ビジネスシーンでよく聞く「コンサルティング」という言葉ですが、自信を持って説明できる人はそう多くはないかもしれません。
本稿では、コンサルティングの基本的な意味や業界の分類、動向についてなどを解説します。コンサルタントに必要な資格やスキルについても掘り下げますので、ぜひご確認ください。
コンサルティングとは
コンサルティングとは、ある分野についての豊富な経験と深い知識をもとに、クライアントの課題を解決するための解決策を示し、企画の立案や実行などを手伝う業務のことを示します。
そもそも「consult」とは「相談する、意見を聞く」という意味の英語であり、語源はラテン語の「consulere(相談する)」だといわれています。「consulere」は「共に座る」という意味から成り立っているそうです。膝を突き合わせてじっくり話し合うという図が浮かんでくるようですね。
コンサルティングの主な業務内容について、もう少し掘り下げてみましょう。
情報を収集・整理し、課題解決策や戦略を提案
クライアントの課題を解決したり、事業を成長させるための戦略を練ったりするためには、まずは緻密なリサーチが必要です。市場調査や制約事項の洗い出しなどを行い、情報の取捨選択、整理をして解決策や戦略につなげます。
そもそもクライアントの課題を明らかにし、問題点を整理するということも必要とされるため、ヒアリングも重要です。
課題解決策や戦略を実行するために、具体的な計画を練り、マネジメントしながら伴走
解決策や戦略が固まったらそこで終わりではなく、多くの場合は、実際にそれらを実行するためにクライアントと伴走することも求められます。詳細のタスクやスケジュールなど具体的な計画に落とし込み、資源のアサインやマネジメント、進行管理などを行って、課題解決を目指します。
コンサルタントとの違い
コンサルティングと似た言葉に「コンサルタント」がありますが、こちらは「コンサルティング業務を行う人」を指しており、国内ではマッキンゼー・アンド・カンパニーやアクセンチュアなどの外資系ファームの進出を機に浸透してきました。
コンサルティングファームとは
コンサルティングファームとは、コンサルティングの事業そのものや、実施する企業を指した言葉です。「IT系」「シンクタンク系」など対象業界を定めて複数名のコンサルタントが所属しているような大手・中小規模のファームが数多く存在しています。また、それぞれの業界に特化したコンサルティングを武器とするコンサルティングファームも存在します。
コンサルティング業界や会社の動向
近年では戦略を重視したコンサルティングの需要が増加してきており、即戦力となるような知識豊富な人材や、経験豊富な人材はクライアントから重宝されています。
ひとえにコンサルティングといっても、その領域は複数に分かれています。中でも近年の成長が著しいITの領域においては、その専門性やニーズの高さから、コンサルティング業界での業務経験がない人もスキル次第で採用されるような傾向にあるようです。
そういった領域に興味がある方は、これまでの職歴や知識、および今後のキャリアを考えつつ、転職の一つの選択肢として考えてみてもいいでしょう。業界自体の雰囲気としても、転職人材は決して珍しくなく、人材のヘッドハンティングも日々行われています。
コンサルタントの年収
経験や知識、企業によっても異なりますが、コンサルタントは比較的年収が高い傾向にあり、20代にして1,000万円を超えることも珍しくありません。
中でも、外資系のコンサルタントは年収が高くなりやすい傾向にあります。実力が評価に比例する業界ですので、就業年数や学歴よりも成果やスキルを伴わせることで、大幅な年収アップも期待できるでしょう。
コンサルティングのために必要な資格やスキル
ここでは、コンサルティングを行うために必要とされる資格やスキルについて見ていきましょう。
代表的な資格
どの業界のコンサルタントになるか、どのような企業でコンサルティングを行うかで必要な資格や役立てられる資格は異なります。
ただ、必ずしも資格が必要というわけではありません。資格を持っている、ということよりも、むしろ企業や事業の課題を的確に洗い出し、それに対して有効な解決策や戦略を練る実力のほうが重要なケースが多いようです。前提として、しっかりと実績を上げ、企業に貢献できるのであれば必ずしも資格の有無は重要ではないと頭に置いておきましょう。
もし具体的に資格所得を目指す場合は、例えば、経済産業省の推進資格である「ITコーディネータ」の資格や、国家資格である「中小企業診断士」「社会保険労務士」「公認会計士」などの資格を取得できると心強いでしょう。経営学の大学院修士課程の修了者に与えられる修士号である、MBAの注目度も高まっています。そのほかにも、民間で行っている「証券アナリスト」や「PMP(プロジェクトマネジメントに関する国際資格)」など、さまざまな資格があります。
もちろん、どういった領域で働くかにより必要な資格は異なりますので、興味のある領域に役立ちそうな資格があるのかを確認しておくとよいでしょう。またコンサルティングをする上では、多種多様な業界のクライアントの立場になって、効率よく業務を進めていく必要があります。資格を取得して、業界への理解を深めることは自分のキャリアにもつながるでしょう。
さらに、クライアントから見ても「資格を持っている」という武器は「自分たちの業界において素人ではない」という証明になり、信頼関係の構築の一助にもなり得ます。
関わる業界や請け負うコンサルティング業によっても資格を重視するのかは異なってくるので、自身のキャリアの積み重ね方やコンサルティングファームの方針ごとに検討してみてください。
代表的なスキル
コンサルティングを行う上では、総合的なビジネススキルや領域に応じた専門スキルが必要となりますが、中でも重要視されるといわれているのがロジカルシンキング能力やコミュニケーション能力、そしてプロフェッショナルとして仕事をやりきる力です。
情報を収集、整理し、仮説検証を繰り返した上で最善の解決策や戦略を構築するには、論理的に物事をとらえて組み立てるロジカルシンキング能力が大切となるのです。クライアントからヒアリングを行って課題を明確化したり、多くの関係者をマネジメントしたりするためにはコミュニケーション能力も欠かせません。そして目に見える「モノ」ではなく「コンサルティング」そのものを提供する以上、常にクライアントの想像を超えるアウトプットを提供しながらプロジェクトを遂行し、成功に導くプロフェッショナルとしての責任感が必要となります。
コンサルティングファームの分類
前述しているようにコンサルティングファームは、大きくいくつかの分類に分かれます。同じコンサルタントでも、求められる要素や必要な知識は異なります。それぞれの特徴を知っておきましょう。
具体的には、どのようなコンサルティングファームがあるのでしょうか。代表的なものを紹介します。
戦略系コンサルティングファーム
外資系のコンサルティングを中心に行っており、グローバル展開されることが多いのが特徴です。
代表的な企業に「マッキンゼー・アンド・カンパニー」などがあります。同社は、経営コンサルティングの世界で初めて、科学的かつ論理的な問題解決の方法論を確立したファームとも言われています。
IT系コンサルティングファーム
クライアント企業の課題を見つけて、解決できるシステムを設計していく職業です。
近年のIT技術の進化に伴い、IT系コンサルタントの需要は高まっています。長期にわたってIT業界で働きたい人や業界の発展を先端で追い続けたい人にはもってこいな環境と言えるでしょう。
金融系コンサルティングファーム
資金調達などの事業戦略をクライアントに提案します。金融系の専門地市域があることは前提ですが、プラスで国際情勢や金融情勢にも意識を向けることが大切とされています。
シンクタンク系コンサルティングファーム
クライアントからの調査案件や官公庁向けのリサーチが主な仕事内容となります。
金融機関や大手の企業が母体となっていることが多く、組織のつながりを利用してバックアップしてもらえることが多いです。
例えば2007年に富士通内部のコンサルティング部門を統合し事業を拡大した「富士通総研」は、以前から富士通が持つ情報通信システムで蓄積されたノウハウに強みを持つコンサルティングファームです。
総合系コンサルティングファーム
総合系コンサルティングはトップ企業から中小企業まですべてのコンサルティングを行う職種です。幅広いテーマや業界に精通することが求められ、経営課題や戦略策定、システム導入まで請け負うこともあります。
まとめ
以上、「コンサルティング」、および似た言葉の「コンサルタント」や「コンサルティングファーム」について紹介しました。本稿を参考に、それぞれの言葉の意味合いを理解し、役立てていただけると幸いです。