家のなかで過ごす時間が増えた今日この頃、家族といえども「近くにいるとイライラする」「なんか落ち着かない……」なんてことはありませんか? それは無意識にパーソナルスペースが乱されているからかもしれません。快適な空間づくりに活かしたいパーソナルスペースの作り方とそのテクニックをご紹介しましょう。

心地よいのは3m。家族でも近づきすぎるとイライラする

「パーソナルスペース」という言葉を聞いたことはありませんか? 「対人距離」「パーソナルエリア」などともいわれますが、「他人に近づかれると不快に感じる空間・距離」のことをいいます。たとえば、外出先で人が近くにいすぎるとなんとなく落ち着かないことがあると思いますが、それはパーソナルエリアに侵入されているから。人にはその関係性によって4つの段階があるといいます。

密接距離:0~45cm

家族や恋人など、親しい人がこの距離にいることは許される。手足を使って相手の体にふれたりすることができる。親しくない人がこの距離にいると不快

個体距離:45cm~1m20cm

両者が手をのばせば相手に届く距離で、表情などもよくわかる。交渉事や話し合いのときによく使われる距離

社会距離:1m20cm~3m50cm

相手の顔の表情の細かいところは見えないが、姿は見える距離。同じ空間にもても別々の作業ができ、話しかけるのもかんたん

公衆距離:3m50cm以上

普通の声量で話しても言葉や表情などが伝わりにくくなるため、2者でのコミュニケーションは難しい。演説や講演の距離


家族なので、密接距離や個体距離で過ごすこともできますが、同じ空間にいて負担にならないのは、社会距離の1m20cm~3m50cm程度。およそ3m程度、離れていたほうが、家族同士も気楽にすごせるというわけです。

この3mという距離は畳でたとえると1.5畳の長さになります(京間で2m86.5cm)。円形の中心に人がいたとして、前後左右に半径3mのスペースを確保するのであれば、部屋でいうと約5畳が必要なになります。つまり二人いるのであれば、最低でも10畳以上の広さが必要ということに。ステイホームだからといって、狭い部屋に家族が長時間一緒にいると「ぎすぎすする」というのは、実はとても自然なことなのです。

個室は「孤立」「不安」にも。ゆるくつながるがベスト

では、どうすると家族が一緒にいてぎすぎすしない空間になるのでしょうか。

1つ目の工夫は、距離をあけて自然な居場所をつくり出すこと。キッチンとリビング、キッチンと隣あった和室など、「つかず離れず」の場所に家族がいると、会話をはじめとした自然なコミュニケーションがうまれるといいます。また、こうした居場所には自分の好きなイスやアイテムがあるとリラックス効果が高いそう。たとえば、ダイニングに母、リビングソファに子ども、書斎コーナーに父といった具合でそれぞれの居場所が確保できていると、ストレスなく過ごすことができます。

2つ目の工夫は、間仕切りで"ゆるく"つながっていることです。夫婦やカップル・家族が同じ空間にいて気まずいからといって個室があればすべて解決するかというと、そうではありません。個室があれば問題がおきたときに「避難できる場所」となりますが、顔が見えなくなるため、「こちらばかり家事をしている」「話し合いたいときにいなくなる」「何をしているかわからない」などと、不満や不信感、孤立感が生まれる原因にもなります。

そのため、「個室」ではなく、ひとつの広い空間をゆるく仕切り、「なんとなく何かをしているのはわかる」「すぐに話しかけられる」くらいの距離感がストレスなく、機嫌よく暮らせるコツとなるのです。

最近では、限られた空間を有効活用すべく、「家のなかに小屋をつくる」「壁にもなるパーテーションで仕切る」「個室はつくらず家具で仕切る」といった工夫を取り入れた住まいもあります。狭くてなかなか距離がとれないのであれば、こうしたアイテムを取り入れながら、「お互いの気配がわかる」工夫をするのがよいのではないでしょうか。 今後、緊急事態宣言が解除され、以前と同じように外出できるようになるかもしれません。ただ、パーソナルスペースや家族が仲良く暮らせる空間づくりのコツは変わりません。家族の居場所と「ゆるくつながる」を意識して、仲良く暮らせる空間をつくりだせれば、今まで以上に楽しく暮らしていけることでしょう。

嘉屋恭子(かやきょうこ)

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得。