1日に放送されたNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)の第30回「朝倉義景を討て」で、正親町天皇を演じる歌舞伎俳優の坂東玉三郎が本格登場し、SNS上ではそのオーラや存在感に感嘆の声が続出した。坂東の起用と演技の魅力について、チーフ演出の大原拓氏に話を聞いた。
坂東演じる正親町天皇は、第106代天皇。上洛した織田信長(染谷将太)と絶妙な距離を保ちながら、没落した朝廷の存続を図る、高貴で美しき帝だ。
第30回ではまず、堺正章演じる医師・望月東庵と囲碁をするシーンが登場。信長はどのような武将か尋ねる正親町天皇に、東庵は「見るべきところはあるかと…」と伝えた。
そして、正親町天皇と信長が対面。会話は描かれなかったが、その後、信長が光秀(長谷川博己)に「帝はわしをようご存じであった。今川義元との戦、美濃との戦、将軍を擁しての上洛、いずれも見事なりと仰せになり、武勇の誉を天下に示したと。当代一の武将なりと、お褒めいただいた。御所の修復もありがたしとのお言葉を賜り、さらにこう仰せになられた。天下静謐のため一層励むようにと。この都、この畿内を平らかにすべき、そのための戦ならばやむなしと、勅命をいただいたのじゃ。戦の勅命を!」とうれしそうに報告した。
正親町天皇の登場に、SNS上では「神々しさすら覚えました」「御簾越しの坂東玉三郎様めっちゃ美しかった」「なんとも不思議な存在感でございました…」「坂東玉三郎様とてもお美しい…美しい…美しい…」「帝無言の神々しさ」「さすが、坂東玉三郎様……存在感、美しさ半端ないな…!」「坂東玉三郎のオーラ半端無かった…」「人間国宝坂東玉三郎、やはり御簾越しでも気品の塊。流石人間国宝」などと、感嘆の声が上がった。
チーフ演出の大原拓氏は、「正親町天皇がどういう風に光秀や信長と関わっていくのか」が見どころの一つになると言う。「『麒麟がくる』は第1回から、武士とは何なのか常に訴えかけている。自分たちが戦えばいろんな争いが起こる。常に自己矛盾。戦いたくないけれど守らないといけないという葛藤を抱えているが、帝が武士の存在に対してどういう風に関わるのか。なぜ戦わねばならぬのかという問いに対する答えが徐々に見えてくる」
また、「朝廷はすごく難しい。政治をしているのは武士だけど、帝の許可を得たり、政治をいくらしていても帝がダメだと言ったらひっくり返る。不思議な構造で、帝という実態がなかなかつかめず難しい」と、帝をどう描くか苦労するも、「京都が中心。光秀や信長が京都をベースに考えたのは、帝という存在を大事にしたからではないか。帝が彼らの時代においてあまりにも大きな存在であるというところが1個の手がかりだと思う」と、帝の存在の大きさを感じたという。
そして、「わからない存在であり、大きな存在。美しさも含めると、玉三郎さんは有無を言わせず、すごいんです」と坂東を称賛。「何かをしてくださいとかではないオーラというか。普通の感覚とは違う視点もお持ちですし、ご本人が帝を敬っているから、役に対してものすごく真摯に向き合っていらっしゃる。だからこそ、我々もそれに引っ張られていく。どう帝を表現していくのか、どういう影響を光秀や信長に与えていくのか、存在感で玉三郎さんは表現していただいている。そして、単純に美しい」と語る。
坂東は本作がドラマ初出演。大原氏は「玉三郎さんは映像で見ない。(出演してくださったことは)我々としてはものすごくラッキーなことですし、玉三郎さんを映像に残せる、芝居を撮れるということはうれしいです」と喜び、「芝居を見ていても面白いですし、重みだけではない説得力がある」と、その演技に惚れ込む。
なお、坂東は「正親町天皇は、高貴で美しい帝と呼ばれています。そこにはプレッシャーを感じていますが、なるべく作りこまず、自然に見えるようにできたらと思います。光秀の存在や信長の存在、動乱の世の中に対しても俯瞰して見ている、包み込むような存在でいることを心がけています。天皇ですから、資料なども公開されておらず具体的にはつかみいくい役でもあります。今後は、どこまで正親町天皇として“居るだけで何かを感じさせる”ことができるかが課題だと思っていますし、挑戦だと感じています。こんな人がいたんだと、みなさんに納得してもらえるような人物になれたらいいなと思います」と語っている。
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