カーシェアサービスの「Anyca」(エニカ)が2020年4月以降の利用状況を発表した。他人とのソーシャルディスタンスを保つことのできるクルマは、コロナ禍であらためて注目を集めている。そうした中、1台を多くの人で利用することになるカーシェアは、どのように受け止められているのだろうか。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大でカーシェア需要に変化は?

コロナ禍でもカーシェアの需要は右肩上がり

2020年9月でサービス開始から5周年を迎えた個人間カーシェアサービスのAnyca。運営するDeNA SOMPO Mobilityによると、現在の会員数は35万人超、登録車種数と登録台数は750車種1万6,000台を超えているという。クルマの受け渡しスポットは、東京23区内だけで4,200カ所以上(徒歩10分圏内に平均14カ所の計算)。乗りたいクルマを手軽に利用しやすい環境を整えたAnycaは、個人間カーシェアで国内最大手に成長している。

そんなAnycaの利用状況を見てみると、緊急事態宣言の発令下にあった4月と5月はそれぞれ、前年同月比(流通金額ベース)で43%、44%と大幅に低迷していたことがわかる。一方で、緊急事態宣言が解除された6月~8月は、全ての月で同120%以上の伸び率で需要が回復。また、新規会員数も6月こそ前2カ月の平均値に近い6,423人となったが、7月は1万5,788人、8月は2万1,724人と急激に増加している。

  • 4月と5月は需要が大きく落ち込んだものの、6月以降は反転して回復基調に

需要の回復についてDeNA SOMPO Mobility取締役の馬場光氏は「レンタカーと異なり、旅行先でクルマに乗るというよりも、なるべく家の近くから利用したいという方が多い」と背景を分析。続いて、「そうした時に、23区内であれば電車などを乗り継がなくても徒歩圏内に乗れるクルマがある」という同サービスの特徴が、利用者のニーズとマッチした結果との見方を示した。

同社がAnycaユーザーに実施したコロナの影響に関するアンケートによれば、「カーシェアに対して抵抗が少ない、もしくは全くない」と回答したオーナーの割合は5月が36%、6月が67%。また、Anycaを利用した理由として「他公共交通機関よりも感染リスクが低いと考えたから」という回答は61%にのぼったという。

  • Anycaユーザーへのアンケート結果。オーナーのカーシェアに対する抵抗感が減り、他の交通手段よりも感染リスクが少ないと考える利用者が増えている傾向にあることがわかる

このことも踏まえて馬場氏は、4月と5月のシェア数の減少は「緊急事態宣言下の外出自粛要請によるもの」であり、「適切な感染予防対策を実施しているクルマについては、他の公共交通機関よりも歓迎される傾向にある」と分析した。

現在、日本において個人と法人が所有する乗用車台数は約6,000万台。そのうち、カーシェア型レンタカー全体の登録台数は3.5万台となっており、今後はこのパーセンテージをいかに高めていけるかが課題になる。

そうした中でAnycaは、さらなる非対面化の実現に向けた取り組みを進めていくという。その1つがスマートキーデバイスの活用だ。スマートキーデバイスは取り付け工事もほとんど不要で車両に後付けが可能で、オーナーの負担は少ない。利用者はスマートフォンのアプリでクルマを開錠できる。すでに東京都内を中心とする約100台で実証実験を行っており、その有効性を確認した上で、来年度以降はAnyca登録車の多くに設置を目指していく方針だ。

馬場氏は同社の目標として、「定額支援プログラム」や「法人車両のカーシェア」、「0円マイカー」などの施策も強化していきながら、倍々での登録者数増加を目指していくとしている。“所有から利用へ”というクルマの新しいライフスタイルがどこまで広く浸透していくか。今後の動向に注目したい。