日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』(毎週金曜21:00~)が、85年に『金曜ロードショー』として現在の枠でスタートしてから、この10月で35周年を迎えた。
かつては民放各局で編成されていた映画枠だが、ゴールデン・プライム帯(GP帯、19~23時)で唯一続く同番組。「ずっと安泰ではなく、今もあがきながらやっています」と話す北條伸樹プロデューサーに取材すると、他局にはないキラーコンテンツの存在に加え、新たなツールや施策を積極的に導入する姿勢が見えてきた――。
■『トトロ』17回目でも高視聴率
『金曜ロードSHOW!』の強さの1つは、なんと言ってもジブリ映画だ。代表的な『となりのトトロ』は、これまで17回放送され、直近の8月14日の放送でも個人視聴率10.5%・世帯視聴率16.5%(ビデオリサーチ調べ・関東地区、以下同)と、高数字をマークした。
ジブリだけでなく、『名探偵コナン』シリーズにも「すごく助けられています」といい、「確実に結果を出してくれるキラーコンテンツが定期的に放送できるというのは、大きなアドバンテージになってると思います。本当にありがたいです」と感謝する。
他局にはないGP帯でのレギュラー映画枠を持つことで、ヒット映画の放送権の買い付けが有利に働くことも。「毎週放送しているというところで、(映画会社に)『金ローでやっていただけるのなら』と言ってもらえることもあります」と信頼され、視聴率が見込めるラインナップが組めるのだ。
■4月から映画の買い付けに本格活用
この視聴率に関しては、画期的なツールを導入。人工知能(AI)による視聴率予測システムを開発し、4月から本格的に映画の買い付けに活用している。これは、興行収入、客層、映画サイトのレビュー点数、配信の有無、放送時期、視聴率実績など、過去5年程度のさまざまなデータから数値を予測するもので、8カ月間にわたってトライアルを重ねた結果、誤差が平均1%未満になるまで精度が向上し、実用化に至った。
新型コロナウイルスによる外出自粛期間は2~3ポイント上振れるといううれしい誤算もあったが、引き続き高い精度で予測値を出しているそうだ。
一方で、AIに頼るだけでなく、番組ホームページで視聴者リクエストを受け付けるなど、求められるコンテンツを総合的に判断。また、俳優や監督など訃報があった際には追悼作品を放送するなど、「枠としてどの作品をかけるかは、柔軟に対応していきます」と話している。
このAIシステムは、『金曜ロードSHOW!』のために開発したもの。「映画の場合は分析できる要素が多いのですが、他のバラエティやドラマだと客観指標がないので、応用できる部分はあるかもしれませんが、システム化は現状では難しいと思います」という。
■コロナで急きょ作品差し替えも
コロナ禍で視聴率は上昇しており、4~8月平均で個人全体は、前年同期比0.8ポイント増の7.4%となった。特に若年層の数字が大幅にアップしており、「ステイホームで家族で見られる映画のニーズが高かったです」と振り返る。
この期間では、新作の劇場公開に合わせて放送を予定していた作品を、コロナで公開延期となったことを受け、急きょ差し替えることも。もともと決まっていた『美女と野獣』(4月24日放送)からの流れでファミリー視聴を意識し、5月1日に『塔の上のラプンツェル』(個人9.6%・世帯14.7%)、同8日に『トイ・ストーリー3』(個人8.2%・世帯12.6%)と、ディズニー映画を3週連続で放送した。
こうした急な作品選定においても、視聴率予測システムは威力を発揮しており、「いくつか候補作品がある中で、比較的いい数字が出ていたので、判断材料があると踏ん切りが付きます」と頼りに。
ちなみに、『塔の上のラプンツェル』はこれが4回目の放送だったが、「放送すればするほど、視聴率が上がるという魔法のような作品なんです(笑)」とのことだ。