「仮面ライダー」シリーズ第5弾『仮面ライダーストロンガー』(1975年)の放送開始45周年を記念して、東映ビデオよりBlu-ray BOXの発売が決定した。2020年10月14日に発売されるVOL.1には第1話から第21話、12月2日に発売のVOL.2には第22話から第39話(最終回)、そして1976年正月放送のスペシャル番組『全員集合!7人の仮面ライダー!!』が収録される。

1971年4月から始まり、1973年まで約2年間(全98話)放送された『仮面ライダー』の大人気を受けて、第2弾『仮面ライダーV3』(1973~1974年/全52話)、第3弾『仮面ライダーX』(1974年/全35話)、第4弾『仮面ライダーアマゾン』(1974~1975年/全24話)とシリーズ化された「仮面ライダー」。『仮面ライダーストロンガー』はシリーズ第5弾にして、第1期仮面ライダーシリーズの最終作となった。ここからは『仮面ライダーストロンガー』の基本設定やストーリー概要を参考資料と共にご紹介しつつ、Blu-ray BOX(VOL.1、VOL.2)の見どころを探ってみよう。

『仮面ライダーストロンガー』は1975年4月5日から12月27日まで、全39話を放送した連続テレビドラマである。前作『仮面ライダーアマゾン』が「仮面ライダーの原点」たる“怪奇色”を強く意識して、野獣のようなアクションでどう猛な獣人と戦う「異形のヒーロー」を狙ったのに対し、本作『ストロンガー』では今までの「仮面ライダーシリーズ」とは少し違った方向性を狙いつつ「力強いヒーロー」像を目指す作品作りが行われた。

悪の秘密組織ブラックサタンの暗躍あるところ、口笛の音色と共にさっそうと姿を見せる青年・城茂(じょう・しげる/演:荒木茂)。彼はブラックサタンによって改造手術を受け、カブトムシの強靭なボディと発電装置を備えた「改造電気人間」として生まれ変わったが、あらかじめ用意していた自己催眠装置によって脳改造をまぬがれ、人間の意志を持ったままブラックサタンと戦う「仮面ライダー」となった。茂は両腕のコイルアームを接触させる変身ポーズを取って仮面ライダーストロンガーとなり、ブラックサタンを倒すべく放浪の旅を続けている。

戦闘開始時に、ブラックサタンの奇械人(きっかいじん)に向かって「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ……」と言い放つのがストロンガーの大きな特徴。過去には、専用武器ライドルホイップを構えて「Xライダー!」と名乗ってから戦闘態勢に入った仮面ライダーXがいたものの、ストロンガーのようにたっぷりな時間をとって大仰な口上を述べながら戦うという、まるで時代劇の大スターのようにふるまう仮面ライダーは初めてだった。電キック、電パンチ、エレクトロファイヤーといった「電気技」の派手な視覚効果や、愛車カブトローを駆使したスピーディなオートバイアクションなど、企画意図でもある「単純明快・痛快明朗」なヒーロー像を子どもたちにアピールしていた。

ストロンガーの相棒として、共にブラックサタンと戦う女戦士・それが電波人間タックルである。タックルに変身する岬ユリ子(演:岡田京子)もまたブラックサタンによって改造手術を受けた人物なのだが、脳改造の直前にストロンガーに助けられたためアジトから脱出することができた。タックル単独では奇械人に敵わないながらも、ブラックサタン戦闘員なら数体まとめて倒すことができる。得意技は、一定のアクションと共に強力な電波を相手に投げつける「電波投げ」である。

『秘密戦隊ゴレンジャー』のモモレンジャー/ペギー松山と同じく「変身する女戦士」の先がけとなったタックルは、男の子が主なターゲットと言われていた変身ヒーロー作品にも女の子のファンが少なからず存在していることを、作り手が意識し始めた時代のキャラクターだった。ヒロインが常にヒーローから助けられる存在ではなく、時にはヒロインがヒーローの危機を救うこともある。タックルやモモレンジャーが切り拓いた「アクティブなヒロイン像」は、その後の東映ヒーロー作品においてもさまざまな形に進歩・発展していった。

  • 徳間書店『テレビランド』1975年4月号表紙(著者私物)。1975年春・新番組の目玉として、『コンドールマン』『秘密戦隊ゴレンジャー』と共に表紙を飾った仮面ライダーストロンガー

  • 徳間書店『仮面ライダーブロマイド図鑑2』(著者私物)より。ストロンガーの乗るカブトローと、タックルの乗るテントロー。カブトローは雷の発生時、最高時速1010kmを出すことのできる超マシンという設定

  • バンダイ「ソフビ魂」仮面ライダーストロンガー(著者私物)。ソフビ魂とは、ポーズ・ディテール・塗装にこだわったハイグレードなフィギュアシリーズである

  • バンダイ「ソフビ魂」電波人間タックル(著者私物)。岬ユリ子がタックルに変身した直後、ブラックサタンの戦闘員を前にして名乗りを挙げるポーズを忠実再現

ヒーロー、ヒロインに「単純明快」さを打ち出した本作だが、ヒーローをおびやかす“悪”の設定にもさまざまな工夫が凝らされた。ブラックサタンとは、「大首領」と呼ばれる謎の存在が支配する、悪の秘密組織のことである。不気味な「サタン虫」を人間の耳の中から忍び込ませ、その人間の意志をすべて乗っ取ってしまうのがブラックサタンの侵略方法で、さっきまで優しい微笑みを称えたお父さんが、サタン虫に乗っ取られた瞬間に恐ろしい怪物になってしまう……といった、子どもたちに対しての直接的な「恐怖」が描かれることが多かった。奇械人は、前作『仮面ライダーアマゾン』の「獣人(動植物を巨大化させ、人間の知能を植え付ける)」とは真逆の方向性を狙い、人間をベースにしつつ、動植物の特性を機械に置き換えたメカニカルな部分を強く打ち出した怪人キャラクターとなった。

  • 徳間書店『仮面ライダーブロマイド図鑑2』(著者私物)より、左からクラゲ奇械人(第6話)、奇械人トラフグン(第5話)、奇械人ゴロンガメ(第4話)。ゴロンガメの脇にいるのがブラックサタン戦闘員

『仮面ライダーストロンガー』前半は、城茂、岬ユリ子、そして歴代ライダーのよき協力者・立花藤兵衛(第3話より登場)が各地を旅して、ブラックサタンの作戦を次々と潰していくロードムービー的展開が大きな魅力。ストロンガーのライバル的存在として、ブラックサタン大幹部タイタン/謎の紳士(演:浜田晃)や、大首領に雇われた謎のジェネラル・シャドウ(声:柴田秀勝)が、さまざまな策略を巡らせる作戦展開も見どころ十分である。