富士通は10月14日と15日、オンラインイベント「Fujitsu ActivateNow」を開催。14日には、「ニューノーマル時代における日本と企業のあるべき姿」と題して、慶應義塾大学 環境情報学部教授 ヤフー CSO(チーフストラテジーオフィサー)データサイエンティスト協会理事 安宅和人氏と富士通 首席エバンジェリスト 中山五輪男氏が対談した。

ただ、実際には中山氏が聞き手となって、安宅氏の考えを聞くという展開で進んだ。

  • 対談する慶應義塾大学 環境情報学部教授 ヤフー CSO(チーフストラテジーオフィサー)データサイエンティスト協会理事 安宅和人氏(右)と、富士通 首席エバンジェリスト 中山五輪男氏(左)

なお、安宅氏は、「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 」(NewsPicksパブリッシング)の著者でもある。

  • 「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 」を紹介する中山氏

デジタル庁設立の期待

最初のテーマは菅政権で進められているデジタル庁設立への期待について。安宅氏は、「3つの視点で期待している」と語った。

それは、

①あらゆる行政はオンラインのデジタルで完結すべきである
②成長戦略としてデジタル化がある
③所得による教育格差が生まれ、多くの情熱や才能が解き放たれていないため、デジタル化で多くの人の社会参加が可能になる

という3点だ。

②についてある安宅氏は、「これこそが成長戦略の1丁目1番地で大きなテーマになる」と述べたほか、③については、「これが正しい社会であり、あるべき未来だ」と語った。

これらがどれくらいの期間で実現できるかについては、②が2-3年、③が1-2年に対して、①は10年かかるとした。ただ、霞が関をデジタル化するための専門組織をつくれば、2-3年でいけるかもしれないと述べた。

開疎化と企業の関係について

「開疎化」は、安宅氏がよく使う言葉で、これまでは企業は都市部で密閉、密度の高い中で業務を行ってきたが、Withコロナが長期化するなかで、今後は開放、密から疎の方向に向かうだろうということで、両方の言葉から1文字ずつ取り「開疎化」という言葉にしたという。

安宅氏は「企業は、どう開疎化に向かわせるかが問われている」と語り、その具体的方法については、1つ目は在宅(リモート)ワーク、2つ目はオフィス空間を島スタイルから疎の空間にし、ビルの窓を開け空気循環をできるようにすべきだとした。

「今後は、空気を何分で入れ替えられるかがビルスペックに加わってくるだろう」」(安宅氏)

さらに3つ目として、オンラインのフル活用、4つ目として風光明媚(ふうこうめいび)な場所で仕事をできるようにすること(ワーケーション)を挙げた。

  • 開疎化について説明する安宅氏

企業価値を高めるために何をすべきか

次のテーマは、企業価値を高めるために何をすべきか。

安宅氏は、7月にトヨタ自動車が時価総額でTESLAに抜かれたニュースを例に、「彼ら(TESLA)がやろうとしているのは、(屋根材そのものをソーラーにして、それをバッテリーに蓄え生活するという)電線のいらない社会、サステーナブルな社会。これはCO2の排出量も少なく、明らかにベターな社会です。これまでは人間に良い環境と地球に良い環境は関係がなかったが、これからはかなり交差してくると思います。今後はそれをやれる事業体でないと未来は厳しいということを意味しています。ある人が、今後はサステーナブルトランスフォーメーション(SX)だと言っていましたが、正しいと思います」と説明した。

日本の企業の課題とは?

次のテーマは、現在の日本企業の課題について。

この話題を語る前提として安宅氏は、企業には3つの種類あることを説明した。

1つ目はハードを作っているリアル企業、2つ目はデータやAI中心のサイバー系企業(GAFA)、3つ目はサイバーの心をもったリアル(テスラ、ウーバー、KIVAなど)だという。

「日本の企業は99%がリアルにいますが、サイバーの心をもったリアルによるリアル企業の破壊が起きています。リアル企業は、早急にサイバーの心をもったリアルに移行する必要があります。それがDXです。あるいは別会社をつくるかです。富士電機における富士通のようなものです。子会社をたくさん作れば、5社に1社くらいは当たると思います。それが大きくなったら移住すればいい。移住戦略です」(安宅氏)

日本人の働き方は?

最後のテーマは、日本人の働き方について。これついて安宅氏は、かなり思い切った見解を述べた。

「企業に縛られる時代は完全に終わったと思います。これまでは会社の給料が100%でしたが、今後は20-30%の時代になっていきます。残りは副業や自分の設立会社の収入が20-40%、投資運用益が20-40%になります。投資はSX(サステーナブルトランスフォーメーション)レディな企業がいいと思います。会社の給料以外の収入が増えるように、各企業は変わったほうがいいと思います。それをやっている企業がいい職場だと思います」(安宅氏)