8月30日、ウォーレン・バフェット氏(以下、バフェット氏)が90歳の誕生日を迎えました。
同氏は世界中で注目されている有名投資家であり、慈善家の一面も持ちます。投資会社バークシャー・ハザウェイのCEOであるバフェット氏は、長期的な視野に立った投資戦略で、多くの財産を築いてきました。
今回は、そんなバフェット氏の人物像と投資戦略についてくわしく解説します。彼の考え方をより理解するため、彼の名言やおすすめの本もセレクトしました。
ウォーレン・バフェット氏の資産・人物像
ウォーレン・バフェット氏は、投資家としてだけではなく、人格的にも尊敬される人柄で、多くの名言でも知られています。そんなバフェット氏の魅力を知るために、まずは同氏の人物像についてまとめました。
「オマハの賢人」とも呼ばれる世界的な投資家
バフェット氏は、一代で840億ドル(日本円換算 : 8.8兆円以上)もの資産を築き上げた、世界有数の投資家です。長期投資を基本とした投資戦略が有名で、多くの投資家から動向を注目されています。
「オマハ」とはネブラスカ州に存在するバフェット氏の生まれ故郷であり、オマハが生んだ偉人として敬愛されて「Sage of Omaha(オマハの賢人)」と呼ばれるようになりました。
ウォーレン・バフェット氏が「賢人」と呼ばれるワケ
投資家のバフェット氏が賢人と呼ばれるには理由があります。
その理由は、同氏の人格にあります。バフェット氏は、自ら稼ぎ出した資産の大半を、懇意にしているビル・ゲイツ氏の「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」に寄付しています。
稼いだお金を社会に還元して正しく使う、という彼の言動は、投資家という枠を超え、多くの人の尊敬を集めています。
10代で投資への造詣を深める
1930年(昭和5年)、バフェット氏はネブラスカ州オマハで生まれました。当時、父親が証券会社に勤めていたこともあり、バフェット氏は子どものころから投資に接する環境があったのだといいます。最初の投資経験は、同氏が11歳のころでした。
子どものころから探求心が強かったバフェット氏は、図書館で金融関連の本を「すべて読破した」とも語るほど、勉強熱心でした。その後バフェット氏は、同氏の尊敬する投資家であるベン・グリアム氏が教鞭をとっていたコロンビア大学のビジネススクールに入学しました。
バークシャー・ハザウェイのCEOになるまで
1969年、バフェット氏はバークシャー・ハザウェイの会長兼CEOに就任しました。
同社はもともと紡績業を営む会社でした。バフェット氏は、その会社の価値が市場で低く評価されていることに目を付け、同社の株を買い続け、1964年に支配権を獲得。会長兼CEOに就任したのは、その5年後のことでした。
その後、バフェット氏は同社のコア事業であった紡績業を残しつつ、新たに「投資事業」を開始。1965年から2008年までの期間に純資産を平均で20% 以上で伸ばし続け、世界有数の機関投資家として名をはせる存在となりました。
現在の総資産と保有株は?
さて、輝かしい業績を残し、30代にはすでに100万ドルもの資産を積み上げていたバフェット氏ですが、現在の総資産のほとんどは、50代以降に築いていると言われています。
なぜ同氏は50代以降に急激に資産を増やすことができたのか。その理由は、バフェット氏の投資戦略にあります。そもそも、同氏の投資の基本方針は長期投資。自分の理解できない事業には一切投資せず、投資先のことを理解する努力を惜しみません。
バフェット氏の主な保有株として知られているのは、Appleやコカ・コーラ、 バンク・オブ・アメリカなど。どれも長期的な成長性が期待できる会社の株式ばかりです。“社会の経済や政治の動きに大きく左右されない事業を選び、その会社が成長するまでじっくりと待つ”というのがバフェット氏流の投資術なのです。
もっと詳しく : 投資の神様「ウォーレン・バフェット」が実際に保有している銘柄とは?
ウォーレン・バフェット氏の投資戦略
バフェット氏の投資戦略はとてもシンプルなものです。同氏は普段、どのような考えで投資をしているのでしょうか。書籍やメディアなどで語られている内容を元に、6つのポイントにまとめて解説します。
基本は長期投資
投資のスタイルは大きく、2つにわけられます。投資先の値動きを見て短い期間で売買を繰り返す「短期投資」と、投資先の成長性に投資し、じっくりと保有して値上がりを待つ「長期投資」です。
先述したように、バフェット氏は後者の長期投資を専門とし、投資先を徹底的に調査した上で投資し、その後はずっと成長性を信じて株式を保有し続ける――というスタイルを貫いています。
人が投資を控えているときに投資
バフェット氏は、人が投資を控えているときにこそ、積極的に行動を起こします。
市場の上げ下げに振り回されず、投資先の「価値」を見極めて自らがオーナーになる気持ちで投資することが重要です。そのような姿勢で投資をしていると、自然と人とは動きが逆方向になるのだとか。
また、有事のときは、投資を手控えていったん保有株式を売却する動きに。また、このときに売られた株式を購入できるよう、平時から現金を手元に用意しておくことも重要だ、とバフェット氏は考えています。
詳しくは後述しますが、2020年のコロナ禍においては、同氏が保有していた航空株をすべて売却したことも話題になりました。
収益を次の事業成長に再投資している会社に投資
バフェット氏は特に、配当率の高い会社を評価しています。また、積極的に事業成長への投資を行う会社も高く評価しています。
理解できる事業を展開している会社に投資
バフェット氏は、自分が理解でき、徹底的に調査して納得できる事業に投資します。逆に、自分で理解できない事業には一切投資しません。
投資対象とするには、長期での競争優位性がある事業かどうかを検討します。特定の分野がにわかに注目を集めて多くの会社が乱立しても、その中で勝者となる企業が見えてきて、長期的に優位性を保てると判断してから投資するとのこと。
ニーズは多いが魅力的には見えない会社に投資
バフェット氏自身は、革新的なものを好みますが、投資する場合は目先の斬新さを追いません。
この行動の根底には、10年単位で長期的な優位性を保つ会社は、地味に見える裏側で大きな努力をしていて、簡単には競合に追い抜かれない、という同氏の考えがあります。バフェット氏は、徹底的な調査で地味な会社の「強み」を見出して投資を決めるのです。
会社を所有する覚悟で株式を購入
「自分がこの会社のオーナーになりたい、と思える会社に投資する」とバフェット氏は話しています。
バフェット氏の投資は、投資先の長期的な優位性を信じて長期間保有するスタイル。長い間の付き合いになるため、株式を購入すると決めたら、基本的には、その会社を保有する覚悟で株式をホールドし続けます。