万円以下となっています。したがって、妻の扶養に子ども2人を入れることで、妻は住民税非課税になることが分かります。

夫の扶養に入れたとしても夫は非課税上限額を超えていますから、税法上何のメリットもありません。一方、子どもを夫の扶養に入れるなら、妻の扶養には入れられず、妻の住民税非課税上限額は(2)の45万円となります。

妻は総所得金額が45万円を超えているので、夫婦2人とも住民税を払うことになります。したがって、このような共働きケースの場合、あえて収入の低い妻のほうに子どもを扶養に入れたほうが節税になるのです。

ただしデメリットがあることも確認しておきましょう。例えば、夫の会社で扶養手当がある場合は手当がなくなったり、児童手当が所得制限オーバーとなり減額されたりする可能性があります。これは、児童手当の扶養人数が減ることで所得制限ラインが低くなるためです。このように、誰にでも当てはまるメリットではないことに注意が必要です。

■子どもが16歳以上の場合

子どもが16歳以上の場合は、所得税、住民税とも扶養控除が適用されます。扶養控除の金額は16歳以上で所得税38万円、住民税33万円、19歳以上23歳未満なら所得税63万円、住民税45万円です。これらの金額を所得から差し引くことができます。したがって、税率が高いほう、一般的には収入の高いほうの扶養に入れたほうが節税効果は高くなります。

■社会保険上の扶養とは

社会保険上の扶養とは、健康保険など社会保険に関係する扶養をいいます。社会保険上の扶養と税法上の扶養は統一させる必要はありません。しかし、社会保険上の扶養は収入が多いほうの扶養に入れるのが原則です。

なお、国民健康保険には扶養の概念がありません。夫が自営業、妻が会社員の場合なら、妻の社会保険の扶養に入れたほうが良いでしょう。なぜなら、国民健康保険は1世帯あたりの加入者が増えると保険料もアップしますが、健康保険は扶養者が増えても保険料がアップしないからです。

ただし、原則は収入が多い方の扶養に入れますし、入れられるかどうか判断をするのは妻側の健保なので、健保に確認してみてください。

■どちらの扶養に入るかは総合的に考えて

今回のシミュレーションでは、税金面だけを考慮すると16歳未満の子がいる場合は、あえて収入の低い妻の扶養に入れることで節税することができると分かりました。しかし、先にお伝えしたよう扶養手当や児童手当等に影響することがあります。どちらの扶養に入れるかは慎重に考えて決めるようにしましょう。