新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴い、日本において緊急事態宣言が発令されてから早くも1カ月半が経過した。これを機にテレワーク・リモートワークに切り替えた企業も少なくない。しかし、一方でテレワークへの切り替えに苦慮している企業も多く存在している。今回、4月22日にオンラインで開催された「~リモートワークの「悩み」を切る!~withコロナ時代へのアップデート」と題したイベントの取材機会を得たため、スピーカーの1人である富士通 シニアエバンジェリストの松本国一氏の話を紹介する。

オフィスの感覚をテレワークに持ち込むのはお門違い

同イベントは松本氏に加え、総務省 行政評価局 総務課長の箕浦龍一氏、Box Japan 執行役員 アライアンス・事業開発部 部長 兼 働き方改革推進担当の安達徹也氏、ソニックガーデン 創業者、代表取締役社長の倉貫義人氏の5人によるグループディスカッション形式で実施した。

Boxの安達氏は「テレワークリテラシー」を定義しており、レベル1はできない(そもそもリモートワークの仕組み、ITや制度が整っていない)、レベル2はできるけどやりにくい(ハンコ、紙がプロセスに入りリモートワークできない=制度、VPNやVDIのキャパシティの問題からパフォーマンスに難=IT)、レベル3は問題なくできる(ゼロトラスト、プロセスもデジタルで問題ない)、レベル4はオンラインファースト(オンラインが主でリアルが補完的手段)と位置付けている。

  • 安達氏が定義する「テレワークリテラシー」

    安達氏が定義する「テレワークリテラシー」

松本氏によると、同氏のもとには従来から働き方改革に関する相談が多くの会社からあり、内容としては現状の働き方を大きく変えずITを活用して効率化を進めたり、リモートワークしたりすることができないかといったものだという。これらの相談について、同氏は次のように語る。

「オフィスワークの感覚を、そのままテレワーク・リモートワークに切り替えられないかと考えている方が多くおられますが、自宅でオフィスと同様の環境は無理です。と言うのも会話は成立するものの、オフィスにいる際の温度感や情報量は違ったものになるからです。また、雑談をWeb会議でやることはナンセンスであり、そもそもオフィスでの人とのつながりと、オンライン上でのつながりは別物となるため、変えざるを得ないと思います。そもそものスタート地点は、そこにあります」(松本氏)

  • 富士通 シニアエバンジェリストの松本国一氏

    富士通 シニアエバンジェリストの松本国一氏

同氏は、Web会議において顔出ししないことは最初に乗り越えるカベであり、バーチャル背景が当たり前になりつつあるため、今後は出社したくない人、対面で話したくない人が大量に現れてくるとしており、ネットワーク上の人格とリアルの人格の違いがプライベートのみならず、会社内でも起きるのではないかと指摘している。

テレワークできる人はオン・オフのリズムが作れる

プライベートと勤務時間が、これまでは例えば9~17時で分けられていたが、家にいることでオフィスの勤務と違う感覚になっており、家に勤務を取り込むということはWeb会議が必要であれば、それなりの恰好しなければならなく、逆にWeb会議の必要がなく、業務の効率が向上するのならば服装を気にする必要はないという。

松本氏は「つまり、会社の時間だから仕事ばかりするのではなく、テレワークに切り替えたのであれば、時間の使い方を自由にしてパフォーマンスを最大に発揮できる環境が望ましく、会話や顔出しが必要な場合はマナーが求められます。その切り替えができればいいのではないかと思います」と話す。

また、同氏はテレワークに慣れしていない人はオフィスでの会議や対応などをテレワークに持ち込みたがるという。これは、時間を設定して会議で集まり、報告会や連絡会をWeb会議でやろうとしており、仕事のやり方自体が変わっていないと主張する。

一方で、テレワークができる人はいつでも構えつつ、くつろげることができ、オン・オフのリズムを自分の中で作れており、オフィスのリズムを家に持ち込むような人はテレワークが難しく、業務上の相談もしづらくなっているという。

さらに、多くの企業のテレワーク勤務制度では勤務時間中は業務への集中が求められ、業務以外はやってはいけないというルールがあり、業務と並行して別のことにも取り組めるような制度構築が今後は必要だとしている。

富士通の場合、PCで利用できるタイムカードシステムの「WebOTR」を導入しているため、9時~17時の勤務時間内にプライベートの用事が発生した際には一時停止ができ、5~10分以上、別の作業がしたい場合は一時停止ボタンを押せばプライベート時間、戻って再開ボタンを押せば業務を再開できるという。

同氏は「時間勤務制の話をテレワークに適用するために導入しており、このやり方であればどこでも仕事ができます。スタイルを決めないテレワークができるような制度を構築していくことが望まれますし、そうしないと単なる在宅勤務に終始してしまいます。固定した仕事環境でない方が望ましいのです。アフターコロナを迎えるにあたり、働き方の自由度があがればいいのではないかと思います」と説明する。