コロナ禍の外出自粛によって、家で飲酒する機会が増えている。「オンライン飲み会」なるものもじわじわと市民権を得つつあるが、家だとついつい飲み過ぎてしまう、なんていう人も多いのではないだろうか。キリングループが啓発活動をすすめる「スロードリンク」と適正な飲酒について、セミナーで教えてもらった。
オンライン飲み会は飲酒量が増える!?
キリンホールディングスが行った、オンライン飲み会についてのインターネット調査(5月23日~27日、対象は全国20歳以上の男女、有効回答数7,516名)によると、オンライン飲み会の経験率は14%。20代では5割を超えた。
オンライン飲み会の方が飲酒量が「増えた」は32%、「減った」は18%、「変わらない」は43%。3割以上が対面時の飲み会と比較してオンライン飲み会の方が飲酒量が上がると回答している。「増えた」を選択した割合は若年層ほど高かった。
「増えた」理由は、「帰宅の心配がないから」「外で飲むより安いし、すぐ寝ることができる安心感があるから」「オンライン飲み会が楽しいので、ついつい」「時間がたくさんあるので」「ストレス発散」などが多い。
飲酒による「酔い」が体に与える影響
体内に入ったアルコールは、胃と小腸で吸収された後、血液によって全身を巡り、肝臓に運ばれて分解される。血液によって脳に運ばれたアルコールは、脳の神経細胞に作用しマヒさせる。これが「酔った」状態だ。
アルコールの脳への麻酔作用は、血中アルコール濃度に比例する。
軽い酔いでは、理性と判断をつかさどる大脳新皮質の活動が低下し、本能的な活動が活発になりほとんどの人が上機嫌に。さらにアルコールの血中濃度が上がると、マヒが大脳辺縁系、小脳、海馬、延髄へと広がり、深い酔いとなる。さらにマヒが脳全体に広がると、延髄(呼吸中枢)も危険な状態となり、死に至る。
自分のアルコール体質を知る
飲み過ぎの危険を防ぐためにどうすればいいか。20歳未満の飲酒や飲酒運転、イッキ飲み、妊娠中・授乳期の飲酒を避けるのはもちろん、自分のアルコール体質や適切な飲酒量を知ることが大切だ。
まずは、アルコールパッチテストで体質確認。
家にあるもので簡単! アルコールパッチテスト
用意するもの: バンソウコウ(ガーゼ付き)/エタノール(70%)
Step1. テープに少量のガーゼを貼り、ガーゼに消毒用アルコール(70%)を染み込ませる。
Step2. 上腕部の皮膚のやわらかいところに貼る。
Step3. 7分後にテープをはがし、皮膚の色を確認。
Step.4 Step3からさらに10分後、もう一度、皮膚の色を確認して反応を見る。
判定結果
貼った部分が赤くなっていれば「アルコールに弱い体質」、変化がなければ「強い体質」という目安になる(皮膚が赤くなるのは、悪酔いの原因となるアセトアルデヒドが分解されずに残っているという判断によるもの)
※考案者 独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 樋口 進
自分の適切な飲酒量を知る
続いて、適切な飲酒量を知る。1日の節度ある適量な飲酒の目安は、体重60~70kgの成人男性でアルコール代謝能力が平均的な人の場合で、純アルコール量20g。およそビール缶1本(500ml)、ワイン2杯(180ml)、日本酒1合に相当する。
女性の適量は男性の約半分程度。女性は男性に比べて体脂肪が多く水分量が少ないため、同じ体重・同じ飲酒量でも血中アルコール濃度が高くなる。また、少量の飲酒で顔面が赤くなるなどアルコール代謝能力の弱い人や高齢者は、より少ない量が適量の目安だ。
生活習慣病にかかるリスクを高める飲酒量は、適量の2倍程度(純アルコール40g)。およそビール缶(500ml)2本、ワイン4杯(360ml)に相当する。
酔いの程度は純アルコール量に比例し、アルコール消失にかかる時間は肝臓の処理能力による。
純アルコール量(g)=飲酒量(ml)×アルコール濃度(%)×比重0.8
アルコール消失にかかる時間=純アルコール量(g)÷肝臓の処理能力(1時間約5g)
たとえば、ビール缶1本(500ml)の純アルコール量は500ml×5%×0.8=20g、アルコール消失にかかる時間は20g÷5g=4時間となる。肝臓の処理能力には個人差があり、女性の場合は男性の約3/4の分解能力のため5時間かかることになる。
正しい飲み方は?
ここまでの話を踏まえた上で、お酒を楽しむためのポイントも知っておきたい。
・休肝日をつくる
処理能力以上のアルコールを摂取すると肝臓が痛んでしまう。週に2日はお酒を飲まない日をつくり、肝臓を休ませる。
・料理といっしょに飲む
食べながら飲むと、胃の粘膜の上に食べ物の層ができ、胃壁を荒らすことなく、アルコールはゆっくりと吸収される。肝臓の負担も軽減でき、アルコールの血中濃度が急に上がることもない。
・水といっしょに飲む
アルコールを分解するためには、体内の水分が使われる。また、アルコールには利尿作用があり、脱水症状になりやすくなる。
キリングループが提案する飲み方「スロードリンク」とは、お酒の時間をゆっくりと楽しむこと。上記に加えて、人と語らいながら飲む、ほどよい量で心地よく飲む、お酒も料理もスローに味わうことを呼びかけている。
飲酒による健康問題は、世界的課題の一つ。同グループでは酒類メーカーとしての責任として、有害な飲酒の防止に向けて、グローバルでの適正飲酒の啓発活動の推進、ノンアルコール・低アルコール商品の販売数量の拡大、1本あたりの純アルコール量のラベル表示に取り組んでいるという。