普段の会話などではあまり使うことはありませんが、ビジネス文書やお礼の手紙など、かしこまった文書を出す場合においては季節の挨拶が重要です。
9月は長月(ながつき)と呼ばれます。暦の上では毎年9月7日頃に「白露」を迎え、9月23日頃の「秋分」となってようやく秋の深まりを感じられる時期となり、上旬とは風景や気温も変わります。
季節の挨拶は、同じ9月でも、時期や挨拶を送る相手によって使用する文言が異なります。
本記事では、9月にふさわしい時候の挨拶をピックアップ。文書の冒頭で使える時候の挨拶や例文、結びで使える挨拶を、ビジネス/カジュアルシーンごとに紹介。9月の季語も見ていきましょう。
季節の挨拶文(時候の挨拶文)の基本の書き方・構成
「季節の挨拶」は「時候の挨拶」と形容されることもあります。四季折々の季節感を重んじる日本において、手紙やはがき、書面などの冒頭に用いる挨拶文のことを「季節の挨拶」「時候の挨拶」と呼びます。
[ビジネス]季節の挨拶文の基本の書き方
ビジネスシーンでのメールや目上の人への手紙では、一般的に「◯◯の候」などの漢語調の挨拶が使われます。少し硬い表現にあたりますが丁寧な印象となるため、気を遣わなければならない相手やかしこまった内容の手紙やメールで使うようにしましょう。
季節の挨拶は、通常「頭語」の後に書きます。「頭語」とは「拝啓」など文章の書き出しのことで、頭語を使う場合、必ず文末には「敬具」などの「結語」で文章を結びます。
以下が書き出す際の順番です。
- 頭語(拝啓など)
- 時候・季節の挨拶
- 主文
- 結びの言葉
- 結語(敬具など)
[カジュアル]季節の挨拶文の基本の書き方
古くからの友人やかつての恩師らへの手紙では、口語調が使われるのが一般的です。口語調の表現はとてもわかりやすく、親しみを感じさせてくれるので、家族や親しい友人などへの手紙に適しています。
「拝啓」「敬具」と書くと文書が堅苦しく感じられることもあるので、親しい間柄の人へ向けたメールや手紙では、頭語・結語を省略して季節の挨拶から書き出すケースもあります。
以下が書き出す際の順番です。
- 時候(季節)の挨拶
- 主文
- 結びの言葉
9月の季語一覧
季節・時候の挨拶を送る際、本文にその月を表す季語を入れましょう。
9月の「中秋の名月」や「葡萄」「初紅葉」「世阿弥忌(ぜあみき)」なども季語に含まれます。こういった季語を使うと、9月の雰囲気が感じられますね。
植物 | 秋薔薇・秋桜(こすもす)・曼珠沙華 |
---|---|
生き物 | 秋刀魚・秋鮭・鈴虫 |
風物詩 | 風の盆・秋場所・台風・月見 |
[ビジネス]9月の季節の挨拶(書き出し) - 漢語調(改まった文書や目上の人用)
ここからは、実際にビジネスメールなどで使える例文を交えながら、9月にふさわしい季節の挨拶をご紹介します。
前述のように、ビジネスメールやかしこまった文書では、漢語調を使うことが多いです。
漢語調の季節の挨拶は上旬・中旬・下旬など、月のいつの時期かによっても使う言葉が異なります。9月のそれぞれの時期別に季節の挨拶をまとめました。
9月全般(上旬・中旬・下旬)に使える挨拶と例文 - 1日~月末
野分の候(のわきのこう)
9月の上旬から下旬まで、ほぼ全般にわたって使えるのが「野分の候(のわきのこう)」です。
野分というのは台風のことで、立秋から数えて210日(9月1日頃)から220日(9月10日頃)が野分の季節と言われていました。しかし現在では、9月末になっても台風がくることから、9月全般で使われるようになっています。
【例文】
拝啓 野分の候、貴社益々ご健勝のこととお慶び申し上げます
9月上旬に使える挨拶と例文
新秋の候(しんしゅうのこう)
「新秋(しんしゅう)」は秋のはじまりという意味の言葉です。また、旧暦7月を指す言葉でもあります。
旧暦7月は今でいう8月15日頃~9月15日頃のことですが、現代では8月はまだ夏まっさかりと感じる方も多いです。今の環境に合わせ、秋の訪れを感じ始める9月の上旬頃に使うのがいいでしょう。
拝啓 新秋の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます
初秋の候(しょしゅうのこう)
「初秋(しょしゅう)」もまた秋のはじまりを指す言葉です。こちらも新秋と同じ旧暦7月を指しています。
拝啓 初秋の候、貴社におかれましては、益々ご発展の段、大慶に存じ上げます
9月中旬に使える挨拶と例文
白露の候(はくろのこう)
「白露(はくろ)」とは大気が冷え、草木に露が見えるようになる様子を表した言葉です。二十四節気の一つで、今の暦だと9月7日頃を指します。
夏の暑さがおさまり、ようやく秋めいてきた頃に使いたい挨拶です。白露を指す毎年9月7日頃から、9月23日頃の秋分までの間に使うのがいいでしょう。
拝啓 白露の候、貴社益々ご隆昌のこととお慶び申し上げます
仲秋の候(ちゅうしゅうのこう)
「仲秋(ちゅうしゅう)」は旧暦の秋を7月・8月・9月の3つに分けたうちの中頃、つまり8月を表しています。白露(9月7日頃)から寒露の前日(10月7日頃)まで使うことができます。
拝啓 仲秋の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます
9月下旬・10月上旬に使える挨拶と例文
秋晴の候(しゅうせいのこう)
「秋晴(しゅうせい・あきばれ)」とは秋の澄み渡った青空を表現した言葉です。
秋の季語でもあります。秋のはじまりから終わりにかけて使うことができる言葉ですが、雨が続いている場合などは「秋雨」など他の適切な言葉を選びましょう。
拝啓 秋晴の候、平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます
秋分の候(しゅうぶんのこう)
「秋分」とは二十四節気の一つで、毎年9月23日頃になります。
昼と夜の長さがほぼ等しくなり、この日以降は夜が長くなっていきます。秋分から寒露の前日(10月7日頃)まで使うことができます。
秋分の候、貴社におかれましては、益々健勝にお過ごしのことと存じます
[ビジネス]9月にふさわしい結びの言葉
漢語調の場合、結びの文に季節的な要素を入れなくても問題はありませんが、9月にあった結び文を入れることで、より季節感のある文書となります。
9月にふさわしい結びの例をご紹介しましょう。
季節に関する結び
・実り多い秋となりますよう、お祈り申し上げます
健康に関する結び
・季節の変わり目、皆様のご健康をお祈りしております
[カジュアル]9月の季節の挨拶 - 口語調(やわらかい表現、学校のおたよりや親しい人用)
それでは次に、カジュアルなシーンに用いる口語調の季節の挨拶について、時期ごとに見ていきましょう。
漢語調に比べて自由度が高いので、送る相手や状況に合わせて内容をアレンジしてもいいでしょう。
9月全般の挨拶と例文
・拝啓 夏休みも終わり、静かな時をお過ごしのことと思います
9月は夏から秋に変わる季節です。移り変わる季節にあわせた挨拶をすることで、相手に気持ちが伝わるメールになるでしょう。秋の楽しみや涼やかな雰囲気を共有できる挨拶にするのがおすすめです。
9月上旬の挨拶と例文
・初秋とはいえ暑い日が続きます。皆様におかれましてはお元気でお過ごしのことと存じます
・朝夕の秋風が心地よく、過ごしやすい時節となりました
9月中旬の挨拶と例文
・澄んだ夜空に浮かぶ月が美しい季節ですね
9月下旬の挨拶と例文
・秋分を過ぎ、秋の涼しさが感じられる季節となりました
[カジュアル]9月にふさわしい結びの言葉
口語調の文書に合う、9月にふさわしい結びの言葉をご紹介します。
季節に関する結び
・日一日と秋めいてまいります。移りゆく季節をお楽しみください
健康に関する結び
・朝夕の冷え込みが増してくるこの季節、お体にお気をつけくださいませ
[番外編]9月に送る、コロナ禍における手紙・メールの文例
ようやく落ち着きを見せてきた、2020年頃より世界中で蔓延した新型コロナウイルス感染症。
2023年5月には感染症法上の位置づけの「5類」に移行したこともあり、コロナ禍についてわざわざ言及する必要はないでしょう。
しかし相手の体を気遣う言葉として、文頭や結びの言葉で軽く触れる程度ならばいいかもしれません。
【例文】
拝啓 秋分の候、貴社におかれましては益々ご活躍のことと、お慶び申し上げます。
さて…(主文)
朝夕の冷え込みが増してくるこの季節、風邪やコロナなどを召されませんように、皆さまのご健康と、益々のご繁栄を心よりお祈り申し上げます。
9月らしい季節の言葉を入れたはがきやお礼状などを送りましょう
9月に送るおたよりには健康を気遣う言葉を入れたり、9月らしい季節の移り変わりを感じさせる言葉を入れたりしたいもの。
お月見、秋晴れ、秋の味覚など、9月をイメージさせる美しい言葉はたくさんあるので、文章に上手に取り入れましょう。季節感のある手紙で、相手を思いやる気持ちが伝えられたらいいですね。