東京メトロは7月2日から、同社が保有する全2,720両を対象に抗ウイルス・抗菌加工を行っている。7月9日、千代田線の車両を管理する綾瀬検車区で報道公開が行われ、実際の車両を使って抗菌加工を行う様子などを公開した。

  • 報道公開では、東京メトロ千代田線の車両16000系に抗ウイルス・抗菌加工が施された

東京メトロはこれまでにも、車内や駅待合室の換気を行い、列車の混雑状況をホームページ等で公開し、定期券うりばの整列位置を明示するなど、駅・車内が「密閉・密室・密集」の環境とならないように対策を行ってきた。車両に対しては15日おきに車内をアルコールで清掃し、10日間を目安に車内にアルコール消毒液を噴霧するなど、細菌やウイルスを増やさない対策を行っている。

新たに抗菌のためのコーティングとして使用する抗ウイルス・抗菌剤「シルフィーミストAG」では、銀イオンが使用されており、インフルエンザウイルス、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの菌・ウイルスに抗菌効果があるとのこと。アルコールの成分で空気中の消毒を行いつつ、噴霧されて霧状になった銀イオンと樹脂が表面に滞留・付着することで、乗客が頻繁に接触する部分において長期間の抗ウイルス・抗菌効果を得られることが期待される。

  • 16000系の車内で抗ウイルス・抗菌剤の噴霧を開始

  • 多数の乗客が触れる部分を中心に、車内全体にまんべんなく抗ウイルス・抗菌剤を噴霧する

  • 作業中の車内は煙がかかったような白さに

報道公開が行われた綾瀬検車区では、千代田線の車両16000系に対し、抗ウイルス・抗菌剤「シルフィーミストAG」の噴霧を実施。安全のために車両の電源をすべて落とした後、作業が始まった。噴霧機を使い、手すり、吊り革、握り棒、座席のシート、壁面と、車内の至る所に作業員が抗菌剤を吹き付けていく。

散布直後の車内はかなり煙たく見えるが、人体への悪影響はないという。このようにして抗菌剤の散布を終えた車両には、抗ウイルス・抗菌処置済みを示すステッカーが車内に掲示される。ドア横に青色のステッカーが貼られていれば、その車両は抗菌剤によるコーティングが行われたとわかるようになっている。

  • 抗菌処置が行われた車両に青いステッカーが貼付される

報道公開が行われた日の時点では、東京メトロが保有する全2,720両のうち、「シルフィーミストAG」による抗ウイルス・抗菌処置が行われた車両は208両。全体の7%にすぎないが、今後は他の車両も「シルフィーミストAG」による噴霧処置を順次行い、8月中旬には全車両の抗菌処置完了を予定している。今回は綾瀬検車区のみ作業を見学できたが、並行して他の検車区でも同様の作業が進められているようだ。

全車両への抗菌剤噴霧の完了後、清掃時に再度同じ抗菌剤を噴霧するか、銀イオンと界面活性剤が含まれる補助剤を使用してコーティングを維持するかは現在検討中とのこと。今回の施工は新型コロナウイルス感染症対策としての試験的な意図もあり、乗客の接触度合いや、どのくらいコーティングが摩耗したかなど、施工後の変化を鑑み、今後の方針を決めていくとしている。

緊急事態宣言の解除にともない、鉄道による移動の頻度が元に戻りつつある。一方で、東京都を中心に、緊急事態宣言以前より多くの感染者が確認されたと連日報道されている。そうした中でも、鉄道事業者は利用者が日々安心して乗車できるための対策として、鉄道車両への抗ウイルス・抗菌加工の取組みを行っていることがうかがえた。