東京2020組織委員会は3日、2021年に延期された東京2020パラリンピック競技大会の新たな競技スケジュールを発表した。原則として、2020年の競技スケジュールを(曜日を合わせて)2021年にスライドする形となっている。同日、都内ではリモートで記者会見を実施。ゲストで登壇したテコンドーの田中光哉選手が、現在の心境などを語っている。

  • 東京2020パラリンピックの競技スケジュールが発表へ

    東京2020パラリンピックの競技スケジュールが決定した

パラリンピックのスケジュール概要

まず、スポーツディレクターの室伏広治氏がスケジュールを発表した。東京2020パラリンピック競技大会は、開会式(2021年8月24日)の翌日から9月5日の閉幕までの12日間、22競技539種目が21競技会場にて行われる。大会の盛り上がりが続くよう、人気競技をバランスよく配置したという。全300セッションのうち、メダルイベントが含まれるセッション数は109。家族で観戦しやすい時間設定で、22競技のうち18競技は22時以前に最後のセッションが終了する。

  • 競技スケジュールカレンダー

    競技スケジュールカレンダー

登壇した、ゲームズ・デリバリー・オフィサーの中村英正氏は「競技スケジュールが決まる、ということはアスリートにとって大きなステップ。引き続き、安心・安全に大会が運営できるように準備を進めていきたい」と説明。

また、パラリンピック・ゲームズ・オフィサーの中南久志氏は「パラリンピックでは勇気、強い意志、インスピレーション、公平という4つの価値を大事にしている。大会の1年延期が決まり、アスリートも戸惑ったかも知れません。この度、大会の骨格が明確になったので、アスリートも持ち前の強い意志を発揮し、観る者をインスパイアしてくれるとワクワクしています。来年の夏、パラリンピアンが真に輝く大会を実現することが、人間の挫けぬ力を示し、世界に希望を灯す機会になることを期待しています」と語った。

  • ゲームズ・デリバリー・オフィサー(GDO)の中村英正氏(左)、パラリンピック・ゲームズ・オフィサー(PGO)の中南久志氏(右)

    ゲームズ・デリバリー・オフィサー(GDO)の中村英正氏(左)、パラリンピック・ゲームズ・オフィサー(PGO)の中南久志氏(右)

この後、テコンドーでパラリンピックの出場権を獲得している田中光哉選手がリモートで出演。「大会のスケジュールが決まったことで、改めて、自分の中でも照準が明確に定まりました。それに向けてこの1年、どうスケジュールを組んでいくか。大会に良い状態で望めるように準備を進めていきます」と抱負を述べた。

コロナ対策の進捗は?

会見では質疑応答の時間がもうけられ、記者団から質問が寄せられた。

障がいのある方に特化した暑さ対策・コロナ感染症対策について聞かれると、中村氏は「観客、アスリートの暑さ対策に関しては、オリンピックと共通の対策をベースにしていますが、パラリンピックでは障がいの程度や状況によって、より緊密な対策が必要だと考えています。キメの細かい対策をとりたい。コロナ対策も同様で、まずベースとなる対策を検討します。パラ競技の中には、特に注意が必要なものもある。各機関と連携をとって、安全と感じていただける環境づくりを目指していきたい」と回答。

続いては田中選手への質問。この4カ月間、どのような気持ちで過ごしてきたのか、との問いかけに同選手は「あと半年という思いでギアを入れて取り組んでいたところ、延期が発表されました。この気持ちのままでは1年は持たない、という動揺がありました。4月、5月は練習環境も整わなかった。そこで自分自身、気持ちを落ち着かせて、少しずつギアを入れながら取り組みました。いまは来年の9月に向けてトレーニングをしつつ、調子を上げてきているところです」。世の中はコロナの不安の中にあるけれど、パラアスリートが困難に打ち勝つ姿を示すことで、観ている人に勇気や感動を与えられたら、と田中選手。

大会の運営について、コロナ対策を講じると競技間における選手や観客の入れ替えに相当な時間が必要になるが、現在のスケジュールで充分なのか、という質問に中村氏は「現在のコロナ対策、および競技の方法については関係各所で議論しています。今年の夏から秋にかけては、各スポーツマネージャーを中心にフィードバックをもらいながら進めていきます。今後も、競技時間だけでなく、選手間の距離のとり方などを含めて、変更があることは充分に想定しています。変更を適宜、反映してスケジュールに入れ込んでいきます」と回答した。

続いて再び、田中選手への質問。現時点における練習環境について聞かれると「コロナ以前の練習環境と比べると、ジムが使えなくなりました。またテコンドーは対面で行う競技のため、組み手に制限が出ています。まだまだ元の形では練習できていません。声を出して気合いを入れる部分も制限がある」と説明しつつも、「来年に向けた不安は、選手なら誰しも抱いている。最大限の安全管理をしながら、できる範囲で準備していきます。それも世界各国の全選手が同じ思いでしょう。それがアスリートの務めだと思いっています」と話していた。

東京2020組織委員会では、オリンピックの「簡素化」や「合理化」を目指す方針。これについてパラリンピックの考えを聞かれると、中村氏は「基本的には同じ形で進めています。オリンピックと同じようには簡素化できない部分があり、またパラリンピックだからこそ簡素化できる部分もある」と説明した。

最後に中村氏は、田中選手に向けて「コロナの状況が日々変わっていく中で、悩むところもありながら、練習を続けておられると思いいます。組織委員会も同じです。感染状況について、日々、感じるところがあります。大会の成功を信じて進めています。選手が来夏にベストを出せるよう、頑張ります。アスリートから要望があれば、遠慮なくお寄せください」とし、田中選手にエールを送った。

パラリンピックの見どころ

開会式翌日の大会第1日目、8月25日の最初のメダルイベントは、10時開始のセッションで行われる自転車競技(トラック)女子C1-3 3,000mパーシュートで、伊豆ベロドロームにてメダリスト第一号が決定する。この日は水泳16種目、車いすフェンシング4種目、自転車競技(トラック)4種目の合計24種目でメダリストが決まる。

大会中盤、夏を締めくくる8月最後の週末、大会第5日目となる8月29日には「ゴールデンサンデー」を迎え、大会終盤に向けた熱気を高めていく。この日は、大会期間中最多となる63種目のメダルイベントを実施。陸上競技20種目、トライアスロン4種目、ボート4種目、水泳13種目、柔道5種目等の決勝種目でメダリストが決まる。午後6時からは、日本チームに大きな期待が集まる車いすラグビーの決勝戦が行われる。

大会後半も、週末の熱を引き継ぐ。大会第7日目となる8月31日には大会期間中2番目に多い61種目でメダルを争う。また陸上競技、水泳については、競技スケジュール全12日間の日程のうち10日間で競技が実施され、前半の盛り上がりを後半に向けて継続しさらに高めていく。本大会実施競技のうち最も種目数の多い陸上競技では、全セッションで決勝種目を実施し、合計167個のメダルが争われる。

大会終盤には、本大会から新競技として採用されるバドミントンとテコンドーの2競技が大会を盛り上げる。それぞれの競技においてパラリンピック史上初めてとなるメダリストが、テコンドーは大会第9日目の9月2日に、バドミントンは大会第11日目の9月4日に誕生する。その他の競技でも、準決勝・決勝等の注目セッションが続々と実施され、大会のクライマックスに向けた盛り上がりを一気に加速させる。車いすテニスは、大会第8日目の9月1日から大会第11日目の9月4日にかけて決勝が実施される。

閉幕日の9月5日にはマラソン男女決勝を含め、バドミントン、車いすバスケットボール男子、シッティングバレーボール女子、射撃の合計15種目において決勝戦が行われる。最後のメダルイベントは、車いすバスケットボール男子決勝で、大会第12日目の9月5日10時開始のセッションで行われる予定。