2週間前にJT杯で永瀬王座に破られていた先手中飛車を再登板させ、新工夫を見せる

永瀬拓矢王座に久保利明九段が挑戦する将棋のタイトル戦、第68期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社)の第2局が9月9日に京都府「ウェスティン都ホテル京都」で行われました。結果は127手で久保九段の勝利。対戦成績を1勝1敗のタイとしました。

9月3日に行われた第1局は後手番の久保九段が四間飛車に振り、永瀬王座が居飛車穴熊で対抗しました。巧みな手順で手得を果たした永瀬王座がリードを奪い、穴熊の堅さを生かして押し切って勝利を収めました。

それから1週間もしないうちに行われた第2局。負けるとあっという間にカド番になってしまう久保九段は先手中飛車を採用しました。実のところ、筆者は先手中飛車はこのシリーズ登場しないのかなと考えていました。それは8月29日に行われた、将棋日本シリーズJTプロ公式戦▲久保九段-△永瀬二冠戦の印象が強かったからです。この時も久保九段は先手中飛車を採用。相穴熊の将棋となり、久保九段側にチャンスらしいチャンスもなく、永瀬二冠が快勝したのでした。

ところが、久保九段は先手中飛車を再登板させました。当然、新工夫があるはず。それは序盤早々に明らかになりました。永瀬王座が再び穴熊に組もうとすると、久保九段は玉を囲う前に▲3六歩~▲4六歩と突いて牽制します。急戦策を見せられた永瀬王座は穴熊を断念して、棒銀に切り替えました。

久保九段は永瀬王座の攻めに乗じて角を大きく使い、馬を作ることに成功。この馬と、自陣の飛車とで上下から永瀬陣の攻略を図ります。永瀬王座も棒銀を繰り出して6~8筋を突破しましたが、これは久保九段の狙い通りでした。自陣左辺を焦土化し、駒を右辺に集める振り飛車のお手本のような指し回し。「さばきのアーテイスト」の異名を持つ久保九段らしさが存分に発揮されています。

さらに、歩を用いた攻めも見事でした。歩を効果的に使い、みるみる永瀬陣は弱体化。守りの金2枚がどんどん永瀬玉から遠ざかっていきました。

永瀬王座は1筋の端攻めに活路を見出そうとしますが、久保九段はしっかりと対処し、優位を維持。粘りに粘る永瀬王座を振り切り、最後は永瀬玉を詰まし上げて勝利を収めました。

これで両者1勝1敗のタイになりました。勝った方がタイトルに大きく近づく第3局は9月24日に宮城県「仙台ロイヤルパークホテル」で行われます。

終局後の様子。久保九段(左)は大きなシリーズ初勝利をつかんだ(提供:日本将棋連盟)
終局後の様子。久保九段(左)は大きなシリーズ初勝利をつかんだ(提供:日本将棋連盟)