豊島竜王が果敢に速攻を仕掛けて快勝。永瀬叡王に粘り与えず

永瀬拓矢叡王に豊島将之竜王が挑戦する将棋のタイトル戦、第5期叡王戦七番勝負(主催:ドワンゴ)の第8局が9月6日に神奈川県「元湯陣屋」で行われました。結果は75手で豊島竜王が勝利し、対戦成績を3勝3敗2持将棋としました。

第1局は千日手、第2・3局は持将棋となり、異例の長丁場となっている今期の叡王戦。永瀬叡王が3勝2敗2持将棋でリードして第8局を迎えました。

七番勝負にも関わらず第8局が行われているのは、タイトル戦の場合、持将棋は1局として数えられるためです。タイトル戦以外の対局では、持将棋局は指し直し局とセットで通算成績に1局としてカウントされます。つまり通算成績に持将棋の記載がある棋士は、少なくともタイトル戦に登場したことのある棋士ということです。なお、千日手の場合は全ての対局において千日手局と指し直し局2つで1局として扱われます。

角換わりの将棋となった本局は、先手の豊島竜王が23手目に仕掛けるという速攻策を採りました。3筋を突き捨て、桂をポンと跳ね出します。豊島竜王としては、攻めが途切れたら即ち負けという、後には引けない戦いになりました。

大駒を切り合う激しい戦いがひと段落した局面で、豊島竜王の手は意外なところに伸びました。持ち駒の金を端に打つ▲1二金。一見重たい手ですが、相手の銀桂を着実に取ろうという好手でした。銀桂を取っている間に、永瀬叡王側に厳しい手がないと見越しています。

そうは言っても受ける手もない永瀬叡王は、攻め合いに出ました。桂を入手しつつと金を作り、桂を打って豊島玉に迫ります。豊島竜王も金取りに桂を打って、永瀬玉を寄せる準備を進めます。先に詰めろがかかったのは豊島玉でしたが、冷静な玉かわしが決め手でした。永瀬叡王がさらに豊島玉に迫るためには、桂を渡さなけばなりません。ところが桂を渡してしまうと、永瀬玉が詰んでしまうのです。

永瀬叡王は33分考えて、桂を渡す攻めを決断。前述の通り、この攻めでは永瀬叡王の負けです。この33分間は勝つための手段を探すというより、心の整理をしていたのでしょう。そこから数手進め、豊島玉に詰めろをかけたところで自玉が詰まされて投了となりました。

序盤早々に仕掛けてから終始完璧な指し回しを見せた豊島竜王は、シリーズ成績を3勝3敗2持将棋とし、永瀬叡王に追いつきました。番勝負で第9局が行われるのは史上初。運命の一局は持ち時間6時間で9月21日に東京・将棋会館で行われます。

この第9局は特別ルールが採用されており、千日手の指し直し局も、持将棋になった際の第10局も即日行われることになっています。つまり必ず21日(日付が変わって22日かもしれませんが)に決着がつくのです。ここまで死闘を繰り広げてきた両者の対決は、最後にどのような結末となるのか。大注目です。

完勝で第9局を手繰り寄せた豊島竜王(提供:日本将棋連盟)
完勝で第9局を手繰り寄せた豊島竜王(提供:日本将棋連盟)