ブシロードは8月26日、「ブシロードグループDX発表会」を開催した。

  • 左から声優・美波わかな、ブシロード代表取締役社長・橋本義賢氏、リンガ・フランカ代表取締役・新福恭平氏、ソーシャルインフォ代表取締役社長・根本雄貴氏

本発表会は、各メディアや証券アナリストらを呼び込んだほか、Zoomウェビナーでの中継配信も行われた。発表は大きくわけて4つ。「ソーシャルインフォの取得」、「リンガ・フランカとの提携」、「MOG部門の成長」、「各事業部門のDX推進事例」について説明された。

登壇者はブシロード代表取締役社長の橋本義賢氏、ソーシャルインフォ代表取締役社長の根本雄貴氏、リンガ・フランカ代表取締役の新福恭平氏。また、MCは響所属の声優・美波わかなが担当した。

まず橋本氏は、本発表会を開催した経緯について、カードゲームの会社からスタートしたブシロードは、現在は新日本プロレスや『バンドリ!』プロジェクトをはじめとしたコンテンツから、オフライン重視型の会社という印象を持たれているのでは、と語る。そして、ブシロードなりのDX(デジタルトランスフォーメーション)について説明し、印象を変えていけたらとコメントした。

●ソーシャルインフォの取得

「ソーシャルゲームインフォ」や「アニメレコーダー」といった媒体を展開するソーシャルインフォ。これまではコロプラが100%株式を保有していたが、9月1日付で、ブシロードが100%の株式を取得するとのこと。そして、本資本提携により、ソーシャルインフォを連結子会社にすると発表した。

自ら媒体を持つことで、オンラインの宣言機能を拡充。ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、デジタル領域のより一層の強化を図り、ブシロードムーブにて提供する他社IPプロモーション事業における取り扱い媒体の強化を狙っているとのこと。

ソーシャルインフォの代表取締役社長には、ブシロードより根本雄貴氏が就任。根本氏は新卒にてブシロードに入社し5年目。現在は『バンドリ!』プロジェクトのプロデューサーを務めている。ソーシャルインフォの社長就任後もプロデューサーは続けるとのこと。なお、「ソーシャルゲームインフォ」や「アニメレコーダー」といった媒体は、あくまでも中立性を重視し、『バンドリ!』などブシロードコンテンツよりの媒体になるわけではないと説明した。

●リンガ・フランカとの提携

リンガ・フランカは電子コミックサイト「マンガドア」を運営する会社。ブシロードは5月29日にリンガ・フランカとの資本提携を発表し、6月1日には株式を取得し、持分法適用関連会社化。

ブシロードは現在『月刊ブシロード』など紙の雑誌を出版しているが、業界的に売上が伸びているのは電子だと開設。そのため、漫画アプリ「マンガドア」を活用し、電子コミックや、現在『バンドリ!』でも展開中のボイスコミックなどを自社IPで展開するとのこと。また、コミカライズだけではなく、ブシロードメディアにおいても、電子コミック形態での新コンテンツの創出に注力するという。

さらに、メディアミックス機能を拡充し、重点領域であるデジタル領域の一層の強化を図り、リンガ・フランカの親会社であるIGポートとも強調し、ブシロードのIPディベロッパー戦略・エンターテインメントを発展させる狙いもあるとのこと。

ここで、リンガ・フランカ代表取締役の新福恭平氏が登壇。マッグガーデンでの編集歴や、『魔法使いの嫁』の立ち上げやアニメのプロデュースなど、これまでの経歴や今後の展望を語った。

●MOG部門の成長

ここでは、ブシモが展開しているMOG(モバイルオンラインゲーム)部門の年度別売上高を報告。前期は『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』、『ヴァンガード ZERO』、『ロストディケイド』をリリースしており、現状において、既存・新規アプリともに堅調な推移を見せており、売上高・構成比率ともに上昇傾向にあるという。現在の期では『アサルトリリィ Last Bullet』、『D4DJ Groovy Mix』、『アルゴナビス from BanG Dream! AAside』のリリースを控えており、さらに上昇する見込みとのこと。

●各事業部門のDX推進事例

まずブシロードグループの事業部について説明。大きく分けて「デジタルIP事業」、「ライブIP事業」の2つの軸で展開。「デジタルIP事業」には「TCG部門」、「MOG部門」、「MD部門」、「メディア部門」。「ライブIP事業」には「音楽部門」と「スポーツ部門」が存在している。

「デジタルIP事業」から「TCG部門」については、やはりトレーディングカードゲームはアナログで対戦するという文化が根強いが、現状の新型コロナウイルスの拡大などでそれも難しい状況となっている。そのため、リモートファイトの舞台として「遠隔対戦環境の整備」を整えたという。ディスコードにてプラットフォームを用意し、アナログのカードをカメラで用意し、世界中とマッチングし、対戦できる環境を整備。これらは日本はもちろん海外でも好評とのこと。

「MD部門」では、「いろどり芸能郵便社」としてVtuber事務所を設立。現在はオーディションの真っ最中。なお、Vtuber界隈では後発なので、ブシロードならではの特色を出すと発表した。既存のVtuberは中身の人間性を売りにしていることが多いと説明し、ブシロードのVtuberはキャラクター性を重視し、「いろどり芸能郵便社」という事務所を設立。世界観や設定を持たせ、キャラ押しで育てていくそうだ。

「ライブIP事業」から「音楽部門」については、「無キャン各イベントからハイブリッドイベントへ」の変革を語る。

先日行われた、舞台『We are RAISE A SUILEN~BanG Dream! The Stage~』を例に出し、「席数を制限した有観客での全9回公演(現地で鑑賞)」、「定点カメラによるインターネット同時配信(自宅で鑑賞可能)」、「千秋楽公演でライブビューイングを実施(映画館で鑑賞)」、「ライブビューイングをアーカイブ配信(自宅で鑑賞可能)」といった具合に、様々な鑑賞方法を提供することで、鑑賞機会や回数が増加し、収益モデルが変化したことを挙げている。さらに、その後パッケージ化することも視野に入れている。

そのほか、キャストによるトークバラエティや、ユーザーと同じ時間を共有しながら振り返る上映会形式、サウンドオンリーライブなど、『バンドリ!』『D4DJ』『アルゴナビス』といった各IPでの配信体制を強化していることも発表。ほぼ毎日のように、ブシロードIPの生放送を中心とした配信を実施することで、外出を控える環境においてでも、ファンの興味を強く惹き付ける情報発信が可能となっている。

「スポーツ部門」では、選手による生配信のトークショー、過去の試合の解説、蔵出し映像の公開など、動画配信サービス「新日本プロレスワールド」のコンテンツを充実化。6月には無観客興行を再開し、7月には厳重な対策を行い、席数を制限した有観客での興行を再開した。さらに、8月29日には明治神宮野球場での興行を開催予定だ。

最後に橋本氏は、リアルイベントは継続しつつDXも進めていくと今後の展開について語る。オンラインもオフラインも組み合わせて、これまで以上に、デジタル分野も拡充できる戦略を、と語った。