国民年金には保険料の支払いが免除される制度があります。どのような時に免除されるのか、また免除されたら将来の年金はどうなるのか、免除制度についてお伝えします。

  • 国民年金が払えない時の免除制度とは

    国民年金が払えない時の免除制度とは

免除制度があるのは国民年金保険

国民年金保険料の免除制度が利用できるのは、国民年金第1号被保険者です。国民年金には第1号から第3号まで被保険者区分が3つあります。第1号被保険者に該当する人は、個人事業主や学生、フリーター、第2号被保険者は、厚生年金、共済に加入している人、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者です。このうち、免除制度を利用できるのは第1号被保険者です。なお、学生は別の特例制度があるため免除制度は利用できません。

第1号被保険者は毎月保険料を納めますが、収入の減少や失業等で納付が困難になった場合は、保険料の支払いを免除できます。今回の新型コロナウイルスの影響による収入減少についても免除制度があり、ふだんよりも簡易に手続きができます。

免除される金額や所得基準は

免除制度には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があります。それぞれ、本人、配偶者、世帯主の前年所得が一定額以下の場合に申請し、承認されると免除される仕組みです。一定額とは、免除額によって異なりますが、前年の所得が下記の計算式で算出した金額以下であることが、承認基準です。

(1)全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

(2)4分の3免除
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(3)半額免除
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(4)4分の1免除
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

なお、扶養親族等控除額とは扶養している人がいる時に受けられる控除の金額で、社会保険料控除額等とは、国民年金や国民健康保険料、介護保険料等の金額です。いずれも、源泉徴収票や確定申告書で確認することができます。

これらの計算式で計算した金額と比較するのは、前年の所得です。所得とは収入から必要経費を差し引いた金額で、こちらも確定申告書で確認ができます。給与所得の場合は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の欄に記載されています。

所得の審査は本人、世帯主、配偶者それぞれについて行われます。本人だけの所得が審査対象ではないことに注意が必要です。なお、免除制度とは別に、50歳未満を対象とした保険料の支払いを延期できる納付猶予制度があります。この制度では、本人と配偶者の所得が審査対象になります。

新型コロナウイルスで納付困難な場合は

そして、新型コロナウイルスの影響で 保険料の納付が困難になった場合の審査についてですが、この場合、前年所得ではなく2020年2月以降の所得の状況から、今年の所得見込みが、上記1~4の計算式の免除基準に該当するかどうかで判断されます。

具体的には、2020年2月以降で収入が減った月の収入を12倍することで年間収入とみなし、所得見込額を算出します。この計算も本人、配偶者、世帯主それぞれについて行います。また、失業した場合には、特例免除の制度があります。失業の場合は、事業廃止届出書の写しや雇用保険被保険者離職者票等の写しが必要です。

免除されたら将来の年金はどうなる

老齢年金を受け取るには、保険料納付済期間と免除期間が合計で10年以上必要です。つまり、免除されている期間も年金を受け取るのに必要な期間に含まれるということです。ただし、年金額は満額を納めた場合とは異なります。とはいえ、全額免除をしたとしても年金がゼロになることはありません。免除された割合の半分を受け取ることができます。それは国庫負担があるからです。2020年の老齢基礎年金の満額は78万1,700円ですから、20歳から60歳まで全期間免除手続きをしていたとすると78万1,700円の半分、39万850円の年金を受け取ることができるということです。

もちろん、全額免除以外の場合も同様、免除された割合の半分が国庫負担として支給されます。たとえば、4分の3免除なら、4分の1だけ自分自身で納めましたから、4分の1の年金と免除された4分の3の半分、8分の3が国庫負担となり、合計8分の5の金額を受け取ることができます。

なお、納付猶予の場合は年金受け取りに必要な10年に含まれますが、年金額には反映されません。

ところで、年金は老後に受け取るだけではなく、障害を負った時には障害年金、配偶者等が死亡した場合には遺族年金を受け取ることができます。これらの年金を受け取るためには保険料を滞納していないこと等が要件ですが、免除期間も猶予期間も、もちろん、滞納にはあたりません。要件を満たせば免除や猶予中でも遺族年金や障害年金を受け取ることができるのです。

未納にはしない

国民年金保険料を払えなくなり、何も手続きをしていないと未納になってしまいます。未納になると将来年金が減るのはもちろん、受給資格期間にも含まれないので、年金をもらえなくなる可能性があります。また、遺族年金や障害年金ももらえなくなる可能性があります。デメリットしかありませんから必ず手続きをするようにしましょう。