フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』の前チーフプロデューサー・張江泰之氏。昨年6月末に同局を退社して動画制作会社「Hariver」を立ち上げ、様々なYouTube動画をプロデュースしているが、その中でも注目なのが、あの北九州連続監禁殺人事件の犯人の息子による『松永太の息子』チャンネルだ。
“人殺しの息子”という運命を背負った彼が、動画で発信する狙いとは――。
■有名タレント続々参入の中で奮闘
張江氏は、中井貴一のものまね芸人・きくりんや、自らシングルマザーの道を選んだ23歳の元タレントの卵・りぃにゅん、外国人向けに東京をリポートするAki Teriyakiなど、様々なジャンルでYouTubeチャンネルをプロデュース。しかし、コロナ禍によってテレビで活躍する第一線のタレントたちが、続々とYouTubeチャンネルを立ち上げている。
巣ごもりでスマホでの動画視聴が増えている追い風を実感しつつも、次々に黒船が押し寄せるこの状況に、「それは大変ですよ。一般人がYouTuberとして成功するのは、本当にハードルが高いんです。有名タレントなら一気に人気が集まりますが、1,000人以上の登録者数は、上位11%と言われている世界ですからね」と本音を吐露。
その中でも、「みんなめげずに頑張ってやり続けてくれて、収益も付くようになってきました」と、軌道に乗るチャンネルも生まれてきた。
■「君は世界に1人しかいない」
そんな張江氏がプロデュースを手がけるチャンネルの中でも異彩を放っているのが、2002年に発覚した北九州連続監禁殺人事件の犯人の息子による『松永太の息子』チャンネルだ。
北九州連続監禁殺人事件は、メディアが報道を差し控えたほどの残虐な方法で、犯人の親族ら7人が殺害されたもの。犯人である松永太死刑囚と緒方純子受刑者の息子は、『ザ・ノンフィクション』で17年に放送された『人殺しの息子と呼ばれて…』で、張江氏のインタビューに応じた。
これがメディアによる初めてのインタビューで、幼いながらの記憶で目撃した事件の真相や、自らが受けた両親からの虐待までを明かした。“人殺しの息子”が背負った悲しい過去の勇気ある告白に大きな反響が集まり、昼帯の放送にもかかわらず、世帯視聴率10.0%(17年10月22日、ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録している。
この縁で、張江氏がフジテレビ退社後に立ち上げた『BUZZドキュ』チャンネルで、息子は再びインタビューに応じ、『ザ・ノンフィクション』放送後のネット上の反響に対しての見解や、心境の変化、両親に対する気持ちなどを語っていた。
その後、張江氏が息子に「君は世界に1人しかいないわけだから、世間の反発はあるかもしれないけど、正々堂々とやってみるのはどうか」と提案し、『BUZZドキュ』のチャンネル名を『松永太の息子』に変更。本人のパーソナリティを前面に打ち出し、「宿命と闘う僕の生き様や趣味について発信」(チャンネル説明より)している。