コロナ禍により私たちの働き方は一変し、テレワークが新しい日常となりました。この状況は多くの企業にとって、仕事の在り方を根本的に変革する大きな要因となりました。そして、適切な技術とリーダーシップによって何が実現できるかが明確になりました。

多くの人が場所を選ばない働き方の可能性を実感した現在、この短期間で大きく変革した働き方が完全に元に戻ることはないかもしれません。オフィス回帰が進む今こそ、将来を見据えた働き方の見直しや議論が必要とされています。

今年の初め、Citrixは欧米のビジネスリーダー300人にインタビューを行い、世界的なパンデミックにどのように対処しているのか、この危機が彼らにとって働き方や仕事そのものをどのように変えたと考えているのか、そして仕事、人、テクノロジーの未来についての彼らの見解にどのような影響を与えたのかを調査しました(Work 2035:人とテクノロジーがいかにして新しい働き方を開拓するか)。

以下、同調査から得られた注目すべき洞察を紹介します。

AIやロボットは従業員の代替品ではない

パンデミック以前は、ビジネスリーダーの93%が、人間よりもテクノロジーとAIのほうが収益を上げるという「転換点」が2030年までにやってくると考えていましたが、現在は55%と大幅に低下しています。

現在、ビジネスリーダーたちは、人間よりもテクノロジーとAIのほうが収益を上げるという「転換点」が近いとは考えていないようです。

雇用形態の変化

ビジネスリーダーの65%が、パンデミックの結果、経済は時間の経過とともに再生され、デジタル技術を活用して多数の小規模企業やフリーランス間の交流を促進することで価値を生み出す「プラットフォーム」型のワークモデルが主流になると考えています。また、半数以上(54%)が、正社員という雇用形態を減らして契約社員を増やすモデルに移行する可能性があると考えています。

テクノロジーは従業員の代わりではない

このような現状を背景に、ビジネスリーダーを対象とした最近の世論調査によると、圧倒的多数のリーダーが、テクノロジーを従業員の代替ではなく、テクノロジーによる労働力の増強を視野に入れていることがわかりました。

ビジネスリーダーのほぼ全員(93%)が、パンデミックの危機により、ビジネスを運営する上で人間による労働の重要性を再評価するようになったと答え、71%が人間による労働の方がテクノロジーよりもビジネスにおいて価値があることを認識するようになったと答えています。

また、従業員の生産性を向上させるためにテクノロジーを活用することに焦りを感じていて、71%のビジネスリーダーは、経営再建のためにも従業員の生産性を向上させる新しい方法を見つけなければならないと考えています。

世界的に不透明な状況下、企業が成功するために試行錯誤を繰り返しながら新しい働き方を展開する中で、この調査結果は、ビジネスリーダーが現在の状況についてどのように感じているか、そしてそれが労働の未来についての考え方にどのような影響を与えているかを明示しています。

  • 2035年までに新たに設けられていると思われる部署や職種。どの選択肢も一般の従業員よりもビジネスリーダーが多い結果になっている 資料:「Work 2035」

人間による労働の重要性

パンデミックにより、適切な技術とツールがあれば何が可能であるかが明らかになり、誰もが予想していたよりもはるかに早く変化が起きました。その結果、人間による労働の重要性が再認識されると同時に、テクノロジーによって可能になった、分散型のワークモデルの導入が重要であることが明らかになりました。

2020年はビジネスリーダーや労働者にとって挑戦的な経験の年となりました。2035年に仕事の世界がどのようになるかを正確に知ることは誰にもできませんが、この危機が今後も大きな影響を与えることは確かです。この状況は、予測不能な事態に備えて計画を立てることの重要性を私たちに示してくれました。

これからEmployee Experience(従業員体験)は、インテリジェントなテクノロジーを上手に活用しながら、クリエイティブな方法で問題を解決し、もっと迅速に意思決定を行うことができるような、ワクワクしたものにしていく必要があります。

これはほんの始まりに過ぎません。今は想像しがたい未来かもしれませんが、ビジネスリーダーが人とテクノロジーの関係性にポジティブな変化をもたらすことができれば、素晴らしい労働の未来が待っています。

「Work 2035」について

コンサルティング会社のOxford Analytica とMan Bites DogがCitrixの支援を受け、学界、シンクタンク、多国籍企業の取締役会、仕事の未来に関する有力な権威者からなるソートリーダーの諮問委員会と協議して、2035年の仕事の未来に関する代替的なビジョン、および人とテクノロジーの間の変化する関係を調査しました。あわせて、ビジネスリーダーや従業員を対象に独自のオピニオンリサーチを実施し、ビジョンを明らかにしました。

調査会社のColeman Parkesは2019年と2020年に、アメリカとヨーロッパ(イギリス、ドイツ、フランス、オランダ)の大企業や中堅企業(金融サービス、医療・ライフサイエンス、通信・メディア・テクノロジー、専門サービス、製造業、小売業。)で働く1,500人以上のビジネスリーダーや従業員にインタビューを行いました。 さらに2020年5月には、300人のビジネスリーダーを対象としたオピニオンリサーチの追加調査が実施され、世界的なパンデミックにどのように対処しているのか、パンデミックが仕事の将来に対する見解にどのような影響を与えたのかを調査しました。
2035年の労働の未来についての詳細はこちらをご覧ください。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)


シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社
セールスエンジニアリング本部 エンタープライズSE部 部長

グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。